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Environment

気候変動

方針・基本的な考え方


持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の国連での採択等、気候変動や自然災害の増加・激甚化傾向は世界の喫緊の課題であり、社会の持続可能性を追求していくうえで、企業の責任ある対応がますます重要になっています。

三井物産が特定したマテリアリティには、「安定供給の基盤をつくる」「豊かな暮らしをつくる」や「環境と調和する社会をつくる」が含まれ、環境方針においては、温室効果ガス(以下、GHG)の削減や気候変動の緩和と適応に貢献する事業の推進に努めることを掲げています。また、中期経営計画2026においては、気候変動は当社が対応すべき社会課題の一つとして、前中期経営計画から引き続き、脱炭素社会の実現に向けて事業ポートフォリオの変革を継続していきます。さらに、環境・クリーンテック分野の技術革新を事業機会とすることを戦略上の重点分野の一つと位置づけ、当該分野における投資機会の追求・拡充に取り組んでいます。

当社は国際的な枠組みであるパリ協定や日本の中長期的な削減目標に寄与する目標を掲げ、世界のさまざまな国・地域の経済・社会の発展と、気候変動の緩和および適応といった地球規模の課題の解決の両方に、幅広い事業活動を通じて貢献していきます。

2023年11月30日開催の三井物産インベスターデイ2023において当社の気候変動対応、脱炭素社会の実現に向けた進捗を発表しました。詳細はリンク先をご参照ください。


三井物産インベスターデイ2023:脱炭素社会の実現に向けた進捗

TCFD提言に基づく情報開示

開示方針


当社は、2018年12月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同しており、TCFD提言に沿って、責任あるグローバル企業としてステークホルダーの要請を意識した積極的な情報開示を進めます。


TCFD提言に基づく情報開示(2023年12月)(PDF 925KB)

ガバナンス


気候変動対応に関するガバナンス体制

当社では気候変動対応を経営上の重要課題と位置付けています。気候変動に関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略は、経営会議の下部組織であるサステナビリティ委員会が企画・立案・提言を行っています。 サステナビリティ委員会の活動については、取締役会による監督が適切に図られる体制となっており、サステナビリティ委員会における気候変動の審議事項は、定期的に経営会議および取締役会に付議・報告されます。2023年3月期はサステナビリティ推進活動実績・方針、役員報酬の評価手法、中期経営計画等、当社の気候変動への対応に関連する議題が取締役会に付議・報告されました。それに加え、社外役員も含めた取締役・監査役が気候変動対応をテーマとしたフリーディスカッションを行う等、気候変動対応に関する活発な議論がなされています。

サステナビリティ委員会

管掌役員 佐藤 理(代表取締役専務執行役員、CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)、サステナビリティ委員会 委員長)
事務局 サステナビリティ経営推進部、経営企画部

気候変動対応に関するガバナンス体制

気候変動関連議題

サステナビリティ委員会における気候変動に関する主な議題は、過去3年間で合計14件です。

サステナビリティ委員会における過去3年間での主な気候変動関連議題(2021年3月期)

  • GHG関連目標設定審議
  • 気候変動シナリオ分析審議
  • GHG排出量調査報告
  • 社内カーボンプライシング制度、GHG排出量データベース整備等進捗報告・方針協議

サステナビリティ委員会における過去3年間での主な気候変動関連議題(2022年3月期)

  • GHG長期目標達成に向けたロードマップに関する意見交換・報告
  • GHG削減貢献量算定ツール整備に関する報告
  • 役員報酬へのESG要素導入に関する意見交換
  • 気候変動/社内制度・施策の振り返りに関する報告と社内カーボンプライシングを含む今後の対応方針に関する審議

サステナビリティ委員会における過去3年間での主な気候変動関連議題(2023年3月期)

  • TCFD 提⾔に基づく気候変動関連情報開⽰の拡充に関する報告
  • 役員報酬の気候変動評価項⽬に関する審議
  • 気候変動に係る外部環境と当社課題に関する報告
  • Scope3 算定とシナリオ分析の進捗状況に関する報告
  • インベスターデイ「グリーントランスフォーメーションの実現に向けて」発表内容に関する報告
  • 社内カーボンプライシングの更新と更なる活用に関する意見交換・審議

サステナビリティアドバイザリーボード

気候変動を含む環境・社会テーマの外部有識者から構成されるサステナビリティアドバイザリーボード(旧・環境・社会諮問委員会)を設置し、メンバーからの情報や助言をサステナビリティ委員会の審議に活用しています。2023年3月期は、気候変動への取り組みに関し、意見交換を実施しました。

当社サステナビリティ経営の推進体制図やサステナビリティ委員会の活動に関する詳細はリンク先をご参照ください。


気候変動対応の役員報酬制度への反映

2023年3月期より、新たに業績連動型譲渡制限付株式報酬制度を導入することを決定し、2022年6月22日の株主総会で承認されました。同報酬制度は、当社が社会的責任を果たしつつ中長期的な業績と企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとして導入するもので、その評価指標の一つに、当社が重視すべき経営指標として気候変動対応を含むESG各要素を含みます。詳細は、2023年3月期有価証券報告書「第4 提出会社の状況、4. コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」をご参照ください。


2023年3月期有価証券報告書(PDF 10.3MB)

戦略


シナリオ分析の方針・プロセス

当社は、TCFDに2018年12月に賛同して以降、グローバルな経営環境の変化に対して、柔軟に対応し当社戦略のレジリエンスを高めるため、段階的にシナリオ分析に取り組んでいます。従来から、事業本部が対象事業のリスクと対策、定量的な影響度等を分析し、サステナビリティ委員会にて審議していますが、その重要性の高まりを受け、2023年3月期から事業計画の策定プロセスにシナリオ分析を統合しました。経営会議での報告・審議を経て取締役会にて承認される事業計画プロセスに組み込むことで、シナリオ分析の結果が経営にて確認・審議され、事業計画と事業ポートフォリオ戦略に反映されています。

選定したシナリオ

当社では、短期(0-1年間)、中期(1-10年間)、長期(10-30年間)の時間軸に分けて、最長2050年までのシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析に際しては、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlook(WEO)に記載のある以下のシナリオ等を参照して、移行リスク(*1)・機会の分析を行っています。一方、物理的リスク(*2)に関しては、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)にて採用されているRCP(代表的濃度経路)も参考にしつつ、一定額以上の投資性資産を有する事業に関して、過去5年間に発生した気候災害の状況を基に調査し、影響の分析を行いました。

*1:政策・法規制や、技術開発、市場動向、市場における評価等の変化によってもたらされるリスク
*2:気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる物理的な被害等のリスク

  • IEA Stated Policies Scenario(STEPS):現在公表されている各国の政策目標を反映したシナリオ
  • IEA Announced Pledges Scenario(APS):政府の発表済み公約が全て実施された場合を想定したシナリオ
  • IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE):地球温暖化を産業革命前に比べて1.5°C未満に抑える目標を達成するためのシナリオ
  • IPCC RCP(代表的濃度経路)8.5シナリオ:2100年に世界の平均気温が約4°C上昇するシナリオ

主な気候変動リスクと機会

当社は、幅広い事業を世界各国・地域で展開していることから、気候変動に伴うさまざまなリスクと機会を、事業戦略策定において考慮しなければならない重要な要素の一つと捉えています。当社は気候変動に伴うリスクと機会を短中長期の時間軸とあわせて特定し、定期的に見直しを行っています。また、各セグメントの環境・トレンドの変化やポートフォリオの入れ替え等の内外環境変化に応じて見直しを行い、適時適切に事業戦略に反映しています。

移行リスク 政策・法規制リスク
  • 各国・地域の政策による脱炭素排出型エネルギー利用へのシフト(エネルギー・電源構成の変更)
  • 炭素税の賦課やキャップ・アンド・トレード型の排出権取引制度に代表されるGHG 排出規制
技術リスク
  • 気候変動に適応した新技術の参入や代替製品の開発・普及に伴う、既存商材・サービスの需給の変化、既存製造設備の陳腐化
市場リスク
  • 化石燃料関連製品・サービスの需給の変化、保有権益の価値毀損
  • 金融機関・保険会社の脱炭素方針による事業推進における資金調達リスク
物理的リスク 急性リスク
  • サイクロンやハリケーンの発生による豪州・米国等の事業会社の操業への支障
慢性リスク
  • 気温上昇等による農水産物への影響や海面上昇に伴う操業への支障

また、各セグメントにおいて、内外経営環境を見極め、事業を取り巻くリスクと機会を特定しています。

セグメント リスク 機会
金属資源
  • GHG排出量削減を見据えた高炉粗鋼生産減少による原料(鉄鉱石・原料炭)需要減
  • 環境対応コスト増・炭素税
  • 環境許認可取得ハードルの上昇
  • 循環型社会を見据えたリサイクル事業の拡大
  • 電動化に伴う二次電池原料や銅・アルミの需要増
エネルギー
  • 化石燃料の需要減少
  • 環境対応コスト増
  • 環境負荷が相対的に少ないガス・LNG マーケットの拡大
  • CCS/CCUS*事業の拡大
  • バイオ燃料、水素・燃料アンモニア等、次世代エネルギーマーケットの拡大
  • 排出権事業やエネルギーマネジメント事業等のエネルギーソリューション事業の拡大
機械・インフラ
  • 石炭火力発電事業を取り巻く社会環境の変化
  • 新技術・新市場創出に伴う既存ビジネスの需給変化
  • 地政学リスクや異常気象に伴う輸送貨物量への影響
  • 再生可能エネルギー発電事業の拡大
  • 電力系統Volatility高まりの解決に寄与する電力トレーディング、系統安定化サービスの需要増
  • サーキュラーエコノミー、ZEV(Zero Emission Vehicle)事業の拡大
  • 次世代燃料船事業等の拡大
化学品
  • 化石燃料由来の化学品の需要変化
  • 環境規制強化による産業構造の変化
  • 循環型社会を見据えたリサイクル事業の拡大
  • バイオケミカル、省エネ素材の需要増
  • 森林吸収源、排出権ビジネスの需要増
鉄鋼製品
  • 化石燃料掘削関連資機材の需要減少
  • 脱炭素化対応に伴う鋼材生産・加工・サプライチェーン見直し
  • インフラ長寿命化へ向けた補修事業の需要増
  • EV 普及に伴う車体軽量化、高効率モーターの需要増
生活産業
  • 気温上昇等に伴う食料産地の変化
  • 異常気象によるサプライチェーンへの影響
  • 食糧資源の確保と安定供給ニーズの高まり
次世代・機能推進
  • 化石燃料関連の価格ヘッジニーズ減少
  • 自然資本、Energy Transitionに関連するアセットマネジメント事業の需要増
  • サステナブルな社会に寄与するコモディティ取引のヘッジニーズ増

*:CCS(Carbon Capture and Storage): CO2の回収・貯留
    CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage): CO2の回収・利用・貯留

移行リスク分析

当社では、選定した事業に対して、複数の気候変動シナリオを活用して、移行リスクに伴う財務計画・事業戦略への影響や必要な対応策を検討しています。

シナリオ分析対象事業の選定

事業規模と気候変動インパクトを踏まえ、優先度を「高」「中」「低」に分類し、優先度「高」の事業をシナリオ分析の対象として選定しました。

シナリオ分析対象事業の選定

事業分析結果

今回選定した10事業に対するシナリオ分析結果は以下の通りです。シナリオ分析で参照したシナリオを以下の通り現行シナリオ、移行シナリオに区分して整理しています。

  • 現行シナリオ:
    各国における現行の気候変動対応が維持されること等により、化石燃料をはじめとしたGHGを排出する資源の需要は新興国を中心に一定程度見込まれ、また気候変動に影響するビジネス上の慣行が一部で継続するシナリオ(STEPS等)。
  • 移行シナリオ:
    気候変動対応に向けた先進的な取り組みや制度が国際的に発展、また、脱炭素化の技術革新と普及によって省エネと電化が進むことにより、化石燃料をはじめとしたGHGを排出する資源の需要が低迷し、再生可能エネルギー等の需要が急速に拡大するシナリオ(APS、NZE等)。

現行シナリオおよび移行シナリオにおいて、それぞれ現在から2050年にかけての対象事業への影響を以下3段階にて表示しています。また、特に事業規模と気候変動インパクトを勘案し重要度が高いと判断した石油・ガス開発事業およびLNG事業、原料炭事業、火力発電事業は、事業環境認識や各種シナリオを踏まえた当社が想定するベースケースを基にした既存事業への2030年3月期、2040年3月期、2050年3月期断面における当期純利益への影響額を分析し3段階で表示しています。なお、分析には社内カーボンプライシングを使用しています。価格設定についてはIEA等の外部機関が公表している定義や価格を参考に、対象資産の国・地域、時間軸等を考慮した価格設定を行っており、2050年までの期間に亘り、2°Cシナリオ相当は先進国は概ね$1~$200/トン、その他地域は概ね0~$160/トン、1.5°Cシナリオは先進国は概ね$1~$250/トン、その他地域は概ね$0~$200/トンの価格を適用しています。

対象事業への影響
  • 好影響:事業に好影響を及ぼす
  • 横ばい:横ばいか、事業に僅かな影響を及ぼす
  • 悪影響:事業に、悪影響を及ぼす
対象事業への影響額

