CEOメッセージ

挑戦を通じ強くなり、強く育った人材が価値を生むことこそが語り継いできた姿 「未来をつくる人」 代表取締役社長 堀 健一 挑戦を通じ強くなり、強く育った人材が価値を生むことこそが語り継いできた姿 「未来をつくる人」 代表取締役社長 堀 健一

変化に即応し未来の戦略を創る人を育て、
力を引き出していく

三井物産にとって「人」はどのような意味を持っているのでしょうか。

当社は設立以来、社会課題の解決を通じ、新たな価値を創造することで社会の発展に貢献し続けてきました。今後も予測が難しい激しい環境変化に柔軟に対応して価値創造を続けるためには、変化に即応し未来の戦略を創ることができる人を育て、それぞれの力を引き出していくことが重要だと考えています。この考えは、三井物産の前身となる旧三井物産*の初代社長、益田孝が述べた「三井には人間が養成してある。これが三井の宝である」との言葉にも表れており、今も脈々と引き継がれています。このレポートのタイトルである「『未来をつくる』人をつくる(EmpoweringPeople to Build Brighter Futures)」も、まさにその当時からの変わらぬ考え方を表したものです。

「人の三井」や「挑戦と創造」、「自由闊達」等に込められた、三井物産ならではの人的資本の価値の高め方、引き出し方について教えてください。

写真:代表取締役社長 堀 健一

当社が人の力を引き出すために大切にしてきたのが仕事への姿勢や企業風土で、「挑戦と創造」や「自由闊達」といった言葉で表してきまた。このような価値観は現在の経営理念(MVV)における「変革を行動で」「多様性を力に」「個から成長を」「真摯に誠実に」といった4つのValuesに受け継がれ、今でも大切にしています。

変化が常態となった社会環境において、これまでのやり方だけでは新たな価値創造が難しくなっています。プロフェッショナルとしてのキャリア、年齢や性別、国籍等多様なバックグラウンドを持つ人材が、異なる意見をぶつけ合い、また互いを認め合う中で自分の足りない部分にも気がつく。そのようなインクルーシブな環境、まさに「自由闊達」な風土が、当社の「人」が新たな価値を持続的に創造していく上で重要だと考えています。

また、複雑化する世の中において、最初から正解を導き出すことも難しくなっていますが、それでも挑戦を続けられる環境が必要です。時には上手く行かないこともありますが、失敗から学ぶことで自らを鍛え、次のチャレンジにつなげることが大切だと当社では考えてきました。挑戦を通じて人は育ち強くなり、強く育った人材が価値を生む、人の成長と新しい価値の創造が相互に連鎖する姿こそが「人が仕事をつくり、仕事が人を磨く」と先達たちが語り継いできた三井物産の姿です。

社員に求められる志や能力・スキル等の資質、果たすべき役割をどのように考えていますか。

当社の人材の強みは、ユニークな個性を持つ一人ひとりが、それぞれの志を抱いて当社に入社しており、自律的に物事やビジネスを考えることができる「インディペンデント・シンカー」たる「個」の集団であることです。

そのためには、まずはプロフェッショナルであることが求められます。当社の社員は担当する事業領域を掘り下げる経験を通じて、必死に努力しスキルを磨かなければその道のプロになれないことを体感的に理解しています。また同時に、自分自身も含め誰もが「発展途上」にあるとの謙虚な意識も必要であることを知っています。こうした自覚を持ち、新しい知識を吸収して常に自分を磨くことで、お互いのキャリアをリスペクトし合う風土が醸成されます。プロフェッショナル同士だからこそ、幅広い分野で応用も効き、分野を超えた機動的な横連携が実現できるのです。

それには、好奇心、失敗から学ぶ強さ、現場を大切にする想い、見て聞いて触ったものを感じる五感を大事にすることも必要です。当社の社員には、人工知能(AI)のような新しいテクノロジーは道具として積極的に使いこなしつつ、現場に赴き自らの五感に基づいて判断することを求めています。

