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CFOメッセージ

事業ポートフォリオの良質化や
ミドルゲームの取組みの進捗と実績を示しながら、
当社ならではの成長ストーリーを
お伝えしていきます

代表取締役 専務執行役員
CFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)

重田 哲也

中期経営計画2026(現中経)1年目の進捗と
今後について教えてください

2024年3月期の当期利益は1兆637億円となり2期連続で1兆円超、また基礎営業キャッシュ・フローは3期連続で1兆円規模となりました。中経で掲げた基礎収益力拡大+1,700億円については、2024年3月期断面で+550億円まで進捗し、ミドルゲームの取組みと新規投資による収益貢献の成果が表れてきています。また、早期収益貢献と長期収益基盤構築の両立に向けた成長投資の実行は順調で、事業ポートフォリオの良質化が進捗しています。

ミドルゲームの取組み

事業投資の入口と出口への注目は高くなりがちですが、本質的な事業価値を高める取組みは、その間の段階にあたる個別事業の強化やターンアラウンドの実行による収益力の向上と考えています。当社ではこのミドルゲーム、すなわち中盤戦をしっかりと勝ち抜くことの大切さを当社経営のリーダーシップチームから発信し、社内で浸透させてきました。

一方で、その進捗状況を踏まえると、ミドルゲームの取組みについては改善の余地が十分にあると思っています。各事業会社においても、当期利益や基礎営業キャッシュ・フローのみならず、ROICやROE等の効率性指標、あるいはEBITDAやバリュエーションのマルチプルの引き上げ等、各社のステージに合わせたKPI設定により、経営レベルの向上に取り組みます。また、個別の事業環境の影響等もあり、一定数の赤字事業があります。赤字事業の削減は収益改善への即効性があるため、ミドルゲームの取組みとして意欲的に進めていきます。

事業ポートフォリオの良質化

足元の収益力強化については、ミドルゲームの取組みに加え、投資実行直後から収益貢献を開始する成長投資を着実に積み上げます。また、中長期的な収益基盤の構築については、例えば、中経の攻め筋の1つGlobal Energy Transitionで脱炭素や次世代燃料に係る事業構築を進めていますが、これらは収益化に時間を要するものもあります。そのため、事業ポートフォリオの入替えでは、収益貢献までの時間軸を分散させ、バランスよく組み合わせてその取組みを進める必要があります。このように、収益貢献やキャッシュ・フローにおける時間軸の分散と、先進国と新興国にまたがるグローバルな地域分散、商品や事業領域の分散を掛け合わせ、強い分野を更に強くしながら、事業ポートフォリオ全体の良質化が進捗している手応えがあります。

事業ポートフォリオ良質化のドライバーについて教えてください

各事業本部等、現場における事業ポートフォリオの良質化に対する目線が上がっています。これは、効率性指標となるROICの浸透や、投資の厳選に向けた全社的な取組みの成果と考えています。

ROIC導入の効果

中期経営計画2023(前中経)において、効率性の議論のための指標として導入したROICの浸透による効果は大きく、経営のリーダーシップチームと事業本部長の議論でも効率性の追求が深まっています。中経の基礎営業キャッシュ・フローや当期利益の目標達成の議論において、事業領域ごとの効率性をROICで可視化して議論できるので、その追求という観点で各事業本部経営のレベルが上がってきたと感じています。さらに、キャッシュ・フロー・アロケーションの枠組みに対する社内の理解が深まったことにより、ポートフォリオ良質化のためには「より収益性・成長性の高い案件にポートフォリオを入れ替える」というマインドセットが定着してきました。また、既存事業の保有意義検証においては、将来的にコア事業に育っていくものに厳選するという観点から、その目線が上がっています。例えば、保有上場株式についても、厳選の目線が上がった結果として積極的な縮減が進んでいます。成長投資においても、全社での目線が上がると各事業本部の視点を超えて、より良質な案件を選別する意識が高まり、事業ポートフォリオの良質化は持続性のある取組みになっていると感じています。一方、ROICは議論のための指標として機能していますが、事業領域ごとのリスクやステージに違いがあるので、一律のKPIとしては設定していません。各事業に対して右肩上がりのROIC改善を要求しながら年々磨きをかけている段階のため、更なる改善の余地は多いと考えています。

投資の厳選

新規投資の厳選も進化しています。まず、戦略性、すなわち「創る・育てる・展(ひろ)げる」という当社のビジネスモデルに合致しているかどうかにこだわっています。また、金利の上昇等を踏まえ、ハードルレートを引き上げるべきですが、案件によって前提条件の不確実性が異なることも勘案し、個別案件ごとに適切な判断が必要になります。足元では、複数の事業本部を管掌する役員を含めたリーダーシップチームが一枚岩になって、全社目線での案件パイプラインの優先順位づけを議論するなど、この優良案件の厳選プロセスに関与しています。さらに、多様な経験と専門性を持つ社外取締役が脱炭素・HSE等のサステナビリティの観点や、商品・技術の長期的な持続性等について指摘する機会も多く、新規投資の厳選のハードルはより高まっています。事業ポートフォリオに対する各事業本部の高い目線、リーダーシップチームによる全社目線、社外取締役の知見・経験などが有機的につながり、当社の事業ポートフォリオは今後更に強化されて、収益力は一層高まっていくと考えています。

*Health(健康)、Safety(安全)、Environment(環境)

株主・投資家の皆様へ

2024年6月30日を基準日として1対2の株式分割を行いました。投資単位を引き下げ、株主・投資家の皆様にとってより投資しやすい環境を整えるとともに、株式の流動性の向上と投資家層の更なる拡大を図ることを目指しています。

前中経から中経の1年目に至るまでを振り返ると、事業環境の追い風が成長機会を後押しする期間であったと捉えています。コロナ禍からの回復局面で事業環境が好転する中、当社の業績も拡大しました。このような事業環境下、当社は事業全体の下方耐性を強化するとともに、追い風による業績アップサイドを確実に取り込むことができる事業基盤を強化してきました。そのために必要な改革は、すべてにおいて後回しすることなく、全体のバランスをとりながら進めることができました。当社を取り巻く環境を見渡すと、地政学的リスクへの対応、サステナビリティへの取組み、サプライチェーンの高度化やバックアップ構築等の必要性が引き続き高く、世界中で当社の機能発揮が求められる局面はまだまだ広がっていくと感じています。

当社は、グローバルかつ幅広い産業にわたって、社会課題への産業横断的な現実解を提供しながら、キャッシュと利益を生む成長投資を実行し、リターンを積み上げ、株主還元にも配分していくポジティブなサイクルを回し、ROEの持続的な向上を意識しながら、当社らしい価値創造を続けていきます。そして、私は当社の継続的な成長ストーリーと事業の魅力と可能性、その実績について引き続き皆様に分かりやすくお伝えしていきたいと思います。