大:▲300百万USD以上
中:▲100百万USD以上▲300百万USD未満
小:▲100百万USD未満

石油・ガス開発事業およびLNG事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業環境認識に基づく事業への影響 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
石油需要の成長は徐々に鈍化し2030年代半ばに需要がピークに達した後、2050年に向けて略横ばいになると見込みます。天然ガス需要は中国・インドを中心に、アジアの新興国の電力・産業セクター向けに堅調に拡大する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
先進国の輸送セクターの電化を中心に脱炭素化が進み、石油需要は2050年にかけて半減する見通しです。天然ガス需要も今後5-10年間は石炭火力代替として底堅いものの、2050年に向けては再生可能エネルギーの普及により発電セクターを中心に3分の2程度に減少見通しです。一方、水素原料用途等の新規需要は長期的に拡大する見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
全世界の天然ガス需要は2025年以降緩やかに減少傾向となり、2030年以降2050年に向けて半減する見込みですが、世界的な脱炭素の流れから、水素原料用途としての天然ガスの重要性はさらに大きくなる見通しです。一方、石油需要は2030年以降急激に減少し、2050年にかけ現在の4分の1程度まで減少する見通しです。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

当社エネルギーセグメントでは、世界の持続可能な成長のための安定供給の基盤を提供する目的から相対的にGHG排出の少ないガス・LNG事業を中心にエネルギー供給事業への継続的な取り組みを推進しています。
その上で、 今後の国際エネルギー情勢や地政学も考量しながら、需給動向の急激な変化へのリスク耐性を高めるべく、既存事業資産の競争力強化、GHG排出量削減や脱炭素化取り組みも含め、資産価値向上に継続的に取り組みます。
特に、新規案件については各国の政策転換や炭素税導入等、潜在的な将来のカーボンコストも考慮のうえ、競争力の高い案件を厳選していくとともに、時機を捉えた資産リサイクルも含め、バランスの取れた事業資産ポートフォリオを構築していきます。
バリューチェーン全体での脱炭素化へも貢献しながら、トランジションエネルギーであり次世代燃料の原料ともなりえる天然ガスの上流開発や液化能力の増強に引き続き取り組みます。
上流事業知見を活かし、技術開発動向や各国制度改革にも留意しつつCCS/CCUS事業や地熱事業、ガス上流資産や既存顧客のネットワークを活かした水素・アンモニア事業等の早期商業化を目指します。
好影響 横ばい 悪影響
量の拡大と質の改善というDual Challengeに直面する中、再生可能エネルギーは着実に拡大する一方、当面、化石燃料が主要エネルギー源として不可欠であることは不変です。いずれのシナリオにおいても石油需要はピークアウトし、横ばいか減少を見込みますが、今後、当社の原油・ガス持分権益生産量におけるガス生産比率の上昇が見込まれることから、その影響は限定的です。
天然ガスは、環境負荷が比較的低く、気候変動の課題に対処しつつ拡大する需要を満たす現実解として、重要なトランジションエネルギーです。当社は、両移行シナリオ下において、中期的にはアジアを中心としたLNG/天然ガスの堅調な需要を見込むものの、移行シナリオ(1.5°C)下においての需要減少を踏まえると上流資産の価値が毀損するリスクがあり、需要動向と当社事業への影響については継続的な検証・モニタリングが必要です。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

移行シナリオにおける影響額および前提条件
2°C相当/APS等 1.5°C/NZE等
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
石油・ガス開発事業およびLNG事業での移行シナリオ分析では、商品の市場性の高さからその需給は中長期的には商品価格に反映されるものと見なし、IEA World Energy Outlook (APSシナリオ/NZEシナリオ) 他の市況見通しも参考にしながら、当社保有資産の商品価格の下方耐性を中心に分析しています。
なお、本分析に当たっては既存事業への影響を見極めることを主たる目的としていることから保有資産を生産終了に至るまで継続保有する前提としています。

2024年3月期第4四半期決算 プレゼンテーション資料(P.37 エネルギー:主な事業一覧)(PDF 3.85MB)

原料炭事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業環境認識に基づく事業への影響 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
先進国では、粗鋼生産量減少やスクラップ活用による高炉比率低下を背景に、2030年代から需要が漸減する一方で、インド・東南アジア地域では、高炉増設による2020年代後半以降の需要増加を見込みます。世界全体の原料炭需要は、2050年に向けて足元水準から緩やかに増加します。
原料炭の供給量は、新規計画等の増加が既存炭鉱の終掘により相殺されることで、中長期的に横ばいで推移し、需給のタイト化が見込まれます。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
現行シナリオで見込む、先進国でのスクラップや代替原料等の使用がさらに加速することから、原料炭の需要は中長期的に横ばいで推移し、2050年時点においても足元の水準に留まる見通しです。
供給側では各国の気候変動取り組み強化を背景に、新規・拡張計画の開発許認可取得・資金調達が難化し、供給量が減少、需給がさらにタイト化する可能性があります。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
脱炭素化要求のさらなる高まりを受けて、より効率的な鋼材使用等も進展し、他シナリオと比して粗鋼生産量、原料炭需要ともに一段の減少が見込まれます。
供給側の新規・拡張計画は、移行シナリオ(1.5°C)下ではさらに実行の難易度が上がり、供給量が減少、需給の一層のタイト化が進む可能性があります。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

原料炭は中長期的に堅調な需要が見込まれることから、当社保有資産の優良化に努め、需要家への安定供給を果たします。また、外部環境の変化を注視しつつ、事業パートナーと共に脱炭素社会を見据えた、随伴メタンガスの利活用や燃料・原料代替等の取り組みを強化していきます。
横ばい 悪影響 悪影響
現行シナリオでは、原料炭需要が微増で推移し、当社保有資産の競争力も維持されるため、事業収益性は底堅く推移する見込みです。
移行シナリオ(2°C相当/APS等・1.5°C/NZE等)では、需要減少に対して供給側での新規・拡張計画の実行が滞ることによって供給量も減少し、当社保有資産の競争力は維持されますが、排出削減技術導入、環境対応、資金調達コストの上昇が見込まれます。
ただし、同コストが原料炭価格に与える影響は、各国の政策・方針動向による事業インパクトと併せて継続的な検証が必要です。
なお、当社では一般炭のみを産出する権益の積み増しは行っておりません。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

移行シナリオにおける影響額および前提条件
2°C相当/APS等 1.5°C/NZE等
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
原料炭事業の移行シナリオ分析では、IEA World Energy Outlook (APSシナリオ/NZEシナリオ) 他の見通しおよび、需要家のカーボンニュートラルに向けた動向を参考に、製鉄原料の需給・商品価格を分析しています。また本事業に伴うGHG排出量に対するカーボンコストも考慮しています。
なお、本分析に当たっては既存事業への影響を見極めることを主たる目的としていることから既存事業を採掘終了まで継続保有する前提としています。

2024年3月期第4四半期決算 プレゼンテーション資料(P.35 金属資源:主な事業一覧)(PDF 3.85MB)

火力発電事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業環境認識に基づく事業への影響 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
化石燃料由来の発電量は先進国を中心に長期的に緩やかに減少します。一方、電力需要が今後も成長し、かつ再生可能エネルギーのみで供給対応が困難な一部新興国では中期的に新設需要が継続する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
化石燃料由来の発電量は先進国を中心に、中長期的に現行シナリオより速い速度で減少する見通しです。先進国では再生可能エネルギーへの転換が進むものの、新興国では2050年時点でも一定の石炭火力発電需要を見込みます。また、先進国・途上国共に、トランジションエネルギーとしてのガス火力発電の需要は中長期的に継続する見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
脱炭素化の潮流の急速な進展を背景に電力需要が中長期的に大幅に増加し、2050年には現行シナリオ対比で50%増の電力需要を見込みます。2°C相当/APS等シナリオと比較し、化石燃料由来の発電量は速い速度で減少し、2050年時点ではCCUS等の脱炭素設備付きの発電所が主流となる一方で、再生エネルギー比率がさらに高まり、電力需要の大部分を再生エネルギー、主に風力と太陽光で賄う見通しです。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

脱炭素化の世界的な潮流も踏まえ、時代の変遷に応じた発電ポートフォリオの変革と良質化に取り組みます。具体的には、中長期的に当社持分発電容量における石炭火力の比率を引き下げ、水力を含む再生可能エネルギー比率を2030年までに30%超へと引き上げ、2050年までのネットゼロ達成に必要な発電ポートフォリオ変革を継続する方針です。
また、既存火力資産においては責任ある発電事業者として効率化をはじめ、CCUSやアンモニア混焼等の取り組みも継続的に検討していきます。
新規のガス火力案件については、各シナリオに応じたトランジションエネルギーとしてのガス火力の必要性や、潜在的な将来のカーボンコストを勘案の上、各地域の電源構成・電力需要見通しも踏まえ検討対象とする方針です。
横ばい 悪影響 悪影響
当社発電事業ポートフォリオは、発電量ではなく、稼働可能な発電容量に対して対価が支払われる長期売電契約付が大半を占め、外部環境の変化が既存事業へ与えるインパクトは限定的です。
ただし、移行シナリオ下においては、脱炭素化の世界的な潮流が急速に加速し、一部資産では売電契約終了後の事業性に影響を及ぼす可能性があり、座礁資産化リスクの継続的な検証・モニタリングが必要です。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

移行シナリオにおける影響額および前提条件
2°C相当/APS等 1.5°C/NZE等
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
2030年3月期
2040年3月期
2050年3月期
移行リスクシナリオ分析に当たっては、長期売電契約(PPA)期間中は、カーボンコストは原則PPA規定に基づき売電先(オフテイカー)への売電価格に転嫁されると見なして影響額を算出し、PPA終了後にカーボンコストの反映により赤字が継続する資産は保有方針を見直す前提としています。また、火力発電資産のリサイクル戦略に基づく一部資産の売却も分析に織り込んでいます。

発電事業一覧(ガス火力発電事業、石炭火力発電事業、石油火力発電事業) 2024年3月末現在 (PDF 454KB)

鉄鉱石事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
世界最大の生産国である中国での粗鋼生産量は今後減少を見込む一方で、インド・東南アジアにおける生産量増加がそれを補い、中長期的に世界粗鋼生産は堅調に推移する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
電炉比率の上昇や高品位鉱を主に使用する直接還元鉄の生産量の増大を受けて、高品位鉱の需要増大とそれに伴う高品位鉱、低品位鉱に対するプレミアム、ディスカウントの拡大を見込みます。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
低炭素化要求のさらなる高まりを受けて、鉄スクラップや直接還元鉄のさらなる活用拡大のみならず、より効率的な鋼材使用の進展等に伴い粗鋼生産量自体も減少、移行シナリオ(2°C相当/APS等)に比して鉄鉱石需要の減少が見込まれます。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

鉄鋼業の低・脱炭素化手段である電炉法の普及率や新製鉄技術の変化スピード等を注視しつつ、当面は当社資産の競争力強化に努めながら、需要家への安定供給を果たしていきます。また、外部環境の変化を注視しつつ、事業パートナーと共に脱炭素社会を見据えた取り組みを強化していきます。
横ばい 横ばい 悪影響
粗鋼生産量は2020年代半ばの中国ピークアウトの影響を受けるも、インド、東南アジアが中国の減少を補うと見込んでいます。現行・移行(2°C相当/APS等)いずれのシナリオ下でも中長期的に粗鋼生産および鉄鉱石の需要は底堅い見通しですが、移行シナリオ(1.5°C/NZE等)下では他シナリオに比して鉄鉱石需要の減少が見込まれます。移行シナリオ(2°C相当/APS等)では高品位・低品位鉱に対するプレミアム・ディスカウントの拡大を織り込んでいますが、全体収益の中での影響は限定的です。移行シナリオ(1.5°C/NZE等)でも同様の傾向を見込みますが、需要減少に伴い鉄鉱石価格および収益性への下方圧力が想定されます。
各国の政策・方針動向による事業インパクトは継続的な検証が必要です。

2024年3月期第4四半期決算 プレゼンテーション資料(P.35 金属資源:主な事業一覧)(PDF 3.85MB)

海洋油・ガス田生産設備事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
石油需要の成長鈍化に伴い、新規生産設備の需要は中長期的に低減しますが、その時間軸には地域差があります。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
先進国の電化促進等により、現行シナリオよりも早期に石油需要が低減し、2050年にかけて半減、これに伴い新規生産設備の需要は現行シナリオより速く低減する見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
石油需要は2030年以降急激に減少し、2050年にかけて現在の4分の1程度まで減少する見通しです。需要の急激な減少に伴い、原油価格は現行シナリオと比較し2030年には2分の1程度、2050年には4分の1程度まで下落する見通しです。これに伴い新規生産設備の需要は移行シナリオ(2°C相当/APS等)以上に低減する見通しです。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

