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CEOメッセージ

社会課題への現実解提供を通じ、
2030年に向けて事業基盤を
飛躍的に向上させる

代表取締役社長

(ほり) 健一(けんいち)

三井物産の企業文化と
組織のあり姿について教えてください

三井物産が大事にしてきている企業文化は、”挑戦と創造”及び”自由闊達”です。この企業文化を育む形で、個性あるプロフェッショナル人材を育成し、人材が組織間の垣根を越えて連携し、グローバルな社会課題に対して組織全体で現実解を導き出していくことが、当社における組織のあり姿です。
当社の社員がプロフェッショナルとして身に付ける個性とは、産業に立脚したものでもあり、トレーディング、ロジスティクス、ファイナンス等、ビジネスを行う上でのさまざまな機能です。当社は幅広い事業を世界各国で行っており、特定の商品・地域・機能の深い知見を習得できる機会が豊富にあります。さまざまな業務経験を通じ、まず自身の核となる専門性を身に着け、そこに新たな専門性が加わることで、1人で複数の専門性を有し、それぞれの専門性をより高いレベルで発揮している人材、そのような、立体感のあるビジネスプロフェッショナルが当社には多数在籍しています。多才性のある人材によって、当社の企業文化を具現化する形で、社会の発展への貢献を続けていきたいと考えています。

三井物産の社長に求められるリーダーシップとは、
どのようなものだと考えますか

現在の経営環境には多くの変数があり、不確実性が高いので、組織の強靭性を発揮するためのリーダーシップが非常に大事だと思っています。そのために、さまざまなアクションを取れるように経営の選択肢を幅広く確保しながら、現場と一体となり一つひとつの実務をしっかりやり抜いた上で、時機を得た行動に移すことで企業運営をしていくことが重要と考えています。そして、お客さまの立場になって考える”実考”力、それを長期的な価値創造につなげる”実行”力、この2つを発揮し、企業価値を高めていきます。

リーダー層育成の観点で、
重視していることを教えてください

今の課題にしっかり取り組んでこそ未来が見えてくるので、現業をやり抜いて、その上でその先の見通しを自分で検証して、未来をつくるために今何をすべきか、将来どういうことをすべきかを考えて、行動に移すことが大事です。
そのようなリーダー層を育成するためには、本質的で難易度が高く、しかも複雑性のある課題に真正面からチャレンジしてもらうことが必要です。リーダーが火中の栗を拾えば、周囲もその行動様式を模範として率先して難易度の高い課題に取り組むので、組織のレベルが上がっていきます。そういったリーダーを多く育てていきたいと思っています。

三井物産の競争力はどこにあると考えますか

三井物産の競争力は、さまざまな事業領域において複合的な案件を構築していく力や、付加価値を創出しながらお客さまのお役に立つ多能型の商社ビジネスに幅広く取り組み、やり遂げる力であると考えます。そして、それらを支える金融・マーケティング・デジタルなどの機能軸を、絶えずアップデートしながら社会課題への現実解として提供する力も重要と考えています。これらの力は、商品や地域や時代が変わっても不変であり、当社の競争力の根幹となっています。そして機能軸の発揮、ネットワーク力、広義のトレーディング力を駆使して、バリューチェーンの中で、さらに三井物産として推進すべき個別プロジェクトに対して深い洞察が可能となり、ユニークで収益力の高いポートフォリオを構築できます。
お客さまやパートナーに対し当社が果たすべき役割は、産業を超えた解決策を提供することや、価値のある解決策を共同で作り、実行することで付加価値を生み出していくことであると考えています。そのために、産業を超えた連携力を発揮してやり抜くことが可能な、高い志を持ったプロフェッショナル人材を数多く育成し、お客さまやパートナーとの仕事に携わってもらうことも経営の役割であると思います。
当社が取り組む事業の中には長い年月をかける案件もあり、プロフェッショナル人材が組織として継続的に付加価値を発揮できるような、厚い人材層を有していることも当社の強みです。

現中経期間2年間での進捗と、
最終年度に向けた重点的な取組みを聞かせてください

2030年に向けて収益基盤を強化していく上で、そのベースとなる色々な案件を現中経の最初の2年間でかなり仕上げることができたという手応えを感じています。
最終年度では、Industrial Business Solutions、Global Energy Transition、Wellness Ecosystem Creationの3つの攻め筋における主要案件を着実に仕上げて、同時に翌期以降のアクションプランの土台となるビジネスの種や、仕掛かり案件、重点パイプラインなどをしっかり固めて、具体論から成る将来のあり姿につなげていきます。

基礎収益力拡大進捗状況を
どのように評価しますか

当社では、商品価格・為替を現中経公表時点での2026年3月期の前提に調整し、一過性要因等を除いた当期利益を基礎収益力として、中経の3年間で1,700億円拡大するターゲットを掲げており、中経2年目終了時点で+1,200億円まで進捗しています。一部の事業では想定を超えたマクロ環境の変化を受けて苦戦していますが、既存事業強化や赤字事業の撤退は順調で、全体として計画通り進捗していると評価しています。
引き続き、課題事業の改善策や対応力の向上を進め、中経最終年度でのターゲット達成に向けて、各施策を粘り強く推進します。

