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三井物産の森

三井物産の森と環境

三井物産の森では、表土保全や二酸化炭素吸収量の拡大にも役立つ整備を行うと同時に、生物多様性保護林(社有林の約10%)およびその他特定したエリアにおいて、生態系モニタリングの定期実施等を通じ、生物多様性保護を意識した維持・管理を行っています。

三井物産の森の生物多様性

三井物産の森の生物多様性

生物多様性とは、遺伝子、生物種、そして生態系、それぞれのレベルの多様さ、バラエティーの豊かさのこと。それぞれの土地に、もともといるべきいろいろな動物、植物、昆虫、微生物などがいて、生きていける土台があること。それが「生物多様性が高い」ということです。
しかし、今、世界中から多くの動物や植物が次々と減少あるいは絶滅しています。多様な生物の生息環境が急速に失われつつある現在、私たちの生存の基盤である生物多様性の保全に向けた取り組みが企業にも求められています。
当社は、三井物産の森を適切に管理することを通じて生物多様性を育み、その豊かな森を次の世代へと引き継ぐことで社会に貢献します。

生物多様性の保全・モニタリング体制

三井物産の森では、生物多様性の観点から重要性が高いエリア(全体の約10%)を生物多様性保護林に設定しており、それぞれの区分にあった管理を行い、生物多様性保全に努めています。希少種の生息状況や山林の規模に応じて、山林事務所ごとに3箇所を基本としてプロットを設定し生態系モニタリング調査を実施しています。調査は年1回(蓄積調査については5年に1回)実施され、地表状況調査(希少種、動植物)・林内状況調査(樹種、本数、獣害等)・蓄積調査(胸高直径、樹高、成長量)などを調査しています。
なお、特別保護林(保護価値の高い森林)である福島県の田代山林では、2023年6月の山開きでは4年振りの安全祈願祭が執り行われ、巡視も行いました。山頂の高層湿原でのシカによる植生被害も2019年から増加傾向にあるので、引き続き生態系への影響について動向を注視していきます。また、田代山林に隣接する環境省管理地域に於いて発生している大規模崩落は、貴重な高山湿地帯近くまで進んでおり、今後の動向を注視していきます。各山林で、希少種が発見された場合は、特に植物の場合はマーキングを行い、施業範囲から外すなどの対策をとっています。
また、林内作業は周辺の広範囲に環境的影響を与える可能性があるため、三井物産の森では、主伐、間伐、路網開設などの林内作業を実施する際には、事前に必ず現地を踏査して土壌状況、地表植生等、林内状況、周辺状況などの20超のチェック項目に基づいた調査を行うこととしています。調査結果に応じて、林内作業計画の実施内容につき見直しを行い、必要があれば計画変更や中止の判断を行っています。林内作業実施後3か月以内には、必ず現地を再踏査して林内作業が適切に実施されたことを確認し、環境への影響を最小限にし、生物多様性の保全に努めています。

森林管理区分

三井物産の森は、人工林約40%、天然林および天然生林約60%で構成されています。この森を「循環林」「天然生誘導林」「生物多様性保護林」「有用天然生林」「一般天然生林」「その他天然生林」「分収造林地」に区分し、管理方針を設定しています。特に生物多様性の観点から重要性が高いエリア「生物多様性保護林」は、2009年から新たに区分したもので、三井物産の森全体の約10%です。
さらに「生物多様性保護林」を「特別保護林」「環境的保護林」「水土保護林」「文化的保護林」の4つに区分し、それぞれの特徴に応じた管理を行うことで、生物多様性の保全により踏み込んだ森づくりを目指しています。
全国75か所、45,414ヘクタールの三井物産の森を以下に区分して管理しています。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(2024年1月末現在)