中長期的に需要が減少するシナリオを考慮し、既存事業で培った知見を活かせる分野(浮体式洋上風力等)への業態変革に取り組みます。
横ばい 横ばい 横ばい
当社の浮体式海洋原油・ガス生産貯蔵積出設備や掘削船等の海洋油・ガス田開発・生産設備に関する事業は2030年以降も継続する案件の多くが長期契約に基づく顧客先における長期使用がコミットされており現行シナリオ・移行シナリオによる既存事業への影響は限定的となることを見込んでいます。ただし、移行シナリオ(1.5°C/NZE等)においては、2030年以降の大幅な石油需要減と原油価格下落がエネルギー企業の生産活動の継続性に影響を及ぼす可能性があり、事業へのインパクトの継続的な検証・モニタリングが必要です。
ガス配給事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
天然ガス需要は新興国のガス需要増加に伴い、堅調に増加する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
天然ガス需要は、今後5-10年間は石炭火力代替として底堅いも、2050年に向けては再生可能エネルギーの普及により発電セクターを中心に3分の2程度に減少する見通しです。なお、新興国においては引き続きガス需要を見込むものの現行シナリオに比し成長は鈍化する見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
全世界の天然ガス需要は2025年以降緩やかに減少傾向となり、2030年以降2050年に向けて半減する見通しです。また、石油需要は2030年以降急激に減少し、2050年にかけて現在の4分の1程度まで減少する見通しです。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等):

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

GHG排出量削減やバイオガス活用等の取り組みも含め、資産価値向上に継続的に取り組みます。新規案件については、潜在的な将来のカーボンコストを考慮し取り組んでいます。
横ばい 横ばい 悪影響
当社ガス配給事業は、新興国に位置し、長期契約に基づく公共および規制事業として対象域内での独占的ガス配給権が確保されています。新興国のガス需要が中長期的に見込まれる現行シナリオ・移行シナリオ(2°C相当/APS等)においては、既存事業への影響は限定的となることを見込んでいます。移行シナリオ(1.5°C/NZE等)においては、石油生産減退に伴う随伴ガス減少と発電セクターの再生エネルギー比率が急速に高まることにより新興国においてもガス需要が減少することが想定され、ガス配給量の減少により事業収入へ影響を及ぼす可能性があります。
LNG船事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
天然ガス需要はアジアの新興国の電力・産業セクター向けに長期的に堅調に拡大することから、船舶での運航需要は増加する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
中長期的には石炭火力代替として天然ガス需要が継続することが見込まれ、2050年に向けては船舶での運航需要は増加する見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
天然ガス需要は世界的な脱炭素化の影響で2020年中盤以降減少傾向となり、2050年には船舶での運航需要の減少が見込まれます。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

中長期的な需給・価格動向を考慮し、次世代燃料船、新燃料輸送船等の新規事業の成長機会の取り込み、見極めを行い、LNG船ポートフォリオにおける収益性の維持・向上と安定操業・効率化に努めます。
横ばい 横ばい 悪影響
LNG船事業は、近年の案件のほとんどが長期契約に基づき収益が確保されており、どのシナリオでも当面は当社収益への影響は限定的となることを見込んでいます。天然ガスは脱炭素への重要なトランジションエネルギーとして、アジアを中心に中期的には堅調な需要を見込むものの、移行シナリオ(1.5°C/NZE等)では2050年に向けて需要の減少が見込まれる中で、長期傭船終了後の資産価値が毀損するリスクがあり、事業へのインパクトを注視する必要があります。
再生可能エネルギー事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
脱炭素潮流やエネルギー安全保障への対応を踏まえ、需要は中長期的に大幅に増加する見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
現行シナリオよりも速い速度で需要が大幅増加する見通しです。特に米国、豪州等の先進国における電化等が需要の増加を後押しし、2050年には電力需要の過半を再生エネルギーで賄う見通しです。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
グローバルな脱炭素化潮流の急速な進展が電化の普及を後押しし、電力需要が中長期的に大幅に増加、2050年には現行シナリオ対比で50%増の電力需要を見込みます。移行シナリオ(2°C相当/APS等)以上に再生エネルギー比率がさらに高まり、2050年には電力需要の大部分を再生エネルギー、主に風力と太陽光で賄う見通しです。再生可能エネルギーの普及に継続的な大規模投資が必要となるとともに、各地域の電力システムの安定性担保のため、送電網の強化や蓄電池・デマンドレスポンス等の需要拡大も見込まれます。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

脱炭素化の世界的な潮流も踏まえ、時代の変遷に応じた発電資産ポートフォリオの変革と良質化に取り組みます。具体的には、中長期的に当社持分発電容量における再生可能エネルギー比率を2030年までに30%超へと引き上げるべく、太陽光・陸上風力・洋上風力等の規模感ある大型再生可能エネルギー事業、および地域の需要にこたえる地産地消型の分散型再生可能エネルギー事業に取り組みます。
また、事業者間の競争激化の可能性を見据え、再生可能エネルギーを活用したグリーン水素・アンモニア・メタノール製造販売や、クリーン電力販売、EVインフラ、洋上風力向けインフラ等の周辺領域に当社総合力を発揮し取り組むことで、再生可能エネルギー事業をコアとした事業群を形成し、付加価値の取り込みを狙います。
好影響 好影響 好影響
再生可能エネルギー産業は、今後大きな需要の成長が見込めるものの、事業者数拡大に伴い競争が激化する可能性があります。一方、一部地域では急速な再生可能エネルギー比率増加に伴う系統不安定化に対応するために、需給バランス調整ニーズの拡大も見込まれます。また、デジタル技術を活用したエネルギーソリューション事業の拡大も見込まれます。
EV市場も各国の政策支援のもと拡大が想定され、クリーン電力の需要拡大が見込まれます。

発電事業一覧(再生可能エネルギー事業) 2024年3月末現在 (PDF 454KB)

次世代エネルギー事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
バイオ燃料をはじめとする次世代エネルギーの需要は主に化石液体燃料を代替する形で中長期にわたり強い成長を続ける見通しです。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
バイオ燃料の需要は中期的に急激に成長し、長期的には伸びは鈍化しますが、航空・船舶輸送用途向けの需要が拡大していく見込みです。また、中長期的に天然ガスを代替する形で、水素・燃料アンモニアの成長が見込まれます。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
バイオ燃料の需要は中期的には移行シナリオ(2°C相当/APS等)を上回る成長を見せますが、その後は成長が頭打ちとなります。ただし、航空・船舶輸送用途向けの需要は中長期に渡り順調に拡大していく見込みです。また、移行シナリオ(1.5°C/NZE等)においては、2050年に向け移行シナリオ(2°C相当/APS等)を大幅に上回る勢いで水素・燃料アンモニアの急激な成長が見込まれます。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

中期的な需要の中心になると見込まれるバイオ燃料事業においては、環境への影響を見極めた上で、既存投資先の技術・ノウハウを活用した事業の拡大に取り組みます。また、脱炭素化社会の現実的解として、長期的には大きな需要が見込める水素・燃料アンモニア、地熱発電事業等の取り組みを進めています。次世代の代替エネルギー源として期待されている分野の本格的な普及のためには、さらなる技術革新が必要なことから、社内専門チームを組成し取り組みを加速しています。
好影響 好影響 好影響
次世代エネルギーへの需要拡大への期待は大きく、有望な次世代エネルギー技術も開発が進んでいます。各国政府による制度整備等もあり、新技術開発への投資のさらなる加速と脱炭素エネルギーの製造コスト低減が見込まれ、一層の需要拡大を促すことから、事業機会の増加を見込みます。
森林資源事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

各シナリオ下における事業環境認識 事業へのインパクト 対応策
現行シナリオ(STEPS等)
世界的な人口増、特にアジアを中心とする新興国における住宅・紙の市場拡大に伴い、原料となる森林資源(木材・ウッドチップ等)の需要が堅調に増加する見通しです。さらに、各国の天然林保護政策・伐採規制強化により、植林材を主とする森林資源の価値が向上することが見込まれます。

移行シナリオ(2°C相当/APS等)
住宅資材や紙の原料となるウッドチップ等の森林資源需要は、現行シナリオ同様堅調に増加する見通しです。さらに、森林資源の持つCO2吸収機能や再生可能な自然素材としての特徴への注目度が高まり、森林由来の排出権市場の拡大と排出権価格の上昇、バイオケミカル等木材由来の高付加価値品市場の拡大も見込まれます。

移行シナリオ(1.5°C/NZE等)
移行シナリオ(2°C相当/APS等)と比較し、CO2排出削減強化に伴い、カーボン価格も先進国で移行シナリオ(2°C相当/APS等)対比約1.5倍上昇することが見込まれており、森林由来の排出権市場の拡大と排出権価格の上昇、バイオケミカル等木材由来の高付加価値品市場の拡大が見込まれます。

現行シナリオ
(STEPS等)

移行シナリオ
(2°C相当/APS等)

移行シナリオ
(1.5°C/NZE等)

環境価値の創造、社会課題の産業的解決に向けた基盤となるべく、収益力、リスクを踏まえた資産の積み上げを行い、森林資源事業を拡大していきます。紙・住宅用途、排出権創出に留まらず、木質素材の新たなニーズ開発にも取り組むことで、森林資源の価値最大化を目指します。
好影響 好影響 好影響
木材を中心とした気候変動対応に資する再生可能な自然素材としての森林資源は現行シナリオ下において、需要拡大が見込まれます。また、移行シナリオ下においては排出権取引の需要の高まり・排出権価格上昇や、森林資源由来のバイオケミカルの有効活用等が見込まれており、収益性を向上させる効果も期待されます。

物理的リスク分析

当社は、幅広い事業をさまざまな国・地域で展開しており、気候変動に伴い異常気象が増加した場合には、物理的リスクの顕在化による影響を受ける可能性があります。そのため、新規事業投資時には、必要に応じ外部専門家のアドバイスも得ながら物理的リスク分析を実施し、適切なリスク管理を行っています。また、出資参画後も各事業の現場において、都度、対策の実効性の見直しを行っています。

物理的リスクが顕在化した場合には、人命尊重を最優先事項とした上で、地域社会との共生にも留意した事業継続のための災害時事業継続管理方針を定めています。また、保険付保や複数サプライヤーの確保、設備増強等、リスクを回避するための適応・緩和策を実施しています。今般、現状のリスク対応の妥当性を検証するために、環境コンサルのERM社が独自に開発した分析ツールを活用し、当社投資先の将来における物理的リスクの影響を以下の通り分析しました。

STEP1

物理的リスクの影響が高い投資先の選定

  • 当社投資先のうち物理的リスクの直接的な影響を受ける投資性資産額の大きい上位100社および、2022年3月期の当期利益が50億円以上の会社を選出
  • 選出した企業から事業内容や保有資産の地理的な分散度合等を総合的に勘案し、物理的リスクの定量的インパクトが低い投資先を除外
  • 最終的に物理的リスクの影響が高い投資先65社を選定

STEP2

外部コンサルの分析ツールを用いた将来のリスク分析

  • 選定した65社が保有する主要資産のロケーションをマッピング
  • ERM社の物理的リスク分析ツールを用いて以下のケースにおける物理的リスクインパクトの増減を分析
    -2030年および2050年断面
    -2℃シナリオおよび4℃シナリオ
  • 分析対象の物理的リスク
    -洪水(内水氾濫、外水氾濫、高潮浸水)、厳寒、猛暑、熱帯低気圧、地滑り、山火事、水ストレス(渇水)・干ばつ

STEP3

分析結果をもとに対応策の見直しと適切な対応

  • 物理的リスク分析結果を踏まえ、あらためて対応策の見直し
    -現場で都度それぞれのリスクに応じた対策の導入
    -BCPの策定と年次見直し
    -保険の付保等
  • それぞれの物理的リスクに対して、事業ごとに適切な対応をし当社事業への影響を最小化
  • 慢性的な物理的リスクに関しては定期的にモニタリングを行い、状況に応じた対策を実施

分析結果

物理的リスクの影響が高い投資先の主要資産所在地および2030年時点・4°Cシナリオ下の物理的リスクは以下の通りです。

分析結果

4°Cシナリオ下における主な物理的リスクおよび対応策

現在から2050年までの4°Cシナリオ下において、リスク度を物理的リスクの高い企業数で分析した結果、特に猛暑、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧の四つが当社への影響が大きいリスクとの結果になりました。分析対象企業65社のうち、2050年にリスクが高い企業数は、猛暑に関しては約8割、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧に関しては、半数近くになります。中でも、山火事のリスクが高い企業は現在から約2倍に増加します。また、熱帯低気圧は、現在もリスクが高い企業が多く、新たにリスクが高まる企業は少ないものの、その発生頻度や巨大化により、被害の深刻化が懸念されます。
今般の分析結果も含め、今後も各社で物理的リスクを認識し、適切な対策を実施していきます。

  • 4社以下
  • 5~14社
  • 15~24社
  • 25~34社
  • 35社以上

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

  リスク度 リスク概要 対応策
  現在 2030 2050    
猛暑
  • 年間の猛暑期間が長期化するリスクが高まる。
  • 暑さによる従業員の健康や安全への悪影響、労働生産性の低下、設備へのダメージによるオペレーションコストの増加等のリスクが高まる。
  • 早朝に作業する等、猛暑期間中の働き方の見直しの実施。
  • より効率的な冷却システムを導入。
  • 定期的な設備点検。
山火事
  • 山火事による物流網の断絶による契約不履行リスクや施設そのものへの損害、レピュテーション等のリスクが高まる。
  • 緊急時の対応計画の策定。
  • 代替輸送ルートの検討および確保。
  • 処理水パイプの埋設、難燃性塗料の使用等、施設の保護対策の導入。
水ストレス・干ばつ
  • 一部地域で水ストレスが高まり、水の利用が制限されるリスクあり。
  • 水の利用が制限された場合には、生産性の低下や代替の水の確保から水調達費用が高くなるリスクがある。
  • 水管理戦略の策定。
  • 集水・貯水施設の設置。
  • 水調達の代替輸送ルートの検討・確保。
熱帯低気圧
  • 現時点で熱帯低気圧の発生頻度が高い地域では、熱帯低気圧の巨大化や発生頻度がさらに高まる。
  • 暴風によるインフラ設備への損害発生や、危険な労働環境のために生産がストップすることで収益が減少するリスクがある。
  • 強風への耐久性の設備体制の調査。
  • バックアップ電源の確保。
  • 外れやすい設備を緊急避難させる場所の確保。
  • 強風による損傷から窓を保護するため窓の上に合板の固定。
洪水
  • 豪雨や海面上昇により、沿岸、川沿いで洪水が生じた場合に、その浸水の深さが大きくなり、被害が拡大するリスクが高まる。具体的には、施設そのものへの損害による収益損害、供給ルートや原材料調達ルートが断絶されることで生産遅延や供給遅延等による契約不履行リスク、それに伴うレピュテーションリスク。
  • 洪水迂回バリア等、製造拠点を洪水から守るための対策の設置。
  • 代替輸送手段の確保。
  • 現場職員に対する訓練および洪水に特化した避難計画の策定。
  • 気象予報のモニタリング体制と、洪水に対する早期警報システムの確立。