成長投資と収益基盤のあり姿について
教えてください

現中経期間中では、2兆3,000億円を超える成長投資を行う予定です。先進国と新興国のバランスを取りながら、時間軸も意識し、化学品、ウェルネス、食料などのミドルリスク・ミドルリターンで早期に収益貢献を開始する事業と、金属資源・エネルギー・インフラなどの長期収益基盤を拡充する事業の双方で、順調に進捗しています。これにより、面の拡大に応じた、より大きなアップサイドの獲得能力を有し、さらに競争力のある形で下方耐性を付けていくことが可能となります。
当社の最高益は、2023年3月期の基礎営業キャッシュ・フロー1兆2,055億円、当期利益1兆1,306億円です。この1兆円を超える利益水準を実現させた過程で、市況などのアップサイドを効果的に取り込む方法や、会社全体の統合的なリスクマネジメント機能の向上を、組織として習得することができました。今後さらに収益基盤を押し上げるための高度なリスクマネジメントを意識していきたいと考えています。
当社のポートフォリオは成長投資によってさらに強化され、ポートフォリオマネジメント能力はトラックレコードを通じて向上しています。この積み重ねにより、2030年に向けて1兆円を優に超える利益水準を継続的に生み出す事業基盤を構築していきます。これは基軸通貨である米ドルにおいては、基礎営業キャッシュ・フローで10 billionドル(100億ドル)というレベルを実現する力をイメージしています。希少な資源・素材やモビリティ、インフラの提供、エネルギーの安定供給とトランジションの両立、ヘルスケア・ウェルネスの質的向上といった、複雑化する社会課題への現実解提供を通じ、持続可能な成長を追求し、事業基盤を飛躍的に向上させたいと思います。

収益基盤の拡大に向けた、
課題について聞かせてください

収益基盤を拡大するためには、人的資源の最大活用や機動的な配置を行うと同時に、社員一人ひとりのリスキリングをさらに進めることで、同じ人数でより多くの優良アセットをマネージできる組織体制を構築する必要があると考えています。
そして、世界各国で人材獲得の競争が激化していることをリスクと捉え、優良人材を絶えず獲得していくための更なる企業努力を積み重ねていきます。

ROEを持続的に向上させていくためには、
どのような施策が必要と考えていますか

ROEを向上させるためには、ミドルゲームによる既存事業の収益力向上を徹底していくことが必要であると考えています。また、新規事業に対するリターン目線を一層引き上げ、投資の厳選を行い、トラックレコードを積み上げ、ボトムラインを引き上げていくことが必要です。さらに、各事業を少数精鋭体制で推進し、組織を肥大化させずにより多くの優良資産を管理できる体制を構築していくことも重要と考えており、これらの施策によって、当社のリターン水準を高めていきます。
そして、キャピタル・アロケーションを通じて、経営として引き続き成長投資と株主還元拡充の双方にバランスよく資金を配分していくことで、資本効率を高めROEの向上を目指します。
基礎営業キャッシュ・フローは4期連続1兆円規模を達成し、力強いキャッシュ・フローを確認できたことから、現中経期間の基礎営業キャッシュ・フロー累計見込みに対する株主還元の割合を、50%水準に引き上げました。キャッシュ・フローのトラックレコードに加え、収益基盤を大きく成長させていく道筋が具体的に見えていることを背景に、現中経終了以降も累進配当を継続する方針です。自己株式取得についても、成長投資とのバランスや株価水準を含む経営環境を総合的に勘案し、機動的に判断していきます。

取締役会の構成を変更した手応えについて教えてください。
また、取締役会の実効性向上に向けて、
どのような議論を行っているのか教えてください

当社は、2024年6月に、取締役の人数を従来の15名から12名とし、また社内役員/社外役員の割合を60%/40%から50%/50%とする構成としました。この変更によって、さらに中身が濃く、戦略的で深い議論ができるようになったという手応えを感じています。
今後の取締役会の更なる実効性向上に向けて、取締役への日頃の情報共有の方法を一層工夫し、取締役会でのストラテジーディスカッションに十分に時間をかけることで、より深い議論を行えるようにしていきたいと考えています。

株主、投資家の皆様へ

当社は、長期持続的で再現性があり、さらに成長性がある事業から構成されるポートフォリオを運営し、実績を積み上げてきており、さらに高いレベルで成果を出していきたいと考えています。
世界各国で事業を展開し、リスクを分散させながら優良資産を積み上げていくことで、高い収益性、成長性と強靭性を兼ね揃えた良質なポートフォリオの構築を継続的に進め、グローバルな社会課題に現実解を提供し、世界経済の成長と共に収益を確り取り込んでいきます。そして、株主還元の目線を長期的に向上させながら、株主、投資家の皆様からのご期待に応え、より高い市場の評価を得られるよう経営を行ってまいりますので、引き続きご支援いただけますようよろしくお願い申し上げます。

堀 健一