区分 定義 面積(ha)
人工林 循環林 伐採・植樹・保育を繰り返し、木材資源の生産と供給を行う森林 5,852
天然生誘導林 針葉樹と広葉樹によって構成される天然生林へ誘導する森林 8,783
分収造林地 外部機関と締結した長期の分収造林契約林地です。 2,493
人工林、天然林および天然生林 生物多様性保護林 特別保護林 生物多様性の価値が地域レベル、国レベルにおいてかけがえのないものと評価され、厳重に保護するべき森林 324
環境的保護林 希少な生物が数多く生息していることが確認されており、それら希少生物の生息環境を保護するべき森林 846
水土保護林 水をよく蓄え、水源となり、災害を抑えるなど、公益的機能が高い森林であり、水系の保護と生態系の保全を図る森林 3,456
文化的保護林 生物多様性がもたらす「生態系サービス」のうち、伝統や文化を育む「文化的サービス」の面で価値が高く、保護するべき森林 117
天然生林 有用天然生林 木材利用上の有用樹種があり、保育を通じて木材資源として収穫を目指す森林 15,878
一般天然生林 有用樹種ではないが、保育をしながら、森林の公益的価値を高めていく森林 6,362
その他天然生林 上記以外の天然生林 1,303

生物多様性保護林

三井物産の森の中で特別な役割を持つ森について紹介します。

4つの生物多様性保護林

三井物産の森の中で、生物多様性の観点から重要性が高いエリアを「生物多様性保護林(全体の約10%)」とし、さらに森林の性質によって「特別保護林」「環境的保護林」「水土保護林」「文化的保護林」の4つに区分しています。
保護の目的を明確にすることで、生物多様性の保全により踏み込んだ森林管理を実現していきます。

特別保護林

山林の一部が尾瀬国立公園に指定(田代山林) 山林の一部が尾瀬国立公園に指定(田代山林)

生物多様性の価値が地域レベル・国レベルにおいてかけがえのないものと評価されており、厳重に保護していきます。


[福島県]田代山林
南会津町にある田代山の一角です。山の頂上には学術的にも貴重な高層湿原が広がり、その湿原を含む山林の一部が尾瀬国立公園に指定されています。

環境的保護林

最も北にある三井物産の森(宗谷山林) 最も北にある三井物産の森(宗谷山林)

希少な生物が数多く生息していることが確認されており、それら希少生物の生息環境を保護していきます。


[北海道]宗谷山林
最も北にある三井物産の森です。北海道の代表的な針葉樹・クロエゾマツの森が広がり、日本最大の淡水魚・イトウも生息しています。

水土保護林

水を蓄えるブナの森(南葉山林) 水を蓄えるブナの森(南葉山林)

水をよく蓄え、水源となり、災害を抑えるなど、公益的機能が高い森林であり、水系の保護と生態系の保全を図ります。21世紀は水の世紀といわれるように世界の水資源問題に注目が集まる中、豊かな水資源を提供してくれる森を育てるべく、3,456ヘクタールを「水土保護林」に指定し、水系の保護に注力した森づくりを行っています。


[新潟県]南葉山林
妙高連峰の前座、南葉山は上越市にあります。水を蓄えるブナの森が広がり、水源として地域に水を供給しています。

文化的保護林

アイヌ文化発祥伝説が残る北海道・平取町(沙流山林) アイヌ文化発祥伝説が残る北海道・平取町(沙流山林)
伝統行事「大文字五山送り火」(清滝山林) 伝統行事「大文字五山送り火」(清滝山林)

生物多様性がもたらす「生態系サービス」のうち、伝統や文化を育む「文化的サービス」の面で価値が高く、三井物産は、森林の保全を地域の文化・伝統保全にもつなげる活動も積極的に行っています。