リスク管理


当社では、全社リスクを横断的に見て、重要なリスクを特定するとともに、リスクを回避するための諸施策やコントロールするためのさまざまな取り組みを行っています。その体制として、経営会議およびその諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社一元的にリスクを管理する統合リスク管理体制を構築しています。統合リスク管理体制においては、事務局を務めるコーポレートスタッフ部門担当部署が全社的観点でリスクを統括します。当社が想定する重要なリスクには気候変動によるリスク、コンプライアンスに関するリスク、感染症・自然災害・テロ等に係るリスク等、環境・社会・ガバナンスに関連するものも含まれますが、特に、気候変動によるリスク(物理的・移行)は、事業投資リスクや地政学的リスク、カントリーリスクに次ぐ重要度と位置付け、対応策を講じています。

当社のリスク管理体制の詳細は、以下ページをご参照ください。


リスクマネジメント

なお、世界各国・地域で事業を展開する当社にとって、気候変動に関わる各国・地域の政策は各事業の収益性、持続可能性に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社では、IEA等の複数の気候変動シナリオを活用し影響が大きい事業のシナリオ分析を実施し、リスクと機会の両側面での影響を把握し、事業の優先度を決定のうえ、投融資案件やM&A等の意思決定に活かしています。
また、当社が事業に取り組むに当たっては、新規に開始する段階に加え、操業時、および撤退時においても環境・社会に対する最大限の配慮に努める仕組みを整えています。気候関連リスクを含む環境・社会リスクについては、その対応方針や施策を、サステナビリティ委員会で討議し、経営会議および取締役会に報告・承認取り付けの上、実行しています。

指標と目標


GHG削減目標

  1. 単体+連結子会社(含むUn-inco JV*)のScope1+2および Scope3カテゴリー15(投資):
    2050年の「あり姿」としてのネットゼロエミッションを掲げ、その道筋として2030年に2020年3月期比GHGインパクト半減を目指す。
  2. 単体+連結子会社のScope1+2:
    2030年のGHG排出量を2020年3月期比半減する。
  3. 発電事業における再生可能エネルギー比率:
    2030年までに30%超に引き上げる。

*:Un-incorporated Joint Venture(共同支配事業)

実績

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(単位:百万トン-CO2e)

目標
(指標)
対象範囲 2020年3月期
(基準年)
2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
1. GHGインパクト半減
(GHGインパクト)
Scope1/Scope2/Scope3カテゴリー15(投資) 34 37 38 34
内訳 GHG排出量: 36 39 40 37
削減貢献量・吸収量: 2 2 2 3
2. GHG排出量半減
(GHG排出量)
単体・連結子会社(除くUn-inco JV*)Scope1/Scope2 0.8 0.6 0.6 0.6
3. 再生可能エネルギー比率の引き上げ 当社持分発電容量
再エネ比率
14% 15% 15% 23%

*:Un-incorporated Joint Venture(共同支配事業)

GHG排出量目標・見通し対象範囲別内訳

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(単位:百万トン-CO2e)

目標 対象範囲 2020年3月期
(基準年)
2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2026年3月期 2030年3月期 2050年
あり姿
実績 見通し*1
(下線数値は中間目標)
2030年
GHG半減
① 単体・連結子会社のScope1+2 0.8 0.6 0.6 0.6 0.6 0.4 ネットゼロ
基準年対比 100% 75% 78% 76% 81% 50% 0%
2030年GHG
インパクト半減
② Uninco-JV Scope1+2およびScope3カテ15 35 39 40 36 33 31  
基準年排出量*2 43           ネットゼロ
基準年対比*3 - 92% 95% 86% 78% 72% 0%
①+② 36 39 41 37 33 31 ネットゼロ
③ 削減貢献量、吸収・固定量 ▲2 ▲2 ▲2 ▲3 ▲6 ▲14  
①+②+③ 34 37 39 34 27 17  
基準年対比 100% 109% 113% 100% 79% 50%  

*1: 中期経営計画2026の投資計画、2023年10月決算公表に基づく見通し(2030年GHGインパクト半減、単体連子Scope1+2半減の目標を除く)
*2: 基準年排出量には、20/3期時点でFID済の火力発電事業でフル稼働後に見込まれる排出増加分を含む
*3: 基準年排出量43百万トン-CO2e対比

GHG削減目標

なお、GHGインパクトは、自社の排出量から吸収除去・オフセット量と、事業を通じて実現した削減貢献量を差し引いたものを指します。当社は、自社の排出量削減のみならず、事業活動を通じて社会全体の脱炭素化への移行に貢献することを重視しています。こうした削減貢献量も含め目標として設定することで、全社的にその取り組みを加速していきます。
2050年のネットゼロエミッションは、当社排出量から吸収除去・オフセット量のみを差し引いて実質ゼロにすることを指します。削減貢献量は、2050年の目標数値には含めていませんが、引き続き事業を通じた社会全体の削減貢献に積極的に取り組んでいきます。

また、総合商社ならではの産業横断的な事業形態を活かして、多様な形で排出削減(Reduction)と削減貢献(Opportunity & Transition)を推進します。

GHG削減目標

GHGインパクト半減に向けたロードマップ

2020年3月期のGHGインパクト34百万トンを、2030年3月期には17百万トンまで半減することを目指します。現中期経営計画最終年度の2026年3月期には、GHGインパクトは約27百万トンと見込んでいます。2024年3月期から2026年3月期の期間は2020年3月期時点でFID(最終投資決断)済みの火力発電事業のフル稼働後に見込まれる排出増加等により約3百万トンの排出量増加と、火力発電事業等の資産売却による7百万トンの排出量削減を見込みます。

さらなる排出削減と削減貢献事業を実現することにより、「2030年のGHGインパクトの半減」の達成を目指します。

GHGインパクト半減に向けたロードマップ

※本数値は2023年11月末時点での想定で、変動の可能性があります
※本グラフにおける削減貢献量には、吸収除去・オフセット量に該当する数値を含みます
※Net-zero emissionsには、削減貢献量は含みません

削減貢献量・吸収量

削減貢献量とは、当社が事業を通じて提供する製品・サービスが、既存製品・サービス等(ベースライン)との比較で第三者のGHG排出量(Scope1およびScope2)の削減・抑制に資する場合、ライフサイクルアセスメントの観点からその削減・抑制されるGHG排出量を定量化したものです。なお、削減貢献量の算出にあたりWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)や日本LCA学会等のガイドラインを参照していますが、現時点で統一的な算定ルールは存在していないことから、国際的な議論や業界動向を踏まえ、今後も算定方法や開示の見直しを適宜実施する方針です。2023年3月期の実績は合計2,702千トン(吸収量含む)となり、内訳および算出式は以下の通りです。
なお、削減貢献量算出においては、可能な限り実績値や公知情報を用いていますが、入手困難な場合には最も合理的と思われる前提やシナリオを自社で設定し算出しています。

削減貢献量

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

評価対象 2023年3月期 ベースライン 算出式
再生可能エネルギー 2,163千トン 各国平均のエネルギーミックス
  • 年間発電実績(MWh)× 排出係数(tCO2e/MWh) ×当社出資比率(%)
  • 排出の大部分を占める運用段階の削減貢献量のみを算定。排出係数は GHG Protocol、International Energy Agency (IEA) Emissions Factors等を参照。
  • 当社が出資し開発した後に、第三者へ売却済の運転中資産も当社による削減貢献と見做し実績値に含む。2023年3月期実績の内116千トン。
排出権 284千トン プロジェクト実施前 年間排出権創出量*(tCO2e)×当社出資比率(%)

*:年間排出権創出量には第三者へ売却した排出権を含む。なお、当社のGHG排出量のオフセットに使用した排出権は含まない。
*:森林事業を通じて創出した排出権(認証取得見込みも含む)を含む。

次世代燃料 10千トン プロジェクト実施前
  • {(当社次世代燃料供給により消費が削減された化石燃料等のライフサイクルでのGHG排出量(tCO2e)) — (当社次世代燃料事業のライフサイクルでのGHG排出量 (tCO2e))}×当社出資比率(%)
  • ライフサイクルでの比較と大差がなく、かつ合理的な計算根拠の入手が困難な場合は、簡便的に燃料消費段階のみの削減貢献量を算定。
吸収量

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

評価対象 2023年3月期 ベースライン 算出式
森林 245千トン プロジェクト実施前
  • 年間CO2吸収量(tCO2)×当社出資比率(%)
    森林事業にて吸収したCO2を算定。森林事業を通じて創出した排出権は削減貢献量の排出権として算定。

GHG排出量(Scope 3)実績

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(単位:百万トン-CO2e)

カテゴリー 2023年3月期
1 購入した製品・サービス 35.3
セグメント別内訳 金属資源 0.2
エネルギー 3.1
機械・インフラ 2.5
化学品 12.5
鉄鋼製品 7.8
生活産業 9.2
2 資本財 0.8
3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 1.5
4 輸送、配送(上流) 3.2
5 事業から出る廃棄物 0
6 出張 0.1
7 雇用者の通勤 0
8 リース資産(上流) 対象外
9 輸送、配送(下流) カテゴリー4に含む
10 販売した製品の加工 32.2
セグメント別内訳 金属資源 32.2
11 販売した製品の使用 83.5
セグメント別内訳 金属資源 20.1
エネルギー 37.0
機械・インフラ 26.0
化学品 0.4
12 販売した製品の廃棄 0.2
13 リース資産(下流) 1.2
14 フランチャイズ 対象外
15 投資 33.6
合計 191.5
  • 単体および連結子会社(含む・Un-incorporated JV)を対象に支配力基準にて算定(Scope 1、Scope 2と同様)
  • 集計範囲に含まれる会社間で、同一の排出源に対しダブルカウントが明らかな場合には片方に寄せて算定
  • 販売した中間製品がどの最終製品に加工されているか把握できない場合は、算定対象から除外
  • Scope3排出量全体(カテゴリー15除く)の約60%は第三者商品の売買取引(トレーディング)に由来し、自社にて生産・製造・加工する商品などに帰属する排出量は約40%
  • 第三者商品の売買取引(トレーディング)は、第三者が生産・製造・加工した商品を、当社が購入し、加工業者、最終消費者等に販売する取引を対象としており、加工業者や最終消費者が確認できない、所謂トレーダーとの取引は含まない
  • カテゴリー1および11のエネルギー関連の排出量は国際石油産業環境保全連盟(IPIECA)のガイドラインに沿って算定
  • カテゴリー10の鉄鋼原料である鉄鉱石および原料炭については、粗鋼生産時の排出量を重量比率で按分し算定
  • カテゴリー1、10、11のセグメント内訳は該当するセグメントのみ記載

バリューチェーン上のGHG削減取り組み

Scope3はバリューチェーンにおける他社の排出量であり、その対応にあたってはバリューチェーン全体での取り組みが必要になります。当社は、各産業において、バリューチェーンの上流から下流まで幅広く事業を推進しており、パートナーや顧客と共に、社会の排出量削減に資する取り組みを進めています。

GHG削減取り組み例

  • セグメント :
  • 金属資源
  • エネルギー
  • 機械・インフラ
  • 化学品
  • 鉄鋼製品
  • 生活産業
  • 次世代・機能推進
製鉄バリューチェーン

原料採掘・調達

  •  
  •  
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  •  
  •  
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  •  

低炭素型鉱山機械の導入・販売

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鉱山操業への再エネ導入

輸送

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船舶用次世代燃料*供給

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次世代機器導入による船舶燃費向上

—We Tech Solutions、The Switch Engineering、パワーエックス

製鉄

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鉄鋼原料の塊成化プロセスの低炭素化

—Binding Solutions

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直接還元鉄製造

—神戸製鋼所との共同事業

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電炉での鋼材製造・スクラップ供給

—Siam Yamato Steel、Sims、エムエム建材

*:メタノール・アンモニア等

ガスバリューチェーン

天然ガス生産・液化事業

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CCS導入の検討・推進

—Cameron LNG/Hackberry CCS

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低炭素エネルギーの供給

—クリーンアンモニア、RNG:Terreva

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液化プラント等の省エネ化・再エネ調達の検討・推進

—Cameron LNG

輸送・貯蔵

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船舶燃費の最適化

—Bearing.ai

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アンモニアFSRU(*1)

