CHROメッセージ


社員エンゲージメントの向上は、
人材マネジメント上のあらゆる場面で
好循環を生み出し、企業価値の向上へとつながる
「『未来をつくる』人をつくる」の発行に期待することを教えてください。
内外環境の不確実性が高まる中で、企業が持続的な成長を図るためには人材が何よりも重要な経営資源であることは言うまでもありません。当社は旧三井物産*の創立以来、一貫して「人」を大切にする企業文化を育んできました。本レポートでは、当社の経営理念(MVV)を体現できる人材の採用と中長期的な視点に立った人材育成、弛まぬ組織開発等に対して、当社がどのように取り組み、成果を上げてきたか、また、これからさらに強化、加速すべき領域はどこかについて、人材マネジメントの基本的な考え方と併せて幅広いステークホルダーに分かりやすく紹介することを意図しています。そのため本レポートの作成にあたっては、社員の具体的な成長ストーリーの紹介に加えて、当社の人材戦略とさまざまな人事施策をISO30414のガイドラインに沿って可能な限り数値をもって紹介することを心がけました。本レポートを通して当社のグローバル・グループでの「人」に対する取組みと企業価値の持続的な向上の間の好循環を示したいと思っています。
「人の三井」という言葉が持つ意味を教えてください。
「人の三井」という言葉は、「人」をなによりも大切にするという当社の企業文化を評していただいたものと捉えており、とてもありがたいことだと感じています。一方、当社は社員を信頼し大切にすると同時に、社員一人ひとりに自律的な「個」として自ら考え、行動することを求めています。当社は「強い『個』の育成」を人材戦略の一つとして掲げていますが、これはグローバル・グループで組織の多様性を尊重し、インクルージョンを推進するに際しても変わることはありません。
人的資本投資がもたらす効果をどのように評価しているのでしょうか。
人材の価値を最大限に引き出し、高めていくことによって企業価値の持続的な向上を図ることは、当社経営上の最重要事項です。そのために当社は人材の採用から育成、任用に加え、社員一人ひとりのキャリアの将来像を踏まえた人材開発、エンゲージメント向上にも資する組織開発のためのさまざまな施策を講じています。
これらの取組みは当社競争力の源泉であり、持続的な成長に必要な戦略投資ですが、その効果の測定は、さまざまな角度と、異なる時間軸により多角的、複合的に行う必要があります。人的資本投資が当社の企業価値向上にどのように結びついているか、今後もさまざまな工夫を凝らして本レポートで分かりやすく説明したいと思います。当社では、Mitsui EngagementSurvey(MES)と呼んでいる社員エンゲージメントの調査結果を、企業価値向上や業績との相関が認められる重要な経営指標の一つと捉えています。MESは当社の国内外のすべての拠点と重要グループ会社の社員を対象に毎年実施しているもので、社員の仕事に対するやりがいや誇り、成長実感、所属組織の戦略や方針に対する共感といった点を調査、分析しています。社員エンゲージメントの変化に注目し、複数の指標に基づくエンゲージメントの向上を図ることは、組織力、現場力の強化にもつながり、結果として生産性の向上にもつながるものです。MESの結果は、経営会議、取締役会にも報告されており、非財務指標の一つとして取締役報酬(除く社外取締役)の評価指標としています。
中期経営計画2026の最終年度となりますが、特に注力される点についてお聞かせください。
中期経営計画2026では「強い『個』の育成」、「インクルージョン」、「戦略的適材配置」の3つを人材戦略の柱として掲げました。特に、戦略的適材配置は本年も強力に推し進めたいと思います。Bloomと名づけたグローバル・タレントマネジメントシステムを導入し、2024年12月から本格稼働しています。全世界の社員一人ひとりの人材情報を、スキルや経験、キャリア志向を含めて、システム上で一元管理し、国内外を問わず最適な人材をグローバルで機動的に編成、配置することに活用しています。当社海外拠点での現地採用社員のライン長比率は現在19%ですが、この比率はグローバルな適材配置を通じてさらに上昇する見込みです。
南西アジアの戦略拠点であるインド三井物産やドイツ三井物産の社長には現地採用社員が起用されており、今後とも現地採用社員の経営層への登用は着実に進んでいくことが期待されます。
さまざまな社会課題の解決に果敢に挑む
多様な人材を育成、輩出することが当社の使命
女性社員の活躍推進の状況はいかがでしょうか。
社長も出席してのHR Strategy Meeting (HRSM)での議論をもとに、さまざまな取組みを進めた結果、当社の女性活躍推進には着実な進捗がみられます。
当社海外拠点での女性管理職比率は4割を超えており、これまで課題だった国内女性管理職比率も2025年3月期は11%に上昇しました。また現在は約150名の女性社員が本店から派遣され海外で活躍しています。当社単体の女性社員比率は30%、女性採用比率は40%に高まっていることも踏まえ、2030年には国内女性管理職比率を20%に引き上げることを対外目標として掲げています。
HRSMについてお聞かせください。
当社は幅広い産業分野で多種多様な事業を国内外で展開しており、人事戦略の策定、実行に際しては、当社のグローバル・グループでの成長戦略とのアライメントを強く意識しています。このため当社では、社長とすべての事業本部長との間で毎年行われる事業計画・予算会議と共にHRSMを別途開催しています。HRSMには社長、CHRO、管掌役員、事業本部長が出席し、事業本部の人材戦略、グローバル・グループでの重要ポジションのサクセッションプラン(後継者育成計画)、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等、幅広い経営テーマについて議論を行い、年次の組織目標・アクションプランの確認につなげています。
最後に、CHROとしての決意をお聞かせください。
多様な人材の活躍と成長を後押しし、それを企業価値の持続的な向上につなげていくことは当社の人材戦略の根幹です。人材をめぐるグローバルな競争環境は年々厳しさを増しており、当社がこれからも「挑戦と創造」を続けていくためには、さまざまな社会課題を自分ごととして捉え、その解決に果敢に挑む多様な人材を育成、輩出することが不可欠です。先人が「自由闊達」と「挑戦と創造」という言葉に込めて大事にしてきた価値観を、当社の「人」を大切にする企業文化とともに、より力強くグローバル・グループで浸透を図りたいと思います。
HR Strategy Meeting
経営戦略と人材戦略を統合的に捉え、組織の持続的成長を支えるために、人材に関する重要なテーマを深く掘り下げて議論する場です。当社グループの重要ポジションのサクセッションプラン(後継者育成計画)を中心に、女性社員や海外採用社員等多様な人材の活躍状況と育成方針の確認・共有を行っています。
この議論には、社長とCHRO、人事総務第一部長・第二部長が参加し、各事業本部長、コーポレートスタッフ部門の部長、海外地域本部・地域ブロックのCHROと直接対話を重ねています。これにより、グローバルかつ多様な人材から構成される後継者人材プールの状況を継続的に把握し、戦略的な適材適所の配置を通じて、組織パフォーマンスの最大化を図っています。
また、想定外の事態への備えとしてのBCP(事業継続計画)策定による組織マネジメントの連続性の観点からも重要な役割を果たしています。