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CHROメッセージ

「自由闊達」「挑戦と創造」という言葉で
当社が大事にしてきた価値観を、
「人の三井」と評される人を大切にする組織風土とともに
グローバル・グループに展開、産業横断の取組みと
イノベーションを力強く後押しします

代表取締役 副社長執行役員
CHRO(チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー)兼
CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)

竹増 喜明

人材戦略の観点から、中期経営計画2023(前中経)の進捗をどのように評価していますか。

前中経では人材戦略の柱として、強い「個」の育成と活躍推進、Diversity & Inclusion(D&I)、タレントマネジメントの強化による適材適所に取り組んできました。

D&Iの推進を通じては、女性社員と海外採用社員の活躍を中心に着実な進捗が見られました。2023年3月末時点での女性社員の管理職比率は連結ベースで18.8%、単体では8.5%でした。当社が単体での通過点として掲げる10%を2025年3月期までに達成し、その後も着実な上昇が期待できるタレントプールの拡充が進みました。前中経期間に、女性管理職は12%増加*1し、女性部長・ライン長は27%増加*2しました。働き方改革や、Sponsorship Program・Women Leadership Initiativeなど選抜型社内研修の強化などにより、女性リーダー層の人材の厚みは年々増しています。

海外採用社員の登用も着実に進みました。重要拠点の一つであるインド三井物産では2020年から海外採用のインド人が社長を務めるなど、前中経期間中、海外採用社員のライン長への登用は着実に増加しました*3。Change Leader Programなどにより、海外採用社員の幹部職登用が今後一層進むものと期待しています。

産業横断的な取組みと新たな事業群の形成を加速すべく、適材適所の人材配置も機動的に実行しました。2020年4月には複数本部から人材を糾合し、気候変動に対する産業的解決と次世代エネルギー分野でのソリューション提供のハブ組織として、エネルギーソリューション本部を立ち上げました。同本部からは再生可能エネルギー、水素・アンモニアなどさまざまな新規事業が生まれています。また、適材適所の基盤となるグローバルなタレントマネジメントシステム(Bloom)を新たに開発し、2022年10月にアジア・大洋州本部などで先行導入しました。

前中経の3年間、当社を取り巻く外部環境は、パンデミックや地政学リスクの高まりなどを受け大きく変化しました。将来を見通すことが難しく、足下ではさまざまな変化や想定外の事態が生じる中で、当社社員は難しい判断・対応を迫られましたが、そのような厳しい環境下にあっても過去最高益を更新できた背景には、過去から脈々と続く人材育成の成果として、社員一人ひとりが強い「個」として未曽有の環境変化に柔軟に機動力を持って対応できたことがあると評価しています。

中期経営計画2026(現中経)での人材戦略と、特に注力する点について教えてください。

現中経では、「グローバルでの多様な個の活躍推進」を5つのCorporate Strategyの一つとして掲げました。人材戦略の柱は前中経を踏襲し、大型化・複雑化する当社の事業活動を支える人材の持続的な輩出へ向けた強い「個」の育成、多様な人材がより一層、自由闊達に活躍できる環境整備のための「インクルージョン」、グローバルなタレントプールから最適なジョブマッチングを可能とする「適材適所」の徹底です。これらに加えてDXを通じた業務プロセス変革、生産性の一層の向上により、社員一人ひとりに新たな「挑戦と創造」を続けてもらいたいと思います。

現中経では、複雑化する社会課題に対する産業横断的な取組みや、イノベーションによる解決がますます重要となります。多様なバックグラウンドを持った個が柔軟にチームをつくり、異なる産業分野や事業からの知識・経験とさまざまな機能を組み合わせて、社会課題に対する当社らしい解決策を提示していきます。

そのためにもBloomの本格導入を図り、国・部門を超えた人材の登用を加速します。グローバルなタレントデータベースにDXを掛け合わせ、社員一人ひとりの知識・経験・能力に加えてキャリア志向も踏まえた適材適所を徹底し、グローバルなポジションマッチングを強化します。経営理念の一つである「多様性を力に」するための基盤の整備を、現中経期間中も着実に進めます。

女性社員のさらなる活躍推進に向けた取組みとしては、担当職と業務職の区分を廃止*4すべく新たな人事制度の導入を検討中です。ミドル・バックオフィスで基幹業務を担う業務職社員に、より幅広いキャリアの選択を可能とし、職責に応じた報酬体系の見直しを行うことでインクルージョンを高め、個人と組織のパフォーマンスの向上につなげます。

当社の人材戦略は、企業価値の向上にどのように結びついていると考えていますか。

当社のビジネスモデルである事業を「創る・育てる・展(ひろ)げる」の実行主体は人です。長年の当社の人材への投資、人材の育成と活躍推進に対する専心は、これまで多くの事業を創り、育て、展(ひろ)げていくことにつながり、当社の企業価値向上の源泉であり続けました。当社の人材育成は、現場での実践を通じたOJTと社内外の多様な研修によるOff-JTの、計画的で、バランスのとれた機会を基本としていますが、両者を併せ持った当社ならではの研修の一例が海外派遣制度の一部である海外修業生制度です。本制度は、最初の1年間は業務から完全に離れて派遣先の大学などに留学し、2年目は現地でOJTを行うもので、1952年の制度スタートから今日まで総勢1,500名を超える人材が世界各地に派遣されています。語学の習得にとどまらず、派遣先の文化や社会、市場への理解を深めてもらうことが目的ですが、本制度を活用した社員の多くが、その後、派遣国や地域のエキスパートとして当社の強靭な海外ネットワークを支え、新規ビジネスの開拓に実績を挙げています。

CHROとして、今後取り組んでいきたいことは何でしょうか。

「自由闊達」「挑戦と創造」という言葉は、当社が長い歴史を通じて育んできた価値観を言い表しています。「自由闊達」であるためには社員一人ひとりが自立したプロであること、そしてその多様な個を包摂し、存分な活躍を後押しする、よりインクルーシブな環境が必要です。また、「自由闊達」な土台の上にあってこそ、より複雑化する社会課題解決のための私たちの「挑戦と創造」が可能となるのです。

この2つの言葉で当社が言い表してきた価値観を、「人の三井」と評される人を大切にする組織風土とともに、グローバル・グループに力強く展開し、当社のさらなる成長につなげていくことが私のCHROとしてのミッションです。

本統合報告書に加えて、当社の人材主義とも呼ばれる考え方とその実践について、幅広いステークホルダーの皆様に理解を深めていただくためのレポートを発行すべく準備を進めています。当社の人材育成への注力と企業価値の持続的な成長の好循環について、さまざまな実例をもって具体的な紹介を試みていますので、ぜひ一読をいただきたくお願いします。

*1 252名→283名、*2 51名→65名、*3 99名→116名
*4 勤務地を限定しない担当職と原則国内の同一地域での勤務を前提とする業務職の区分廃止を検討中