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パイプラインの高度補修技術によるGHG流出防止

—STATS

販売・使用・回収

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CCSaaS(*2)の提供

—Storegga/Acorn CCS、JALMIMI/Angel CCS事業化調査

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CO2船開発・導入促進

—マレーシアCO2地下貯留及び液化CO2船輸送検討

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高効率ガス火力発電所の運営

*1:浮体式貯蔵再ガス化設備

*2:二酸化炭素の回収・貯留をサービスとして顧客に提供する事業 (Carbon Capture and Storage as a Service)

自動車バリューチェーン

製造・組立・販売

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ZEV*生産・販売事業

—CaetanoBus、Letenda

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EV向け部品製造・販売

—Gestamp

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電動モビリティ向け電池システム製造事業

—Forsee Power

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高圧水素タンク製造・販売

—Hexagon Purus

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電池原材料の安定供給

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EVモーター用素材加工事業

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ZEV*需要創出・ソリューション提供

—エドモントン空港ZEV化

使用・利用

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水素ステーション事業

—FirstElement Fuel

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EV充電システムの開発・提供

—The Mobility House

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次世代エタノール生成事業

—LanzaTech、Galp/HVO

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バイオディーゼル燃料ソリューション機器製造販売

—Optimus

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燃料電池大型車向けグリーン水素供給事業

—Hiringa

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EV商用車のフリートマネジメント

—Penske Truck Leasing、MITTAほか

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グリーン水素製造事業

—Lhyfe、Norwegian Hydrogen

リサイクル

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金属(鉄・非鉄)リサイクル事業

—Sims、エムエム建材

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リチウムイオン電池リサイクル事業

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タイヤのリサイクル事業

—Penske Truck Leasingほか

*:走行時に二酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV) 等

社内カーボンプライシング制度

GHGを多く排出する事業の中長期的なレジリエンスの向上、また当社および社会のGHG排出削減に貢献する事業の促進を目的に、2020年4月から社内カーボンプライシング制度を導入しています。新規投資案件については、GHG規制等がリスクあるいは機会となり得る案件につき、2°Cおよび1.5°Cシナリオに進んだ場合に生じる影響の分析、ならびにリスクとなる場合には対策等の妥当性が、投資判断の一要素として追加されました。また、既存事業のリスク評価も社内カーボンプライシング制度を使って実施しています。なお、価格設定についてはIEA等の外部機関が公表している定義や価格を参考に、対象資産の国・地域、時間軸等を考慮した価格設定を行っており、2050年までの期間に亘り、2°Cシナリオ相当では先進国は概ね$1~$200/トン、その他地域は概ね$0~$160/トン、1.5°Cシナリオでは先進国は概ね$1~$250/トン、その他地域は概ね$0~$200/トンの価格を適用しています。

グリーン案件評価連絡会

脱炭素化社会への動きが加速する中、当社事業のGHG排出量の削減に取り組むと同時に、社会のGHG 削減に資する事業を推進し、社会課題の解決に貢献しながら、当社としても持続可能な成長を実現することを目指しています。再生可能エネルギー等の気候変動対応を機会とする新規案件の審査において、ESG視点から、取り組みの戦略的意義等の定性面を含め総合的に評価するグリーン案件評価連絡会を設置し、2021年4月1日より運用を開始しています。

その他環境指標・目標

GHG削減目標のほか、以下の環境指標・目標を設定し、モニタリングを継続して行っています。

  • エネルギー使用量:
    • 単体のうち本店、国内支社・支店等におけるエネルギー使用量の省エネ化に取り組むとともに、2031年3月期までに使用エネルギーの非化石比率を100%にする。
  • 水資源:
    • 単体のうち本店、国内支社・支店等における水使用量を前期使用量以下に削減し、水の利用効率を改善する。
  • 汚染防止:
    • 単体のうち本店、関西支社における廃棄物のリサイクル率を2030年3月期までに90%以上にする。
    • 単体のうち本店、国内支社・支店における紙資源使用量を2030年3月期までに原単位で2020年3月期対比50%以下にする。

各種パフォーマンスデータに関しては以下をご参照ください。


環境パフォーマンスデータ

ステークホルダーとの協働


イニシアティブへの参画

当社は、責任あるグローバル企業として国際的なフレームワークに基づいた取り組みや日本の業界団体を通じた幅広いパートナーシップを通じて、パリ協定の遵守や日本の中長期的なGHG削減貢献に寄与し、ステークホルダーに対し適切に情報開示すべく、イニシアティブへの参画を通じた気候変動への取り組みを推進・拡大させています。各イニシアティブへの参画においては当社の気候変動に対する基本方針・取り組みと合致しているか確認の上、参画を決定しています。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

当社は2018年12月、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し、開示することを狙いとした提言 “Task Force on Climate-related Financial Disclosures”に賛同しました。

TCFDコンソーシアム

TCFDコンソーシアムは、TCFD 提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となって取り組みを推進し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断につなげるための取り組みについて議論する場として経済産業省・金融庁・環境省をオブザーバーとし、2019年に設立されました。当社は本コンソーシアムの会員企業として、TCFD提言に沿った適切な開示に引き続き取り組んでいきます。

CDP(Climate Change)

企業の気候変動リスクに関する情報公開プログラムCarbon Disclosure Projectに2011年から回答しています。2023年に実施されたCDPの質問書に対する回答の結果、「A-」の評価を受けました。

Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping

海運業界における排出量削減が世界的な課題となっている中、海運業界の脱炭素化を目指しゼロカーボン輸送に向けた応用研究を行う「Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping」に、2021年4月に戦略的パートナーとして参画しました。2022年5月より出向者を派遣し、舶用向け低炭素燃料使用における技術的、商業的課題の解決に向けた活動を他パートナー企業と共に行っています。

International Iron Metallics Association

International Iron Metallics AssociationはOre-Based Metallics(銑鉄、還元鉄等の鉄鉱石を原料とする鉄鋼原料)の業界団体であり、当社を含めた加盟メンバーの生産/取扱高は世界シェアの8割を超えます。 当社は従来よりこれら商品を含む冷鉄源商内を物流・投資の両面から推進しており、鉄鋼業の低炭素化に関連しこれら商材が注目を集める中、引き続き本領域での事業展開を通じ鉄鋼業の低炭素化に貢献していきます。

ASI(Aluminium Stewardship Initiative)

ASIは、持続可能な社会へのアルミニウムの貢献の最大化をビジョンに掲げ、2012年に発足、アルミニウム生産者や需要家、国際アルミニウム協会等、さまざまなステークホルダー約300社・団体が参加(2023年8月現在)しています。国際基準の策定および認証システム確立を通じ、アルミニウムサプライチェーンにおける、サステナビリティ向上とESGへの貢献に取り組んでいます。当社は2020年1月に参画し、メンバーの一員としてこうした取り組みをサポートしていきます。

The Copper Mark

The Copper Markは、責任ある銅生産とその製品の普及を目的に国際銅協会(International Copper Association)により2019年に設立された認証機関で、主に鉱山、製錬所等の銅生産拠点を対象に環境、社会、ガバナンス等からなる32項目で構成される基準を基に、責任ある銅生産の認証を行っています。参加を表明している51銅生産拠点のうち、現在までに同認証を受けているのは39拠点であり、認証鉱山での銅採掘量は全世界の25%以上を占め、また、当社を含む、本枠組みに賛同するパートナーとして28社が加盟しています(2023年3月時点)。当社は、The Copper Markの活動を通じて銅業界での責任ある銅生産とその製品の普及を推進し、銅事業の持続可能な発展に貢献していきます。

電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain; BASC)

一般社団法人電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain; BASC)は、脱炭素社会実現に向け、電池の原材料や部品に関わるサプライチェーンの国際競争力強化を推進する団体で、2021年4月に設立され、当社も設立時から会員として参加しています。他会員企業と共にリチウムの国際標準化、電池エコシステム構築に向けたルールメイキング等の課題に対応していきます。

日本経済団体連合会

当社は、日本経済団体連合会における、以下の委員会等に参画しています。

  • 企業行動・SDGs委員会:企業行動憲章の周知、「Society 5.0 for SDGs」の普及・推進、企業の社会貢献活動推進
  • 資源・エネルギー対策委員会:S+3E(Safety+Energy Security、Economic Efficiency、Environment)のバランスを確保したエネルギー政策の推進
  • 開発協力推進委員会:インフラシステムの海外展開の推進、各国政府・国際機関との連携
  • 環境委員会:気候変動対策、循環経済(サーキュラー・エコノミー)・生物多様性の主流化の推進、環境規制・制度等の改善

日本貿易会

当社は、日本貿易会の地球環境委員会のメンバーとして、気候変動分野の活動に積極的に関与しています。具体的には、商社業界全体のエネルギー使用量の把握、3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動の推進、事業活動を通じた新エネルギー対応の取りまとめ、気候変動対策長期ビジョンの策定等を行っています。また、商社の観点でのサステナビリティ・CSRに関する課題の検討や内外の動きについて調査・研究を行っているサステナビリティ推進委員会のメンバーとして活動しています。

GXリーグ

当社は、経済産業省主導のもと、2024年3月期に本格稼働を開始したGX(グリーントランスフォーメーション)リーグに参画しています。
GXリーグは日本および世界全体のカーボンニュートラルの達成に向け、脱炭素化に積極的に取り組む企業群が経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場であり、他の参画企業と共にGXリーグにおける各種取り組みに積極的に参加していきます。

一般社団法人 水素バリューチェーン推進協議会

水素バリューチェーン推進協議会は水素社会の構築・拡大を目指し、水素分野におけるグローバルな連携や水素サプライチェーンの形成を推進するため2020年12月に設立された団体です。同団体は2022年4月に一般社団法人化され、同団体の準備委員会設立時から参加している当社は、理事会員として、水素社会の実現に向けて他の会員企業と共に取り組んでいきます。

FSC®(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)

環境NGO、民間企業や先住民団体等による会員制の非営利組織FSC®(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)は、環境保全の点からみて適切で、人権尊重等、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を世界に広めるための国際的な非営利組織です。
当社は、全国75か所、約45,000ヘクタールの社有林「三井物産の森」で、森林管理を対象とするFM認証(FOREST MANAGEMENT )を取得し(FSC®-C057355)、切り出した木材の加工・流通を対象とするCOC認証(CHAIN OF CUSTODY)を子会社である三井物産フォレスト株式会社が取得しています(FSC®-C031328)。数量としては日本国内で民間企業ではトップクラスの国産FSC®認証材供給を行う当社は、国内におけるFSC®の普及・推進、日本版の原則基準の検討・作成にも協力しています。なお、当社では、植林事業においてもFSC®認証を取得し、責任ある森林資源管理を推進しています。

一般社団法人 カーボンリサイクルファンド

CO2を資源として捉え、カーボンリサイクルイノベーションを推進するというカーボンリサイクル政策が日本のエネルギー政策の重要な要素となってきています。一般社団法人カーボンリサイクルファンドは、カーボンリサイクルイノベーション創出による地球温暖化問題と世界のエネルギーアクセス改善の同時解決を目的として、2019年8月に設立され、当社は2020年1月から加盟しています。低炭素化に有用なCCUSに関する最新情報へのアクセスや会員各社とのネットワーキング強化を通じ、事業機会の追求および気候変動問題の解決への貢献を目指します。

一般社団法人 エネルギー総合工学研究所 ACC技術研究会

CCS技術は大量のCO2処理が可能であり、CO2削減のための有効な手法と考えられますが、昨今CCU技術においても大量のCO2処理が可能な技術、システムの構築が求められています。CO2の有効利用技術に関する調査、研究、情報発信を行い、その早期実現と社会実装に寄与することを目的として、2018年10月に発足したACC技術研究会に当社は2020年7月から加盟しています。

クリーン燃料アンモニア協会

アンモニアのエネルギー利用技術の社会実装に加え、CO2フリーアンモニアの供給から利用までのバリューチェーン構築を目指し、技術開発・評価、経済性評価、政策提言、国際連携等の産学官のプラットホームである一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会に、2019年4月から理事会員として参画しています。

取り組み


当社では、中期経営計画や環境方針に気候変動への対応を掲げ、経済の発展と気候変動への対応の両立を目指し、当社が関与するバリューチェーンの中でサプライヤーをはじめとする取引先と環境負荷への低減に向け対話し、取り組みを進めています。また、再生可能エネルギー事業、モーダルシフト推進事業のほかCO2の排出抑制に寄与する事業や、エネルギー消費の効率改善につながるさまざまな事業の拡大および技術の普及に取り組んでいます。

国内すべての事業所で使用するエネルギーの実質CO2フリー化(J-クレジット活用)

当社は、2050年の「あり姿」としてのネットゼロエミッションの具体的な施策の一つとして、本店および国内のすべての支社・支店と研修所を含む事業所における電力・燃料・熱の利用に伴うCO2排出量に関して、関連会社である甲南ユーテイリテイ株式会社や社有林「三井物産の森」から創出されるカーボンクレジット(J-クレジット)を適用してオフセットしています。

