CEOメッセージ

挑戦を通じ、強く育った人材が、さらに価値を生む。この連鎖こそが語り継いできた姿 「未来をつくる人」 代表取締役社長 堀 健一 挑戦を通じ、強く育った人材が、さらに価値を生む。この連鎖こそが語り継いできた姿 「未来をつくる人」 代表取締役社長 堀 健一

多様な人材が、異なる意見をぶつけ合いながら、互いを認め合い、自由闊達な風土の中で挑戦を重ねることが、三井物産の価値創造の原動力です。現場に向き合い、仲間やパートナーと議論し、失敗から学びながら挑戦を続け、強く育った人材がさらに新たな価値を生む。この人の成長と価値創造の連鎖こそが、「人が仕事をつくり、仕事が人を磨く」と語り継がれてきた三井物産の姿です。

三井物産にとって「人」はどのような意味を持っているのでしょうか。

当社は設立以来、社会課題の解決を通じ、新たな価値を創造することで社会の発展に貢献し続けてきました。世界情勢の不確実性が高まり、事業環境の変化が加速する中においても価値創造を続けていくためには、変化を的確に捉え、未来の戦略を自ら構想し実行できる人を育て、一人ひとりの力を最大限に引き出していくことが重要だと考えています。この考えは、三井物産の前身となる旧三井物産*の初代社長、益田孝が述べた「三井には人間が養成してある。これが三井の宝である。」との言葉にも表れており、今も脈々と引き継がれています。

写真:代表取締役社長 堀 健一

中期経営計画2029では、「2030年、そしてその先へ 信頼とイノベーションで未来をつくる」をテーマに掲げました。当社にとって「人」は、その未来をつくる主体そのものです。信頼を築き、多様な知をつなぎ、現場に根差した発想と実行力によって新たな価値を生み出す。そうした人材を育て続けることが、三井物産の競争力の源泉であり、人的資本経営の根幹だと考えています。

このレポートのタイトルである「『未来をつくる』人をつくる(Empowering People to Build Brighter Futures)」も、まさに創業以来変わらぬ考え方を表したものです。

「人の三井」や「挑戦と創造」「自由闊達」等に込められた、三井物産ならではの人的資本の価値の高め方、引き出し方について教えてください。

当社が人の力を引き出すために大切にしてきたのが仕事への姿勢や企業風土です。それを私たちは「挑戦と創造」や「自由闊達」といった言葉で表してきました。このような価値観は現在の経営理念(MVV)における「変革を行動で」「多様性を力に」「個から成長を」「真摯に誠実に」といった4つのValuesに受け継がれ、今も当社の根幹を成しています。

変化が常態となった社会環境において、これまでのやり方を踏襲するだけでは、新たな価値を生み出すことが難しくなっています。多様なバックグラウンドを持つ人材が、異なる意見をぶつけ合いながら互いを認め合い、自らを磨いていく。そのようなインクルーシブな環境、まさに「自由闊達」な風土が、持続的な成長を続けていく上で重要です。

複雑化する世の中において、正解にたどり着くことは簡単ではありません。だからこそ、現場に向き合い、仲間やパートナーと議論し、失敗から学びながら挑戦を続けられる環境が必要です。挑戦を通じて人は鍛えられ強くなり、強く育った人材がさらに新たな価値を創出する。この人の成長と新しい価値の創造が相互に連鎖する姿こそ、「人が仕事をつくり、仕事が人を磨く」と先達たちが語り継いできた三井物産の姿です。

社員に求められる志や能力・スキル等の資質、果たすべき役割をどのように考えていますか。

当社の人材の強みは、それぞれが異なる志や経験、専門性を持ち、自律的に物事やビジネスを考えることができる「インディペンデント・シンカー」たる「個」の集団であることです。

そのためには、まずはプロフェッショナルであることが求められます。当社の社員は担当する事業領域を掘り下げる経験を通じて、必死に努力し、知識とスキルを磨かなければその道のプロになれないことを体感的に理解しています。また同時に、自分自身も含め誰もが「発展途上」にあるとの謙虚な意識も必要です。こうした自覚を持ち、新しい知識を吸収し続けることで、お互いのキャリアや専門性をリスペクトし合う風土が醸成されます。

プロフェッショナル同士だからこそ、分野を超えた応用が効き、事業本部や地域、機能を超えた機動的な横連携が実現できます。そして、自立した「個」が互いの多様な強みを認め合い、それぞれの力を掛け合わせながら協働することで、組織としてより大きな価値の創出につながります。

それには、好奇心、失敗から学ぶ強さ、現場を大切にする想い、そして見て聞いて触ったものを感じる五感も重要です。当社の社員には、人工知能(AI)を含むさまざまなテクノロジーを積極的に使いこなしつつ、現場に赴き、自らの五感に基づいて判断することを求めています。AIは、膨大な情報の探索や分析を飛躍的に高度化します。一方で、どの課題に向き合い、どのような未来を構想し、実行に移すのかを決めるのは人です。

