Governance
リスクマネジメント
当社では、全社リスクを横断的に見て、重要なリスクを特定するとともに、リスクをコントロールするための取り組みを行っています。事業本部長および地域本部長は、権限の範囲内での職務遂行の一環で、担当領域のリスク管理に責任を負っています。一方、コーポレートスタッフ部門各部は、担当分野のリスク管理について、事業本部・地域本部を支援するとともに、全社ポジションの把握を行い、経営に報告します。その上で、経営会議諮問機関や下部組織である各種主要委員会は全社リスク管理体制の設計・整備や重要なリスクへの対処にあたります。経営会議およびその諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社一元的にリスクを管理する統合リスク管理体制を構築しています。事務局を務めるコーポレートスタッフ部門担当部署が全社的観点でリスクを統括し、全社のリスクを横断的に見て、発生頻度と想定損害規模、および全社リスク許容度呉に鑑み、関係部署と連携しつつ、重要なリスクを特定、対策を講じています。2022年3月期はこれらの取り組みについてポートフォリオ管理委員会での議論を経て、経営会議および取締役会への報告を実施しました。
当社リスクマネジメント体制(イメージ)
統合リスク管理の近況
2022年3月期には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や、地政学的リスクの高まりを受けた市場環境の変化、半導体の不足、物流のボトルネックなど供給面の制約が景気の下押し要因となりましたが、サプライソースの多角化など長年築いたグローバルトレーディング機能を発揮し、物流機能を含めた総合力を駆使することで、収益力の強化や社会の発展に不可欠な資源、素材、食料、製品などの安定供給を支えました。このような外部環境の変化において、リスクマネジメントの観点では、供給先・販売先の約定履行に伴う与信リスク、商品価格リスク、為替リスク、およびカントリーリスクなどが複合的に生じることがあります。また、これらのリスクに加えて、各国の諸規制強化やサイバーリスクの高まりなどに対し、関係コーポレートスタッフ部門各部が相互に連携して助言などを行うことで、事業本部および地域本部におけるリスクの顕在化により発生する損失の回避につなげています。世界経済の不確実性は高まっており、中でも地政学リスクの顕在化、サプライチェーン混乱、インフレ高進といった事業を取り巻く大きな環境変化は、当社にとりポジティブな影響と、ネガティブな影響の双方をもたらします。このような環境においても、引き続き供給・納入責任を着実に履行すると同時に、危機管理対応と複数シナリオへの備えの強化や、時間軸・優先順位の機動的な見直しを行い、市況変化も踏まえたアップサイドの着実な取り込みの強化と、気候変動リスクなどの非財務情報の評価も含めた統合的なリスクマネジメントに努めて参ります。
2022年3月末時点 重要なリスク
*2 「災害時事業継続管理規程」に基づき、人事総務部管掌役員を本部長として設置する組織。
カントリーリスクについて
当社の事業は各国の政治・経済・社会状況の変化により、その事業価値が毀損するリスクを負っているため、各国輸出信用機関によるファイナンスなど、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。また、ポジションを有する国についてそのエクスポージャーを国別に定期的に把握するとともに、原則として先進国を除く国を対象に、カントリーリスク状況の定性・定量的なモニタリングを行い、カントリーリスク管理上の対応方針を策定しています。同時に、全社ポートフォリオのモニタリングにおいては、事業分野別のみならず国別のアセットサイズが適切なレベルかどうかも検証しています。なお、ロシア向けの投融資保証残高は2022年3月末時点で4,260億円となり、当社および連結子会社の投融資保証残高の約4%となります。2022年3月期にはロシアのLNG事業において、カントリーリスク悪化に伴う割引率見直しに伴い、投資の公正価値減少806億円(その他の包括利益)および209億円の損失を計上しました。