CFOメッセージ


成長投資と株主還元拡充をバランスよく推進し、
企業価値を向上させていきます
代表取締役 副社長執行役員
CFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)
重田 哲也
中期経営計画(中経)の進捗を
どう評価していますか
中経の2年目にあたる2025年3月期においては、当期利益が9,003億円と引き続き高水準を維持し、基礎営業キャッシュ・フローも1兆円規模を4期連続で達成し、順調に進捗しています。
最終年度となる2026年3月期においては、不確実性の高い事業環境に直面しながらも、経営の選択肢を広く確保しつつ企業価値向上に向けて着実に舵取りを進めるとともに、事業環境変化に伴うサプライチェーンの変化をチャンスと捉え、計画を上回る利益の実現を目指してまいります。
事業ポートフォリオの良質化に向けた
取組みについて教えてください
2025年3月期までの間にRhodes Ridge鉄鉱石、RuwaisLNG、Blue Point低炭素アンモニアなど、将来の収益基盤の底上げに資する案件への投資を決定し、中経期間中に2.3兆円の成長投資を見込んでいます。事業ポートフォリオ良質化にあって、特に新規投資においては、投資規律の維持・強化が重要であり、その中でCFO部門を含むコーポレート各部の役割は非常に大きいと認識しています。投資判断にあたっては、定量面ではIRRを中心としたいくつかの指標を基準とし、同時に定性面では戦略性や当社シナジーの発揮といった観点を重視しています。事業本部とコーポレート各部が、それぞれの専門性と知見に基づき徹底的に議論を重ねることが投資規律の基盤となり、個別案件の質を高め、当社全体の事業ポートフォリオ良質化につながっています。
基礎収益力向上の取組み推進を支える
体制について教えてください
当中経では、既存事業強化、効率化・ターンアラウンド、新規事業を通じた基礎収益力の向上に取り組んでいます。各取組みの推進にあっては、事業本部とコーポレート各部が緊密に連携しており、その中でCFO部門はリスク管理・財務・税務・業績管理などの観点から、諸課題への対応・解決に貢献しています。さらに、当社は事業本部と地域本部を組み合わせたグローバルマトリクス体制を構築しており、事業本部が地域本部と連携して地域ごとのインテリジェンスやネットワークを活かした取組みが可能です。このような連携は、事業本部間でも常に活発で、当社の価値創造に直結する重要な推進力であり、当社の強みと考えます。
また、事業領域別のROICの活用や、投資実行時の計画とその後の実績との乖離要因分析などを通じて、投資後の収益力向上・改善につなげる施策を検討・実行できる仕組みが構築されています。これらの取組み推進により、2025年3月期末時点で基礎収益力は2023年3月期と比較して1,200億円の増加を達成しており、中経期間中に掲げた1,700億円の拡大目標も中経最終年度までに達成見込みです。
複雑性が増している事業環境において
リスク管理にどう取り組んでいますか
信用・市場・カントリーリスクに加えて、地政学リスクやサイバーセキュリティ、環境対応といった複雑なリスクが複合的、連鎖的に顕在化する事態に対応するため、当社ではコーポレート各部の専門人材が組織間をまたがって連携する体制を整備するとともに、地域本部との連携を加えて、グローバルレベルでのリスク管理体制を構築しています。これにより、例えば地政学リスクに起因するサプライチェーンの分断などの事象が発生した場合でも、いくつかの選択肢の中から迅速かつ効果的な対策を講じることができます。一方で、こうしたリスク対応の中に、潜在的なビジネスチャンスや課題解決策のお客様への提供機会を見出し、果敢に取り組む姿勢は、当社らしさの一つであると考えています。
財務戦略とキャッシュ・フロー・アロケーションの
考え方について教えてください
当社は、前中経から再現性の高いキャッシュ創出力を向上、強固な財務基盤を着実に積み上げてきた結果、厚みのあるバランスシートを維持しています。したがって、長期収益基盤拡大に資する成長投資実行や株主還元の拡大など、経営上の幅広い選択肢に常に機動的に対応することが可能です。今後も、当社を取り巻く環境の変化を見極めながら、キャッシュ・フロー・アロケーションの枠組みや財務戦略について議論を重ね、柔軟に対応していきます。
企業価値向上に向けたCFOの役割について、
どのように考えていますか
現在当社はROEを企業価値向上のための重要指標の中心に位置付けており、その維持・向上に向けてCFOが果たすべき役割は非常に大きいと認識しています。既存事業の強化やターンアラウンド、厳選した成長投資を通じた基礎収益力向上、継続的な資産リサイクルを通じたポートフォリオの良質化、経営上の幅広い選択肢に対応可能な強固な財務基盤の維持、そして株主還元の強化を含めた資本効率向上など、当社の持続的な成長をけん引することが重要です。
なお、こうしたCFOとしての責務を全うするには、経営会議メンバーで構成されるリーダーシップチームとの連携が必要不可欠です。リーダーシップチームメンバーの執務室ドアは常に開いていて、メンバーが自由に行き来し、日常的に活発な意見交換をしています。この自由で活発なコミュニケーションは会社全体・グループ全体に拡がっています。
株主還元についての考え方を教えてください
中経の2年目にあたる2025年3月期は、過去最大となる6,920億円の株主還元(自己株式取得:4,000億円、配当:2,920億円)を実施しました。4期連続1兆円規模を達成した基礎営業キャッシュ・フローのトラックレコードを踏まえ、2026年3月期の配当予想は前期比15円増配の115円とし、2027年3月期については累進配当方針に基づき、120円がスタートラインになると考えています。自己株式取得についても、成長投資とのバランスや株価水準を含む経営環境を総合的に勘案し、機動的に判断するという従来の方針を継続します。今後も、当社のキャッシュ創出力が長期的に持続可能であることへの信認を得ながら株主の皆様のご期待にお応えできるよう、全社一丸となって取組みを継続していきます。