気候変動への適応に関する取り組み-中東における植物工場事業

  • ニュートリション・アグリカルチャー本部
イタリアZERO社植物工場イタリアZERO植物工場

当社は、2022年3月、中東における植物工場事業に参画しました。当社およびサウジアラビアの小売店Tamimi markets、イタリアの植物工場事業会社ZERO srlと共同事業会社を設立し、将来の大規模生産を見据えての植物工場の生産、および販売の実証事業を開始します。中東においては、生鮮作物の消費が増加する一方、厳しい気候環境により食料自給率の向上が課題です。
また、当社は、2023年3月、ZEROに出資参画しました。中東のみならず、全世界での植物工場事業の展開を推進していきます。
植物工場は、水の使用量をコントロールすることにより節水を実現(水90%前後減)し、また、一般的な露地栽培に比べてCO2の排出量を45%抑えられるほか、気象条件に左右されない安定供給体制の構築が可能です。さらに、生産地と消費地の近接により、輸送時の食品ロスおよび、食糧輸送時のCO2排出(フードマイレージ)の削減も見込まれています。
世界人口の増加により、一人当たりの耕作地面積は2050年までに、2005年比で25%減少するともいわれる中*、低環境負荷な農業生産へのニーズが拡大、フードチェーンの可視化等、農業生産においても、環境や社会的課題への配慮といった意識が高まっており、よりサステナブルな農業生産性向上が求められています。
当社は、植物工場事業を通じた生鮮野菜・果物の地産地消により当該食材の自給率向上・品質向上・食の安心安全の実現に寄与します。

*:国連「世界人口推計2019年版」、農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し(2019年)」

再生可能エネルギー

  • プロジェクト本部
  • エネルギーソリューション本部

発電事業として、持分発電容量における石炭火力の比率は段階的に引き下げ、水力を含む再生可能エネルギー比率を2030年までに30%に引き上げる方針です。2024年3月末現在、当社持分発電容量は10.5GWで、そのうち水力を含む再生可能エネルギー比率は29%を占めています。

発電事業一覧

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(2024年3月末現在)

燃料・種別 持分(MW)* 比率 目標
ガス 5,462 52% 70%未満
石炭 1,693 16%
石油 255 3%
再生可能エネルギー 3,045 29% 30%以上
内訳 太陽光 905    
水力 816
風力 1,302
太陽熱 15
バイオマス 5
地熱 2
合計 10,455 100% 100%

*建設中含む

詳細はリンク先をご参照ください。


発電事業一覧(再生可能エネルギー事業、ガス火力発電事業、石炭火力発電事業、石油火力発電事業)2024年3月末現在(PDF 454KB)

再生可能エネルギー事業をグローバルに展開するMainstream Renewable Powerへの出資参画

  • プロジェクト本部

当社は、ノルウェーのクリーンエネルギー投資会社Aker Horizons ASA(以下、Aker Horizons)が持株会社を通じて保有する再生可能エネルギー事業者Mainstream Renewable Power Limited(以下、Mainstream)に出資参画しています。
Mainstreamは中南米・アフリカを中心に陸上・洋上風力ならびに太陽光発電を手掛ける、同地域における再生可能エネルギー事業のリーディングカンパニーです。イギリスにおける洋上風力を始めとする6.5GWの開発実績、中南米・アフリカ・アジアにおける建設・操業・開発中計20.6GWの資産を有し、エネルギートランジションを機会とし、グローバルポートフォリオの拡大に向け、今後10年で上記資産の立ち上げを含め25GWの開発を目指しています。
Aker Horizonsの親会社であるAker ASAは1841年に創業したノルウェー第2位の石油ガス複合企業グループです。近年脱炭素に舵を切り、再エネ分野の中核企業としてAker Horizonsを設立し、傘下にMainstreamのほか、CO2回収・貯留(Carbon Capture and Storage)開発事業会社、クリーン水素・アンモニア開発事業会社、洋上風力開発事業会社を保有しています。
当社は、世界各国での大型発電所建設・運営ノウハウやグローバルな顧客ネットワークを活かし、Mainstreamの成長と企業価値向上に貢献します。また本参画を通じて、規模感ある再生可能エネルギー電源開発を推進し、発電ポートフォリオのさらなる良質化・事業を通じた社会のGHG排出量削減加速に繋げます。

インド大型再生可能エネルギー事業への出資参画

  • プロジェクト本部

当社は、100%子会社ミットパワーインディアを通じ、インド再生可能エネルギー事業者最大手ReNew Power Private Limitedが推進する大型再生可能エネルギー事業の開発に参画しています。本事業は、インド国内に3件の風力発電所(総出力90万kW)および1件の太陽光発電所(総出力40万kW、最大10万kWhの蓄電システムを併設予定)を新設し、インド新・再生エネルギー省傘下のインド太陽エネルギー公社 Solar Energy Corporation of India Limitedとの25年間の長期売電契約に基づき40万kWの電力を安定的に供給するものです。従来の再生可能エネルギー案件は、風況あるいは日照量により発電量が変動し、安定的な電力供給が難しいのが課題でした。本事業は、蓄電技術を含めた複数の再生可能エネルギー発電所から24時間安定的に電力供給を行うことを契約条件に含めたインド初のRound-the-Clock(ラウンド・ザ・クロック)スキーム型事業となります。総事業費は約13.5億米ドルで、各サイトでの発電準備が整い次第、段階的に売電開始を予定しています。当社は、これまで国内外で培ってきた発電事業の知見を活用し、本事業の着実な完工と円滑な事業運営に貢献します。
インドは現時点で世界第3位の温室効果ガス(GHG)排出国ですが、インド政府は、2021年11月に開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)にて2070年までにGHG排出量ネットゼロを表明し、非化石燃料による発電容量を2030年までに500GWに引き上げる方針を発表しました。再生可能エネルギー100%の電力を安定して供給することが可能となるRound-the-Clockスキームの推進は、こうしたインド政府の方針に合致するものであり、現在インド総発電設備容量の過半を占める石炭火力発電所を将来的に置き換える役割を果たすことが期待されます。人口やGDPの継続的な成長が見込まれるインドにおいて再生可能エネルギーは今後も拡大が期待される事業分野です。当社は本事業を通じて、インドの電力不足解消と脱炭素化の推進に貢献していきます。

代替燃料

水素関連

  • エネルギーソリューション本部

水素は、利用時に温室効果ガス(GHG)や環境有害物質を排出せず、環境負荷のないクリーン燃料として世界中で注目されています。当社においては、エネルギーソリューション本部を核とし、各事業セグメントが持つネットワーク・知見を活用し、社内横断的な協業により総合力を発揮した水素事業に取り組んでいます。当社は、水素事業をNet-zero emissionsを達成するために有効なアプローチの一つと捉え、ステークホルダーと共に必要な社会基盤作りを進め、収益力のある事業創出に向け尽力していきます。

水素関連

西豪州におけるグリーン水素製造事業

  • エネルギーソリューション本部

再生可能エネルギーから生成するグリーン水素は、製造および燃焼時にCO2を排出しないことから、脱炭素社会の実現に向けてさまざまな産業分野において活用が期待されています。
当社は、西豪州ピルバラ地域でグリーン水素製造事業に参画しています。本事業は、仏電力大手Engie S.A.(以下「ENGIE」)と当社の合弁会社が西豪州ピルバラ地域にて、太陽光由来の電力を用いて水を電気分解してグリーン水素を製造し、大手窒素系肥料メーカーであるYara International ASAの100%子会社であるYara Pilbara Fertiliser Pty Ltd(ヤラ・ピルバラ・ファ―ティライザー、以下「YPF」)が保有するアンモニア製造設備向けに供給するものです。太陽光パネル(18MW)および水素製造装置(10MW)を設置し、製造したグリーン水素をYPFへ供給、YPFはクリーンアンモニアの原料として利用します。グリーン水素プラントは、2024年完工および生産開始予定です。

欧州におけるグリーン水素製造事業

  • パフォーマンスマテリアルズ本部
グリーン水素を届ける グリーン水素を届ける

当社は、2022年4月にグリーン水素を製造するフランスLhyfe(ライフ)SAに出資参画しました。Lhyfeは2017年に設立、2021年に風力発電由来第一号商業プラントの商業運転を開始しています。同社はモビリティ向けおよび産業向けに、9.8GWのグリーン水素製造案件候補を有しており、2026年までに200MW、2030年までに3GW分の稼働を計画しています。
欧州連合では、2050年までのネット(実質)ゼロ実現をターゲットとしたグリーンディール政策を打ち出し、2030年までに40GW(ギガワット)の水素製造用水電解装置の導入目標を掲げ、水素普及に向けた制度設計の導入が進んでいます。その中で、当社は、地産地消モデルでグリーン水素製造に取り組むLhyfeへの参画を通じ、既存の水素関連事業との相乗効果や新たな顧客開拓により、同社の企業価値向上につなげます。また、欧州水素収益基盤を確立し、欧州グリーン水素の発展によるGHG排出量削減加速に貢献していきます。

モビリティ向け脱炭素ソリューション事業

  • パフォーマンスマテリアルズ本部
水素タンクを用いた輸送用コンテナ、移動式水素ステーション 水素タンクを用いた輸送用コンテナ、移動式水素ステーション

当社は、欧米で燃料電池自動車(FCEV)の車載燃料用や水素の陸上輸送用等に使用される圧縮水素タンク・システムおよびバッテリーシステム、車両インテグレーション事業者のノルウェーのヘキサゴンプルス(Hexagon Purus ASA、以下「Purus」)の転換社債引受に合意しました。
当社は、世界最大の炭素繊維強化プラスチック製高圧ガス容器メーカーであるヘキサゴンコンポジット(Hexagon Composites ASA)に2016年から出資参画し、同社との協業に取り組んできました。こうした中、同社子会社の一社であるPurusは、圧縮水素タンク製造、およびタンクを用いた水素供給システム設計や商用車のインテグレーションにノウハウを持ち、水素を中心にモビリティ向け脱炭素ソリューションを提供する事業会社として、技術開発力を高め顧客開拓を進めています。現在、欧州、米国等世界各地で気候変動対応に向けた助成金制度や、内燃機関車に対する規制、ZEV(Zero Emission Vehicle=ゼロエミッション車)に対する奨励策が具体化してきており、それらの解決手段の一つとして特にトラック、バス等商用車領域でのFCEVの採用、また地産地消型の水素輸送需要の拡大が予想されます。Purusとの戦略提携を通じ当社の事業・顧客基盤との連携によるモビリティ領域の電化における新規事業機会を創出し、企業価値の向上につなげつつ、商用車に加え、船舶、鉄道、空港等のモビリティのゼロエミッション化の実現に貢献していきます。

バイオ燃料

インドにおける農業残渣サプライチェーンマネジメント事業

  • エネルギーソリューション本部
ブリケット工場における加工前の稲わら(パンジャブ州) ブリケット工場における加工前の稲わら(パンジャブ州)

当社は、インドで農業残渣サプライチェーンマネジメント事業を手掛けるPunjab Renewable Energy Systems Pvt. Ltd.(以下、PRESPL)に出資参画しています。
世界屈指の農業大国であるインドでは、農業残渣の野焼きが深刻な大気汚染の主要因の一つとなっています。こうした中、インド政府により農業残渣等の「食と競合しない」非可食資源の有効活用政策が導入されていることを背景に、同国ではバイオマスエネルギー市場のさらなる拡大が見込まれています。PRESPLは2011年の創業以来築き上げてきた農家との強固なネットワークを活かし、農業残渣の集荷・供給事業にとどまらず、農業残渣を原料としたブリケットの製造や熱源供給事業等、多岐にわたる事業を展開しています。
当社は保有する幅広い事業アセットとのシナジーを活かして、PRESPLの成長を支援し、インドでの農業残渣をベースとするバイオマス事業に取り組むと同時にグローバルでのバイオ燃料事業の拡大を目指します。これによりインドでの大気汚染等の社会課題解決に寄与し、地球温暖化をはじめとする地球規模の課題解決にも貢献していきます。

燃料アンモニア

ホスト国とのパートナーシップや長年培ってきた既存の顧客基盤・マーケティングノウハウ、クリーン燃料アンモニア協会への参画等、多数の産業へのリーチがある総合商社の強みを活かしたバリューチェーンの構築に取り組んでいきます。

クリーンアンモニア生産プロジェクト(アラブ首長国連邦)

  • エネルギーソリューション本部
  • ベーシックマテリアルズ本部

当社は、アブダビ国営石油会社(以下「ADNOC」)とクリーンアンモニア生産プロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、ADNOC、尿素・アンモニアの製造・輸出事業を行うFertiglobeおよび韓国エネルギー関連事業を行うGS Energyを事業パートナーとし、アラブ首長国連邦/ルワイス工業地域内に開発進めるタジーズ開発地区にて、生産過程で排出されるCO2分を処理した水素からクリーンアンモニアを生産するものです。ADNOCは2021年より本プロジェクトの初期検討を進めており、2025年に年間100万トンのクリーンアンモニア生産開始を目指します。
アンモニアは、燃焼時に二酸化炭素を排出しないゼロエミッション燃料や水素の輸送手段として注目されています。本プロジェクトで生産されたクリーンアンモニアを日本向けに輸出し、日本国内の電力の低炭素化に貢献することも検討しています。
当社はエネルギー分野において、1970年代からアラブ首長国連邦にてADNOCと共に、液化天然ガス(LNG)事業を開発・運営しています。また、アンモニア事業においても約50年に亘る取り扱い実績があり、日本への輸入においてはトップシェアを誇ります。これらの事業を通じて得た強み・ノウハウを最大限に活用し、本プロジェクトを進めていきます。

クリーンアンモニア生産プロジェクト(米国)

