Governance
リスクマネジメント
リスクを全社横断的に見て、重要なリスクを特定するとともに、適切にコントロールするための取組みを行っています。事業本部長及び地域本部長は、権限の範囲内で職務遂行する一環で、担当領域のリスク管理に責任を負っています。一方、コーポレートスタッフ部門各部は、担当分野のリスク管理について、事業本部・地域本部を支援するとともに、全社ポジションを把握し、経営に報告します。その上で、経営会議諮問機関や下部組織である各種主要委員会は、全社リスク管理体制の設計・整備や重要なリスクへの対処にあたります。経営会議及びその諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社で一元的にリスクを管理する統合リスク管理体制を構築しています。事務局を務めるコーポレートスタッフ部門担当部署が全社的観点でリスクを統括し、全社横断的に見て、発生頻度と想定損害規模、及びリスク許容度を踏まえ、関係部署と連携しつつ、重要なリスクを特定し、対策を講じています。2024年3月期はこれらの取組みについてポートフォリオ管理委員会での議論を経て、経営会議及び取締役会への報告を実施しました。
当社リスクマネジメント体制(イメージ)
リスクアセットを用いた定量分析
株主資本とリスクアセット
当社では、統合リスク管理の一環として、定量的なリスク分析を毎年実施しています。その結果は、「当社のリスクエクスポージャーとコントロール」と題して、ポートフォリオ管理委員会で議論を実施し、経営会議及び取締役会に報告しています。
定量的なリスク分析にあたり、バランスシートの資産に内在するリスクに加えて、市場リスクや保証債務等オフバランスのリスクを一定の基準で評価の上、「リスクアセット」と称し、そのリスク量を定期的にモニタリングしています。リスクアセットは事業投資リスク、与信リスク、市場リスクといった分類に加え、セグメントや国・地域別等、さまざまな切り口で現状分析を行うための統合的なリスク管理の礎です。リスクアセットは、過去10年間で株主資本のおよそ6~7割の範囲内で推移していることを確認しています。
また、株主資本に対するリスクアセットの割合(水準)に加えて、リスクアセットに対する当期利益の割合(水準)も確認しています。赤字決算となった2016年3月期以降、およそ15%前後で推移していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が見られた2021年3月期には、10%近くまで低下しました。その後、2022年3月期から2024年3月期においては20%を超える水準となっています。
これに加え、保有する資産の社内格付低下や、急激な為替市場・株式市場の変動等に対するストレステストを実施し、リスク量と株主資本の割合(水準)への影響も検証しています。
基礎営業キャッシュ・フローは3期連続で1兆円規模に到達していますが、それを支える仕組みの一つに高度なリスクマネジメントがあります。今後も、適切なリスクマネジメントを継続することで業績の下方リスクへの備えとし、企業価値向上につなげていきます。
重要なリスク(2024年3月末時点)
*2 「災害時事業継続管理規程」に基づき、CHROを本部長として設置する組織
新たな重要リスクの特定
- 人的資本の制約に関するリスク
- 人権に関するリスク
2024年3月期には、「人的資本の制約に関するリスク」と「人権に関するリスク」を新たに重要なリスクとして特定しました。
外部環境の変化として、人的資本や、人権・サプライチェーン等のサステナビリティ取組みへの関心の高まりや、2023年3月期より導入した関係会社による内部統制の自己点検(CSA:Control Self-Assessment)を通じ、当該リスクを重要なリスクとして認識する関係会社が増加したことを踏まえ特定したものです。
「人的資本の制約に関するリスク」は、人材が不足した場合に事業価値創出機会の逸失や安定操業を損なわせるリスクです。そのため、人材の確保と育成、評価、報酬等の人材マネジメントに取り組むことで適切な人的資本の確保につなげています。
「人権に関するリスク」は、当社の活動やサプライチェーン等の取引関係を通じた人権侵害の助長によるレピュテーション低下、またその影響の解消・緩和に伴う追加的費用等が発生するリスクです。人権デューデリジェンスを通じたリスクの低減に加え、課題発生時には、その是正・救済に適切に取り組みます。