プロフェッショナル人材の知見とAIの探索力を融合させ、従来にはなかった組合せから新たな価値を生み出していく。その担い手となる人材を育て続けることが、これからの三井物産における人材戦略の重要なテーマです。

人材戦略を推進していくために、執行体制やガバナンス体制では、何を重要視していますか。

当社は、事業本部体制を踏まえたグローバルマトリクス体制を採用し、事業本部や地域の組織の垣根を下げ、柔軟で機動的な連携を可能とする体制を敷いています。人材戦略においても、人材の採用地と事業本部が連携し、プロフェッショナルとしての専門性を強化するとともに、部門や地域にとらわれない研修・異動・挑戦機会を通じて、一人ひとりのキャリアパスをつくっていくことが重要です。この当社のタレントマネジメントの考え方を言語化し、グローバルの社員に共通の認識を持ってもらうため、グローバルタレントマネジメントポリシーを2024年に策定しました。加えてタレントマネジメントプラットフォーム「Bloom」が全世界で稼働を開始しています。グローバル人材の経験やスキルを可視化し、事業戦略と連動した配置や挑戦機会を通じて、社員の活躍と最適配置を後押ししていきます。さらに今後は、Bloomに登録された約9,000人のタレントデータとAIを掛け合わせることで、多様な「個」が持つ経験・スキル・専門性の新たな組合せや可能性を見出し、国や組織の枠を超えて力を発揮できる機会を広げていきます。グローバルに活躍する当社のプロフェッショナル人材による最適なチームを迅速に組成し、事業領域や地域に広がる知見を結集することで、当社ならではの価値創造力をさらに高めていきます。BloomとAIは、多様な人材が組織や地域の枠を超えて協働し、当社の総合力を支える重要な基盤になると考えています。

こうした取組みを加速するため、取締役会や経営会議においても、人材戦略を主要なテーマとして絶えず議論しています。特にインクルージョンをテーマに、組織の中でのラインマネージャーの育成や後継者プランを丁寧に検討する体制を構築しています。

社員の活躍の土台となるウェルビーイングについても取組みを進め、身体と心の安全・安心だけではなく、一人ひとりが自分らしく、やりがいを持って、仲間と共に活き活きと働ける状態を目指しています。

ステークホルダーとの対話から得た気づきや、人的資本経営の推進に向けた考え方について聞かせてください。

ステークホルダーと共に価値をつくっていくのが企業のあるべき姿です。そのためには長期の時間軸で方向性を示し、各ステークホルダーに賛同、支援、理解してもらうことが重要です。当社では、日々のイノベーションの実践を通じて、産業横断的な現実解の提供や、社会・市場ニーズに応じた商品・サービスの長期安定供給に取り組むことを掲げていますが、その実現には人の力が不可欠です。

当社が目指すのは、社員一人ひとりが成長を続け、多様な人材との協働やAI・データの活用も取り入れながら、新たな可能性を切り拓いていく組織です。その基盤となるのは、社内外のステークホルダーとの信頼関係です。信頼があるからこそ、多様な知がつながり、新たな挑戦やイノベーションが生まれます。

社内外のステークホルダーとの対話を通じて、当社の人材に関する考え方や目指す方向性を共有し、共感と信頼の輪を広げていきたいと考えています。これは社員に対しても同様です。一人ひとりが自らの成長と会社の発展とのつながりを実感できることが、人的資本経営をさらに前に進める力になると考えています。

「『未来をつくる』人をつくる」レポートを発行する理由をあらためてお聞かせください。

写真:代表取締役社長 堀 健一

常に経営の中心に「人」を置いてきた当社が、人材についての情報に焦点を当てたレポートを発行し、ステークホルダーに発信することは極めて自然です。ステークホルダーは株主や投資家、取引先やパートナー企業、地域社会だけでなく、当社で働く社員や当社の事業に関心を持つ方も含まれます。当社で働くことを希望される方々にも、三井物産における人の重要性や成長機会があるのかを丁寧に説明していくことが大変重要だと考えています。

このレポート「『未来をつくる』人をつくる」では、「人」についての三井物産の考え方や取組みをステークホルダーの皆様にお伝えするため、将来のあり姿に向けた当社の人材戦略と具体的な進捗について、絶えずアップデートしながら発信していきます。

社員一人ひとりの成長が、企業価値向上と社会課題解決の好循環につながっていく。その歩みを、ステークホルダーの皆様と共有していきたいと考えています。

サイン:堀 健一

法的には旧三井物産と現在の三井物産には継続性はなく、まったく別個の企業体です。