  • ベーシックマテリアルズ本部
  • エネルギーソリューション本部

当社は、米国CF Industries Holdings, Inc.(以下「CF」)と米国での新設クリーンアンモニア生産プロジェクトの推進に合意し、共同開発契約を締結しました。本プロジェクトは、CFを事業パートナーとして米国メキシコ湾で年間100万トン規模のクリーンアンモニアを生産するものであり、CO2についてはCCUS(*1)を通じ一般的なアンモニアの製造方法に比べて60%以上の削減を実現する予定です。2023年のFID(最終投資決断)および2027年の生産開始を目指し、共同でFEED(*2)を実施する予定です。
従来、肥料や工業用に使われてきたアンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないゼロエミッション燃料や水素の輸送手段として注目されています。当社は、本プロジェクトで生産されたクリーンアンモニアの日本をはじめとしたアジア向けの販売を主導し、各国における電力の低炭素化に貢献していきます。
当社はアンモニア事業において約50年に亘る取り扱い実績があり、日本への輸入においてはトップシェアを誇ります。当社は世界最大のアンモニア生産者であり操業経験も豊富なCFとともに、両社の強みを最大限に活用し、本プロジェクトを進めていきます。

*1 CCUS : Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage(CO2の回収・活用および貯留)
*2 FEED: Front End Engineering and Design(基本設計)

電源開発・エネルギーマネジメント

分散型太陽光事業

  • エネルギーソリューション本部

当社は、インドネシアの産業・商業(“C&I”)顧客向け分散型太陽光(屋根置き太陽光)事業者であるPT Xurya Daya Indonesiaの持株会社Xurya Pte Ltd(以下、Xurya)に出資参画しました。インドネシア政府は2060年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成する目標を掲げ、さらなる脱炭素化および再生可能エネルギー導入を推進しています。インドネシアのC&Iセクターの電力需要はASEAN各国の中でも最大級であり、今後も経済成長に伴う電力需要が増加する中で、脱炭素ソリューションとしての分散型太陽光事業に高い注目が集まっています。
Xuryaは、2018年の創業以来、インドネシアの分散型太陽光事業におけるリーディングカンパニーとして、C&I顧客向けに分散型太陽光設備の開発やオペレーションおよびメンテナンスサービスの提供を行っています。日系企業を含む繊維メーカーや食品メーカー等、中小企業から大企業まで計160社以上の導入実績があり、今後も成長が見込まれるインドネシアのC&I顧客のニーズを取り込んでいく方針です。
当社は、世界各国で培った分散型太陽光事業の知見やインドネシア内外のネットワークを活かし、Xuryaの成長への貢献、ならびにインドネシアの脱炭素化および再生可能エネルギー導入政策への貢献を通じて、脱炭素社会の実現に寄与していきます。

蓄電ICTシステムを用いたエネルギーマネジメントサービス

  • エネルギーソリューション本部

再生可能エネルギー導入量がグローバルに増加している一方で、送配電系統への負荷増加、電力料金負担の不均衡、煩雑な需給調整等が課題となっています。当社はこうした問題に対応するため、蓄電ICTシステムを用いたエネルギーマネジメントサービスを提供するStem, Inc.、Sunverge Energy, Inc.に出資しました。また、Stemの蓄電システムと、北米で産業・商業需要家や公共機関向け分散太陽光事業に取り組む当社100%子会社のForefront Powerの分散太陽光をパッケージにしたソリューションを提供する等、多様化するニーズに応えるべく、新たなビジネスモデル開発にも取り組んでいます。さらに、再生可能エネルギーの急速な普及による電力市場のボラティリティの増加も課題となっており、当社では価格ヘッジや需給調整機能といったソリューションを提供する等、構造変化による新たなニーズにも応えています。欧州ではアイルランドのErova Energy Limitedへの出資等を通じて、電力物流分野での事業拡大や機能向上にも貢献しています。

天然ガス発電

  • エネルギー第二本部
  • プロジェクト本部

当社関連会社・福島ガス発電株式会社の福島天然ガス発電所は同県相馬郡に2基の天然ガス火力発電設備を保有しており、その発電容量は118万KWです。発電設備はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた、発電効率の高いガスタービン・コンバインドサイクル方式を採用しており、石炭火力ならびにガスタービンのみの発電による火力発電方式と比較してCO2の排出量を削減することが可能です。
本事業は、福島県がイノベーション・コースト構想で目指している「環境負荷の低いエネルギーの導入」や「新たなまちづくり」等に沿うものです。当社は本事業の推進を通じ、震災からの復興を目指す福島県浜通り地域の経済の活性化に寄与するとともに、今後も社会の発展に不可欠な資源の持続可能な安定供給と、環境と調和した社会づくりに取り組んでいきます。

EV(Electric Vehicles)

  • モビリティ第一本部
  • エネルソリューション本部

当社が新たな成長分野と定めるモビリティ(移動手段)分野のなかでも、「電動(EV)化」は、成長が見込める分野です。当社は、EV導入が加速している欧州でインフラを含め総合的にEV化を支援するビジネスモデルを構築し、他地域でも展開していきます。
当社は、これまで出資したEVメーカーCaetanoBus-Fabricação De Carroçarias S.A、Letenda Inc.、電池パックメーカーForsee Power SA、EV用電池を利用したエネルギーマネジメント会社The Mobility House等を有機的に結びつけ、包括的なソリューションを提供する新たなビジネスモデルの構築を目指しています。たとえば、ある街で路線バスのEV化が検討された場合、当社は街のEV化を加速させる役割を担いたいと考えています。具体的には、EVバスの供給、電池リース機能提供、エネルギーマネジメントを含めた包括的なサービスを提案することです。さらに、将来的には使用済み電池の再利用・再リースに関わるビジネスも視野に入れています。当社はこれらの取り組みを、まずは欧米において開始し、そこからアジアへと広げていきます。

欧州ほかにおけるZEV(Zero Emission Vehicle)バス事業

  • モビリティ第一本部

当社はポルトガルのCaetanoBus(以下、カエタノバス)に出資参画しています。同社は2010年よりEVバスの開発に取り組んでおり、2016年には空港内乗客輸送のランプバスを販売開始、2017年にはEV路線バスの商業生産・販売を欧州でスタートさせています。当社のグローバルネットワークを活用して同社製バスの拡販を支援しています。カエタノバスの世界展開の一例として、2020年春にはロンドン2路線に合計34両のシングルデッカー電動バスを納入。また、FC(燃料電池)路線バスは2020年末に開発完了し、ドイツやスペインを皮切りにトヨタ製燃料電池を搭載したFCバスの販売を開始しています。引き続きカエタノバスと共に、脱炭素社会に向けたオペレーションに合った最適なソリューションの提供を検討していきます。

欧州他におけるZEV(Zero Emission Vehicle)バス事業


360° business innovation:電動バスの先に、暮らしや街づくりまで見据える。

産業オペレーション・オートメーション

  • コーポレートディベロップメント本部

当社子会社のプラスオートメーション株式会社(以下、+A)は、当社のネットワークを活用したロボット調達力や物流子会社の知見、日本GLP株式会社のカスタマーネットワーク、株式会社豊田自動織機のエンジニアリングノウハウを活用し、消費者ニーズの多様化による業務の複雑化や人手不足といった物流倉庫現場の課題解決に取り組む物流ロボットサービス会社です。2023年6月現在、累計ロボット導入台数が3,000台を超える等サービス展開を加速、さらには、ロボットをはじめ、多様な物流機器やシステムの連携を可能とする独自開発システム「+Hub」の提供により、付加価値向上を図っています。
自宅にいながら欲しいモノがあたりまえのように届く時代において、サステナブルな物流サービスの構築は不可欠です。+Aは、現場に寄り添ったオペレーショナルデザイン、システム開発、活用支援を仕組み化しサブスクリプション型サービス「RaaS(Robotics as a Service)」として提供することで、物流産業全体の高度化を実現しつつ、物流の最前線で働く人々にやりがいや喜びももたらしていきます。

産業オペレーション・オートメーション

サーキュラーエコノミー/リユース・リサイクル


サーキュラーエコノミー:取り組み

エア・クオリティ

CCS事業への参画

  • エネルギー第一本部
  • エネルギー第二本部
  • エネルギーソリューション本部

当社はエネルギー資源開発や欧州等で先行するCO2の回収・貯留(Carbon Capture and Storage、以下、CCS)事業開発の知見と広範なビジネスネットワークを活用し、グローバルにCCS事業の早期立ち上げに向けて事業開発を進めています。
日本を含むアジア大洋州においては、関西電力株式会社とCCSのバリューチェーン構築を目指した事業化調査に関する覚書を締結し、関西電力は同社が運営する火力発電所から排出されるCO2を対象に回収を、当社は輸送・貯留を主に担当し、バリューチェーンを一気通貫した事業性等を調査・検討しています。
また、英Shellと同地域でのCCSバリューチェーン事業開発に関する共同調査のほか、マレーシアPetronasとのCCS事業化調査、ならびにタイPTTEPとのArthitガス田開発・生産事業におけるCCS事業化・JCM実現可能性調査、インドネシアPertaminaとのCCUS共同調査に取り組んでいます。

さらに、キャメロンLNG(液化天然ガス)プロジェクトパートナーである米国Sempra Infrastructure(センプラ・インフラストラクチャー)、仏TotalEnergies(トタルエナジーズ)、および三菱商事株式会社とともに、米国ルイジアナ州におけるCCSの事業化を目指し、Hackberry Carbon Sequestration, Llc(ハックベリー・カーボン・セクエストレーション、Sempra Infrastrucrure100%子会社)を実施主体とする共同調査に取り組んでいます。本プロジェクトは、主にキャメロンLNGプロジェクトから排出されるCO2を、同プロジェクト近接地に地中貯留するもので、LNG製造時に排出される温室効果ガスの削減に貢献します。また、本調査では、周辺の地域産業から排出されるCO2の受入れ、地中貯留の可能性も検討します。なお、調査開始に先立ち、2021年8月にはCCS事業予定地の圧入井掘削、および年間200万トンのCO2貯留に関して米国環境保護庁宛に許認可を申請済みです。
当社の強みである石油・ガス上流事業の知見と広範なビジネスネットワークを活用できるCCS/CCUS事業をエネルギーソリューション領域の一つと位置付けており、引き続き世界各地でのCO2削減ソリューションの提供、および低炭素LNGの供給に貢献していきます。



CCU–米国でのCO2を有効活用したメタノールの製造

  • ベーシックマテリアルズ本部

当社関係会社のFairway Methanol LLCでは、周辺プラントで副生される二酸化炭素(CO2)を原料として購入(最大で年間約18万トン)、有効利用してメタノールを製造(年間約13万トン)する設備の増設を2021年3月に決定しました。今回の設備の増強は、既存の工場能力を最大限に有効活用したもので、増設分の原料には周辺工場で副生されている二酸化炭素を使用します。二酸化炭素を分離・有効利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)の取り組みの一つで、二酸化炭素を資源と捉え素材や燃料に再利用することで、大気中への排出を抑制するカーボンリサイクルを実現するものです。
メタノールは住宅建材、自動車・エレクトロニクス用高機能樹脂、医薬品用途等、さまざまな産業の基礎原料として今後も安定的な需要の伸長が見込まれています。また、昨今では、二酸化炭素を原料とした基幹化学物質としても注目が高まっています。当社は、メタノールのトレーディング事業にも長く従事しており、製造面でも今回増設を行う北米での事業に加え、サウジアラビアでも製造事業へ参画しています。
当社はメタノールの安定供給を通じて幅広い産業の発展、持続可能な社会の実現、また、中期経営計画で目標に掲げた2050年のNet-zero emissionsの達成に向けて、既存事業と、そこで培ったノウハウを活かして脱炭素社会実現に向けた取り組みを進めていきます。

素材

リサイクルポリプロピレン製造事業開発

  • パフォーマンスマテリアルズ本部
リサイクルポリプロピレン樹脂 既存技術(THE PAST)、PureCycle技術(THE FUTURE) リサイクルポリプロピレン樹脂
既存技術(THE PAST)、PureCycle技術(THE FUTURE)

当社は、米国PureCycle Technologies, Inc.(以下、PCT)と、日本におけるリサイクルポリプロピレン樹脂製造事業の共同開発に取り組んでいます。
海洋プラスチック問題や気候変動といった環境問題を背景に、日本でもさらなるプラスチックのリサイクル活用が求められています。しかし、包装材料や自動車材料に広く利用されるポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂)は、分離が難しい着色料等の添加剤を含んでいることが多く、リサイクル材が利用できる用途は限られています。
PCTは、廃プラスチックからヴァージン材と同等品質であるUltra-Pure Recycled Polypropylene(UPRP)と呼ばれるリサイクルPP樹脂を生産する技術ライセンスを有し、UPRPの生産に成功しています。2023年4月には、米国オハイオ州の年産約5万トンの第一号商業プラントが完工しました。同工場で生産されるリサイクルPP樹脂は既に20年先まで長期引取契約として概ね販売合意済みで、他にジョージア州オーガスタやベルギーのアントワープにおいても大規模リサイクル工場の建設が計画されています。
当社は、本案件の推進により消費財や食品の容器、自動車内装材向け等にもリサイクルPP樹脂の用途拡大を目指し、廃プラスチックの確保からリサイクルPP樹脂の製造、お客様への供給までのサプライチェーンを構築することで、廃プラスチックの削減、サーキュラーエコノミーの確立に貢献していきます。