人材戦略を推進していくために、執行体制やガバナンス体制では、何を重要視していますか。

当社は、事業本部体制を踏まえたグローバルマトリクス体制を採用し、事業本部間や地域間の組織の垣根を下げ、柔軟で機動的な連携が可能な体制を敷いています。地域と産業横断的な当社の強みを融合することにより、複雑化する社会課題に対して、その時点で考えうるベストな現実解を提供しようとするものです。

人材戦略も同様で、人材の採用地と事業本部が連携し、プロフェッショナルとしての専門性の強化と、部門や地域にとらわれない研修や異動も含めた人材のキャリアパスをつくります。この当社のタレントマネジメントの考え方を言語化し、グローバルの社員に共通の認識を持ってもらうため、グローバルタレントマネジメントポリシーを2024年7月に新たに作成しました。加えてグローバルなタレントマネジメントプラットフォーム「Bloom」が2024年12月末までに全世界に導入されることで、これらのプロセスはより可視化され、多様な人材の適材配置による活躍推進が更に加速化するものと考えています。

取締役会や経営会議においても、人材戦略を主要なテーマとして絶えず議論しています。特にインクルージョンをテーマに、組織の中でのラインマネージャーの育成や後継者プランを丁寧に検討する体制が構築されています。ウェルビーイングについても取組みを進め、社員の活躍の土台となる身体と心の安全や安心だけではなく、一人ひとりが自分らしくやりがいを持って、仲間と共に活き活きと働ける状態にあることを目指しています。毎年実施しているエンゲージメントサーベイ等も活用しながら、組織の状況の確認・改善にも取り組んでいます。

多様なバックグラウンドを持つ人材が
インクルーシブな環境で価値創造していく

ステークホルダーとの対話から得た気づきや、人的資本経営の推進に向けた考え方について聞かせてください。

ステークホルダーと共に価値をつくっていくのが企業のあるべき姿です。そのためには長期の時間軸で方向性を示し、各ステークホルダーに賛同や支援、理解してもらうことが大変重要です。中期経営計画2026は、会社として預かる貴重な経営資源をどのように配分して価値創造につなげていくかを発信する場だと考えています。

例えば、中期経営計画2026で推進するエネルギートランジションについては、脱炭素社会に向けて橋渡し役となるエネルギーシフトを推進し、持続可能で収益基準を満たす事業モデルに落とし込む必要があります。その実現に必要な工夫とイノベーションを生み出すための経営資源の配分を、時間軸と共にステークホルダーに明示し、理解と賛同を得た上で取り組むことになります。

この考え方は人材戦略においてもまったく変わりありません。私は昨今の人的資本経営への社会的関心の高まりが示すとおり、経営資源の中で人を最重要とすることが経営の根幹であると確信しています。ですから、社内外のステークホルダーとの対話を通じて当社の人材に関する考え方や目指すべき方向性、戦略や推進中の施策を共有し、理解を深めたいと考えています。これは社員に対しても同様です。

「『未来をつくる』人をつくる」を発行する理由をあらためてお聞かせください。

写真:代表取締役社長 堀 健一

常に経営の中心に「人」を置いてきた当社が、人材についての情報に焦点を当てたレポートを発行して、ステークホルダーに発信することは極めて自然です。ステークホルダーは株主や投資家、取引先やパートナー企業、地域社会だけでなく、当社で働く社員や当社の事業に関心がある人も含みます。当社で働くことを希望される方々に向けては、三井物産における人の重要性、三井物産でどのような成長を実感できるのかを丁寧に説明していくことが大変重要だと考えています。

このレポート「『未来をつくる』人をつくる」では、「人」についての三井物産の考え方や取組みをステークホルダーの皆様にお伝えするため、将来のあり姿に向けた当社の人材戦略と具体的な進捗について、絶えずアップデートしながら発信していきます。

サイン:堀 健一

* 法的には旧三井物産と現在の三井物産には継続性はなく、まったく別個の企業体です。