[新たな価値創造への挑戦]
世界唯一の発酵技術で
排ガスから「次世代バイオ燃料」をつくる
株主通信 2019年冬号
次世代バイオ燃料事業への挑戦
三井物産は2014年、米国のバイオ技術会社であるLanzaTech, Inc. ( 以下ランザテック社)に戦略的出資を行いました。同社は微生物発酵を用いて、製鉄所や製油所などの排ガスからエタノールを製造するという独自のガス発酵技術の開発に成功。可食原料から製造されておらず、PM2.5削減にも貢献するエタノールとして注目されています。加えて、ランザテック社はエタノールからバイオジェット燃料をつくる触媒技術も確立しています。
当社は、ランザテック社の戦略パートナーとして、同社技術を用いた微生物由来のエタノールから、環境付加価値の高いバイオジェット燃料の事業化、量産に挑戦しています。


経済成長を妨げない形でのCO2削減が求められている
2016年、パリ協定が発効し、先進国も途上国も協調して気候変動問題に取り組むことが宣言されました。しかし、各国・地域の削減努力にもかかわらず、2017年には世界のCO2総排出量は4年ぶりに増加。国連環境計画(UNEP)の報告によると、その要因は経済成長にあるとされており、現在、経済成長を妨げない形でCO2削減を成し遂げることが課題となっています。
三井物産もこの社会的課題の解決のため、さまざまな角度からの挑戦を続けています。
排ガスからエタノールを生成する世界で唯一のガス発酵技術
米国に本社を持つランザテック社は、CO2やCOを含む産業排ガスを有用な燃料などに転換するガス発酵技術の開発に成功し、中国でエタノールを生産しています。現在、バイオ燃料の多くはトウモロコシなどの可食原料から製造されているため、人口増加に伴う食との競合や持続可能性といった観点から、非可食原料由来のバイオ燃料の開発が求められています。ランザテック社のエタノールは製鉄所や製油所からの排ガスを原料とするため、食との競合がなく、さらには排ガスを大規模に有効活用できることから、低炭素化社会への貢献も期待されています。
“新規事業のタネ”は世界中にある
エタノール需要の高い中国で第1号商業プラントが稼働
2018年5月、中国河北省で、製鉄所の排ガスからランザテック社の技術を用いてエタノールを製造する第1号商業工場が稼働開始しました。河北省の生産者では最大規模のエタノール工場であり、現在すでに安定稼働しています。
中国では10%の燃料用エタノールを自動車用ガソリンに混合する「E10政策」が打ち出され、エタノールの需要が急速に高まっています。三井物産はこうした機をとらえ、より環境付加価値の高いランザテック社のエタノールを普及させたいと考えています。

CO2やPM2.5の排出の大幅削減で大気汚染問題の解決にも貢献
中国では大気汚染の問題も深刻です。製鉄業は、発電業に次いでPM2.5の排出が多いといわれていますが、中国には世界の粗鋼生産量の約半分を占める製鉄所が存在しています。本プラントではCO2、PM2.5の排出を大幅に削減できることから、気候変動および大気汚染の解決にも貢献できます。
三井物産はグローバルネットワークを活かして、世界中のパートナーと共同でランザテック社の技術を用いたプロジェクトを開発・推進し、気候変動および大気汚染の解決に貢献することを目指しています。
次世代バイオ燃料の市場規模は拡大する見込み
航空輸送需要の増加を背景に、国際民間航空機関(ICAO)が2020年以降CO2の排出量を増加させないことを業界目標として設定するなど、航空業界は低炭素化を強く要求されている
低炭素化が強く求められる航空業界における協業
ランザテック社のエタノールを原料としたバイオジェット燃料も形になりつつあります。2018年にはヴァージン・アトランティック航空による初の商業フライトが成功。今年6月には全日本空輸株式会社(以下ANA)と同燃料の購入に基本合意し、将来の日本国内での商業生産を視野に入れた共同事業開発の覚書をANA、ランザテック社、当社間で締結しました。航空業界は今後、一層の低炭素化が求められるため、技術活用の場はさらに広がるとみています。
経済成長を妨げない形での低炭素化と更なる地域産業の発展を目指す
航空業界との協業は、ランザテック社および三井物産にとって大きな意義を持ちます。産業排ガスを大規模に活用してエタノールを生産し、そこから品質規格の極めて厳しいジェット燃料をつくり出せるという点が、ランザテック社の技術の強みと独自性です。将来的にはエタノールからバイオジェット燃料を一気通貫で量産し、日本を含む全世界へ供給することで、地球環境保全により大きく貢献できるバリューチェーンの確立を目指していきます。
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