森を通じて、アイヌ文化を守る

三井物産の森の中で2番目に大きな沙流山林は、アイヌ文化発祥伝説が残る北海道・平取町二風谷近くにあり、古くからアイヌの人々が利用してきた山林です。
当社は、平取アイヌ協会と2010年4月に協定を結び、アイヌ民族の文化の保全、振興活動を行っています。
具体的には、アイヌ民族の代表的な衣服である樹皮衣「アツシ(アットゥシ)」の素材となるオヒョウの木が減少傾向にあることから、オヒョウの木を沙流山林に植栽し、大切に育てていくこと。また、伝統家屋である「チセ」の復興のため、建築に必要なミズナラ、イタヤ、アオダモを中心に、ヤチダモ、アサダ、エンジュ、コブシ、ハルニレ、クルミ、ミズキなどの樹種の木材を沙流山林から提供しています。さらに、沙流山林内にある文化遺跡の調査にも協力しています。山林内には現在「オキクルミチャシ」「ウンチャシ」「ペンケトコム・パンケトコム」の3つのチャシ(※)と「ムイノカ」と呼ばれる伝承地が確認されています。「オキクルミチャシ」と 「ムイノカ」は「ピリカノカ」(アイヌ語で美しい・形の意味)という名の国指定文化財の“名勝”にも指定されています。
2010年9月には、北海道・平取町とも協定を締結、同町が行う「イオル(アイヌの伝統的生活空間)再生事業」や産業振興に協力しています。

※チャシ:砦や祭祀の場、見張り場など

二風谷アットゥシ 二風谷アットゥシ
オヒョウ オヒョウ
アイヌの伝統家屋「チセ」 アイヌの伝統家屋「チセ」

森を通じて、京都の伝統行事を守る

京都市北部嵯峨にある清滝山林は、京都でも名高い紅葉の名所で、春は桜が美しい観光地にある山林です。
当社は、この清滝山林の一部を(公社)京都モデルフォレスト協会が行う、京都の森を守り育てる活動のために無償提供する協定を、同会および京都府と2008年に締結しました。この協定に基づき、京都の伝統行事である「大文字五山送り火」「鞍馬の火祭」に必要な薪や、松明の材料となるアカマツやコバノミツバツツジを提供するとともに、同協会主催による地域の方々の「森づくり体験活動」の場を提供しています。
「森づくり体験活動」では、同協会会員が参加してアカマツやコバノミツバツツジを育成するための森林整備を行っており、また、同協会の関係団体である「大文字保存会」「鞍馬火祭保存会」が、ボランティア活動として広葉樹とアカマツの伐採を行っています。これらの活動により、2010年には、「京都五山送り火」で必要とされる松葉のすべてと蒔の材料の1割、さらに「鞍馬の火祭」で使用する松明の1割を清滝山林からの木材で賄うことができました。


(公社)京都モデルフォレスト協会

大文字五山送り火 大文字五山送り火
松明の材料となるアカマツ 松明の材料となるアカマツ
鞍馬の火祭 鞍馬の火祭

三井物産の森を通じた環境教育

社有林を通じて次の世代に伝えたいこと

三井物産は、森を適切に管理するだけでなく三井物産の森を活用した環境教育を行っています。小学校や中学校で森の仕事に関する出前授業を行ったり、三井物産の森をフィールドとする森林教育プログラムの実施を通じて、次世代を担う子どもたちに森の役割や人と自然とのつながり、木材産業を通じた環境保全について分かりやすく伝えています。

環境教育に特化した取り組み

次世代を担う若い世代に向けて、三井物産の森を通じた取り組みを行っています。

オンライン出前授業の実施 オンライン出前授業の実施

出前授業

小学校や中学校で、日本の森のことや、森の仕事について知ってもらうための出前授業を行っています。また、新型コロナウィルス等の感染症対策として、オンラインでの出前授業も行っています。

林業見学会の様子 林業見学会の様子

森林体験

三井物産の森で、森の役割やそこで暮らす生き物について学んだり、林業の仕事を体験するプログラムを実施しています。

※出前授業・森林体験詳細につきましては、三井物産フォレスト株式会社のホームページをご参照ください。


三井物産フォレスト株式会社