認証の取得

  • パフォーマンスマテリアルズ本部
  • エネルギー第一本部

顧客責任:社有林「三井物産の森」/森林資源事業等における認証の取得

グリーンビルディング

当社は、低環境負荷物件への投資と、保有物件の運用における環境・省エネルギー対策等を通じたエネルギー利用の効率化に取り組み、低環境負荷ポートフォリオの構築を目指しています。

Otemachi One(三井物産ビルおよび Otemachi One タワー)

当社等が保有するオフィスビルOtemachi One(三井物産ビルおよび Otemachi One タワー)は、環境・社会への配慮がなされた不動産を評価する認証制度であるDBJ Green Building 認証のうち、「国内トップクラスの卓越した『環境・社会への配慮』がなされた建物」として認証が付与されています。

日本ロジスティクスファンド投資法人

  • コーポレートディベロップメント本部

当社子会社の三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社が運用する上場REIT・日本ロジスティクスファンド投資法人(日本ロジ)は、52物件の物流施設を保有・運用しています(2023年5月末日時点)。
日本ロジでは物流施設の運用において、ESG に関する取り組みを積極的に推進しています。その活動に対する客観的な評価や認証を得ることで日本ロジのESGの取り組みの立ち位置や課題を把握し取り組みを一層深化させていけると考えており、グリーンビルディング認証の取得や第三者評価の評価向上に努めています。

外部認証等の取得
GRESBリアルエステイト評価

不動産会社・ファンドの環境・社会・ガバナンス(ESG)配慮を測る年次のベンチマーク評価GRESBリアルエステイト評価において、日本ロジは2022年、最高位の「5スター」評価を取得しました。また、ESG推進のための方針や組織体制等を評価する「マネジメント・コンポーネント」と保有物件での環境パフォーマンスやテナントとの取り組み等を評価する「パフォーマンス・コンポーネント」の双方において優れた参加者であることを示す「グリーンスター」の評価を5年連続で獲得しました。さらに、ESG情報開示の充実度を測るGRESB開示評価においても、ESG情報開示の取り組みが高く評価され、最上位の「Aレベル」の評価を取得しました。

MSCI ESG格付評価

MSCI ESG格付は、企業がESGに関するリスクと機会をどの程度適切に管理しているかを調査、分析、格付けし、「AAA」から「CCC」までの7段階の総合的な企業ESG格付を提供しています。日本ロジは2022年5月に「AA」を獲得しています。

MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数への組み入れ

MSCI社がMSCIジャパンIMI指数の構成銘柄の中から、ESGに優れた企業を選別して構成されるMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に組み入れられています。

SBT(Science-Based Targets)for SME認定

日本ロジはSCOPE1.2の温室効果ガス排出量削減目標を2030年度までに2021年度比42%削減、2050年度までにネットゼロを達成する目標を策定しています。これらのうち、2030年度までの温室効果ガス排出量の削減目標が、パリ協定に準じて「世界の気温上昇を産業革命前より2°Cを十分に下回る水準に抑え、また1.5°Cに抑えることを目指す」ための科学的な根拠に基づくものであるとして、国際機関SBTイニシアティブによる「SBT(Science-Based Targets)for SME」認定を2022年に取得しています。

グリーンファイナンス・フレームワーク評価

グリーンファイナンスによる資金調達を通じ、サステナビリティに関する取り組みをより一層推進するとともに、ESG投資に関心を持つ投資家層の拡大を通じた資金調達基盤の強化を目指し、グリーンファイナンス・フレームワークを策定しています。なお、本グリーンファイナンス・フレームワークに対する第三者評価として、株式会社日本格付研究所(以下、JCR)より、「JCRグリーンファイナンス・フレームワーク評価」の最上位評価である「Green1(F)」の評価を取得しています。

グリーンビルディング認証取得

日本ロジは、低環境負荷物件への投資と、保有物件の運用における環境・省エネルギー対策等を通じたエネルギー利用の効率化に取り組み、低環境負荷ポートフォリオの構築を目指しています。また、日本ロジ自ら保有物件の再開発(OBR)を行う際には、再開発後にグリーンビルディング認証を取得する方針です。保有物件のグリーン認証取得割合(賃貸可能面積ベース)について、以下を目指します。

  • 2025年度までに75%まで向上
  • 2030年度までに90%まで向上
グリーンビルディング認証取得割合(2023年3月31日時点)

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

認証種別 物件数 賃貸可能面積
(m2)
ポートフォリオ
面積割合
CASBEE不動産評価認証(*1) 36 974,924.07 70.8%
BELS認証(*2) 16 469,020.67 34.0%
CASBEE建築(新築)評価認証(*3) 1 37,378.68 2.7%
グリーンビルディング認証取得割合 41 1,081,645.17 78.6%

複数の認証を取得している物件があるため各認証種別の数値を合計しても「グリーンビルディング認証取得割合」の数値とは一致しません。
*1:CASBEEは、国土交通省の主導のもと、日本で開発・普及が進められている建築物の総合的な環境性能を評価するシステムです。CASBEE不動産評価認証は CASBEE-不動産で評価された建築物について、その評価内容を審査し、的確であることを第三者機関が認証する制度で、評価は4段階(S ランク:★★★★★~B ランク:★★)で表示されます。
*2:BELS認証は、建築物の省エネルギー性能を表示する第三者認証制度です。2016年4月より、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)において、不動産事業者等は建築物の省エネ性能を表示するように努めることが求められています。具体的な表示方法は、建築物の省エネ性能表示のガイドラインに定められており、BELS認証は同ガイドラインに基づいて評価され、その評価は5段階(★~★★★★★)で表示されます。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、快適な室内環境を保ちながら、高断熱化・日射遮蔽、自然エネルギー利用、効率の高い設備により、できる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、年間で消費する建築物のエネルギー量が大幅に削減され、エネルギー収支ゼロを目指した建築物です。BELS認証の評価制度において、その評価はZEB、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4段階で表示されます。
*3:CASBEE建築(新築)評価認証は、建物の環境性能を評価し格付けするもので、省エネや省資源・リサイクル性能といった環境負荷削減の側面に加え、室内の快適性や景観への配慮も含めた建築物の環境性能を総合的に評価するシステムです。

CASBEE不動産評価認証取得物件一覧
評価 物件名
S M-11 八千代物流センター
M-37 藤沢物流センター
A M-4 新木場物流センター
M-5 浦安千鳥物流センター
M-6 船橋西浦物流センター
M-9 習志野物流センター
M-12 横浜福浦物流センター
M-13 八千代物流センターII
M-17 習志野物流センターII
M-18 市川物流センターII
M-19 草加物流センター
M-21 柏物流センター
M-22 武蔵村山物流センター
M-24 新子安物流センター
M-25 三郷物流センター
M-26 相模原物流センター
M-27 千葉北物流センター
M-28 千葉北物流センターII
M-29 浦安千鳥物流センターIII
M-31 新木場物流センターII
M-32 横浜町田物流センター
M-34 白井物流センター
M-35 戸田物流センター
M-38 羽生物流センター
M-39 埼玉騎西物流センター
M-40 加須物流センター
M-42 板橋物流センター
T-3 清須物流センター
T-7 福岡箱崎ふ頭物流センター
T-9 福岡香椎浜物流センター
T-10 春日井物流センター
B+ M-14 浦安千鳥物流センターII
M-20 辰巳物流センター
M-36 市川物流センターIII
T-5 小牧物流センター
T-6 小牧物流センターII
BELS認証取得物件一覧
評価 物件名
5つ星「ZEB」 M-41 久喜物流センター
5つ星ZEB
Ready
M-2 浦安物流センター
M-6 船橋西浦物流センター
M-11 八千代物流センター
M-13 八千代物流センターII
M-17 習志野物流センターII
M-19 草加物流センター
M-21 柏物流センター
M-22 武蔵村山物流センター
M-27 千葉北物流センター
M-30 座間物流センター
M-34 白井物流センター
T-6 小牧物流センターII
T-12 愛西物流センター
5つ星 M-15 市川物流センター
T-7 福岡箱崎ふ頭物流センター
CASBEE建築(新築)評価認証取得物件一覧
評価 物件名
A M-2 浦安物流センター

日本ロジスティクスファンド投資法人:外部認証

投資法人みらい

  • コーポレートディベロップメント本部

上場REIT・投資法人みらいの資産運用会社である当社関連会社の三井物産・イデラパートナーズ株式会社は、サステナビリティ基本方針に基づき、継続的なリアルエステイト評価への参加やグリーンファイナンス等のサステナビリティに関する施策を推進しています。

外部認証の取得
GRESBリアルエステイト評価

上場REIT・投資法人みらいは2022年に実施されたGRESBリアルエステイト評価において、総合スコアの相対評価によるGRESBレーティングで「3スター」の評価を、また、ESGの推進方針や組織体制を評価する「マネジメント・コンポーネント」と保有物件での環境パフォーマンスやテナントとの取り組みを評価する「パフォーマンス・コンポーネント」の双方において優れた参加者であることを示す「グリーンスター」の評価を、ESG情報開示の充実度を測るGRESB開示評価においても「Bレベル」の評価を取得しました。

環境認証の取得割合

ポートフォリオにおける環境認証の取得率は以下のとおりです。

(2023年4月24日時点)

延床面積ベース
74.7%
DBJ Green Building

投資法人みらいは、DBJ Green Building 認証を8物件で取得しています。

DBJグリーンビルディング認証取得物件一覧
評価 取得年 物件名
4つ星
極めて優れた環境・社会への配慮がなされた建物
2022年 新宿イーストサイドスクエア
3つ星
非常に優れた環境・社会への配慮がなされた建物
2021年 品川シーサイドパークタワー
2022年 六甲アイランドDC
2020年 東京フロントテラス
2021年 ミ・ナーラ
2022年 BizMiiX淀屋橋
1つ星
十分な環境・社会への配慮がなされた建物
2020年 MIテラス名古屋伏見
川崎テックセンター
CASBEE不動産評価認証取得物件一覧
評価 物件名
S MIテラス仙台広瀬通り

投資法人みらい:外部認証

森林吸収源・排出権ビジネス

  • エネルギーソリューション本部

原生林の植生回復を通じたカーボンクレジットの創出・販売事業

Climate Friendly社が事業を行う原生林再生エリア Climate Friendlyが事業を行う原生林再生エリア

当社は、オーストラリアの農場における原生林の植生回復を通じてカーボンクレジットの創出・販売を手掛けるClimate Friendly Pty Ltdに出資参画しています。
Climate Friendlyはオーストラリアにおける原生林再生(土地利用)を通じたGHG(温室効果ガス)削減事業を手掛けています。再生した原生林が大気中のCO2を吸着し、そのGHG削減分を排出権として販売し、2020年までに2,000万トンのGHG削減を達成済みで、2025年までに1億トンの削減を目指す同国最大規模の排出権デベロッパーです。また、同社が手掛ける原生林の植生回復事業は、大気中のCO2吸収・固着のみならず、生態系や生物多様性の保護、土壌改善等の副次的効果が見込め、同国政府のGHG削減目標達成において重要な役割を担います。また、民間企業による排出削減のためのクレジット需要も足元伸びており、引き続き需要は堅調に伸びると予想されます。オーストラリアは当社事業においても重要取組国であり、当社グループ企業からのGHG排出削減機会の創出にも積極的に取り組みます。

パフォーマンス

GHG排出量

当社は、国内では2006年3月期から、海外では2009年3月期からGHG排出量調査を実施しています。GHG排出量としては、従来GHGプロトコル(*1)の支配力基準に基づくScope1、およびScope2を開示してきました(*2)。2020年3月期からは当社のScope1、2に該当しない投資形態のエネルギー・金属資源・火力発電事業等におけるScope 1、2、および全事業領域の関連会社のScope1、2について、Scope3のカテゴリー15(投資に伴う間接排出)として追加で開示しています。これに加え、2024年3月期からScope3の対象となる全カテゴリーを追加で開示しました。ステークホルダーからの要請や、気候変動に対応するリスク耐性を意識したポートフォリオの継続的な見直しと、幅広い事業展開を活かした機動的な機会への挑戦に取り組むという当社戦略の観点より、開示範囲を拡充したものです。

*1:GHGプロトコル:WRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)を中心としたイニシアティブにより策定されたGHG排出量の算定および報告基準。
*2:集計範囲は本店、国内支社・支店、全ての連結国内外子会社(100%)およびUn-incorporated JVを対象。


社有林「三井物産の森」で年間16万トンのCO2を吸収・固定

社有林「三井物産の森」で年間16万トンのCO2を吸収・固定

社有林「三井物産の森」におけるCO2吸収・固定量(*1)は、年間約16万トン(認証取得見込みの排出権を含む)、CO2蓄積量は約1,000万トンと推計され、持続可能な森林経営を通じて気候変動リスクの緩和に貢献しています。また、同社有林の公益的価値は約2,000億円(*2)と推計されています。

*1:“2019 Refinement to the 2006 IPCC Guidelines on National Greenhouse Gas Inventories”のChapter 4 Forest Landにおける Tier 2アプローチを採用し算出。従来の2006 IPCC GuidelinesにおけるTier1アプローチによる算出に代え、2021年3月期から精緻化を図るためTier2に変更。
*2:環境省「企業の生物多様性保全活動に関わる生態系サービスの価値評価」を基に算出。