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CEOメッセージ

総合力を進化させる
Global First-Tier Companyへ

代表取締役社長

(ほり) 健一(けんいち)

世界の事業環境が大きく変化する中、
三井物産は何を「変えず」、何を「進化」させていくのでしょうか

三井物産として普遍的なものは、「挑戦と創造」「自由闊達」という企業文化・風土です。これは世界中のさまざまな社会課題に対して、現実解を提案し、自ら実行する。その積み重ねにより、企業価値を高めていくという当社の基本思想そのものです。私は、この考え方を寸分変えずに、続けていきたいと思っています。
当社は、多様な地域特性を理解しながら、幅広い領域で事業を展開しています。そして、事業や地域の枠を超えて、知見や機能を組み合わせることで生まれる現実解にこそ当社の強みがあり、お客さまにもご評価いただいています。今後はその強みを、さらに進化させたいと考えています。
その前提となるのが、社内の垣根の低さです。15ある事業本部の本部長が社長とのラインで日常的に直接コミュニケーションをとり合い、アラインメントをとりながら迅速に意思決定を行っています。加えて、重要なのは経営リーダーシップチームが管掌領域を管理するだけでなく、事業本部や地域の枠を超えて案件形成や事業戦略の議論に関与し、全社横断的な役割を果たすことです。案件を起案した組織の視点だけではなく、三井物産全体としての最適解を追求する観点から議論を行っています。また、経営陣が率直かつフランクに意見を交わす企業文化も当社の特徴です。こうした垣根の低い経営体制が、事業や地域を超えた連携を促し、総合力発揮を支えています。
この組織や経営体制は、当社がお客さまから期待される「事業領域や業界の枠にとらわれない提案」にお応えする中で、自然と育まれてきたものです。常にお客さまの期待に応え、その先にある課題解決を追求してきた結果だと考えています。今後はAIを掛け合わせてこの強みを最大限に発揮しながら企業価値の向上と社会課題解決の好循環を確立し、ステークホルダーから信頼され続ける存在を目指します。

中経2026を振り返り、どのような成果や手応えを感じていますか。
また、更なる成長に向けて、どのような点を意識していますか

中期経営計画2026(以下、中経2026)では、成長投資と株主還元の両立を高いレベルで実現し、次の成長に向けた基盤を構築できたことが大きな成果だと考えています。成長投資は3年間累計で約2.4兆円と当初計画の約2倍の水準まで拡大し、株主還元についても約1.6兆円、基礎営業キャッシュ・フローに対する還元割合は53%超と当初計画を大きく上回りました。
特に、2030年以降に収益貢献が開始する長期かつ骨太な案件を金属資源・エネルギー・化学品等のセグメントで投資実行できた点は、将来の安定的な収益基盤を構築する上で極めて重要な成果だと考えています。同時に、中経2026で実行した投資案件が中経2029期間中にさらに成果を実現する見込みであり、加えて中経2029期間中に収益貢献を開始する即効性のある新たな成長投資機会も数多く控えています。こうした案件を着実に実行しながら足元の収益力を強化し、その成果を2030年以降の大型案件につなげることで、切れ目のない成長軌道を描いていきたいと考えています。
更なる成長に向けて、常に意識しているのは将来の成長機会を継続的に創出することです。当社は現在6兆円超の投資案件のパイプラインを有していますが、不確実性の高い経営環境だからこそ、各案件の戦略的意義や競争優位性を厳格に見極める必要があります。中経2029では、こうした考え方を徹底し、当社ならではの価値を真に発揮できる案件を厳選することで、次の成長を支える収益基盤を着実に構築していきます。

なぜ三井物産は、世界の有力企業やパートナーとの
長期的な関係性を築くことができ、
また、希少な投資機会を得ることができているのでしょうか

当社が長期にわたって有力パートナーとの関係を築くことができている背景には、足元の課題に真摯に向き合いながらも、常に長期目線で高い付加価値を創出していくという一貫した姿勢があります。
当社のパートナーシップはトップ同士と共に、現場の担当者同士まで含めた「多層的エンゲージメント」が非常に重要であると考えています。経営レベルだけでなく、現場レベルでの信頼関係が積み重なることで、長期的に整合性のある事業運営が可能となり、その結果として良質な案件を共同で創り出す機会につながっています。
さらに、当社はパートナーにとっての「ミッシングピース」を提供できる企業だと思っています。長年にわたる事業活動を通じて蓄積してきた産業知見や事業推進力に加え、多様なプロフェッショナル人材、グローバルネットワーク等、当社にはパートナーに提供できる多くの機能や強みが蓄積されています。それらを事業や地域の垣根を越えて最適に組み合わせることで、パートナーが直面する課題の解決や事業機会の創出につなげ、共に価値を創造することができます。こうして長期にわたり、世代を超えて築いてきたWin-Winの関係が、当社の競争優位性の源泉だと考えています。

中経2029では三井物産ならではの「総合力」の進化形を
「非線形のCombinatory Value(コンビナートリー バリュー)」と表現しました。今後どのように進化させていこうと考えていますか

当社の総合力とは、事業領域や専門分野を超えたプロフェッショナル人材による協業から生まれる着想と、それをグローバルな現場で事業として実現する力によって支えられています。まさに、これが三井物産の強みであり、「非線形のCombinatory Value」の源泉です。その具体例の一つが、エネルギー、化学品、インフラといった異なる領域のプロフェッショナル人材が協業して実現した、世界初のブルーアンモニア案件です。異なる専門性を持つ人材が領域を超えて連携しながら価値を創出した象徴的な事例であり、Combinatory Valueを体現した取組みだと考えています。
また、近年はAIの進化によって、人の経験や知見だけでは見出しきれなかったアイデアや事業の組合せを、より速く網羅的に探索できる環境が整ってきています。当社のグローバルタレントマネジメントシステムである「Bloom」においても、グローバルでプロフェッショナル人材の経験、実績、強みや専門性に関するデータが継続的に蓄積・更新されています。そのデータを活用することで、従来は把握しきれなかった人材や知見の新たな組合せを発見し、最適なチーム編成をより効率的に実現できるようになります。こうした取組みを通じて、当社の新規事業開発能力はさらに高まり、将来のCombinatory Valueの創出を加速していきます。
すでに、ヘルスケア×データ領域における医療と創薬業界の連携や、新燃料と船舶の連携等、さまざまな分野での産業横断的な取組みが始まっています。今後はこのような案件の「実現機会」と「価値創出によるインパクト」の双方をさらに引き上げていきます。

*プロフェッショナル人材とAIの探索力が融合し、従来にない組合せにより飛躍的価値を生み出す、「総合力発揮」の進化形

中経2029では「当期利益1.4兆円超」「ROE13%超」という
2030年に向けた「あり姿」も示されています。
その背景を教えてください

2030年のあり姿を示した理由は、将来の収益基盤となる骨太の長期大型案件が着実に積み上がり、その成果が2030年以降に本格的に表れてくる見通しが立ってきたからです。加えて、中経2029期間中に収益貢献を開始する案件も着実に進展しており、足元から2030年に向けた成長の道筋をより具体的にお示しできる段階になったと考えています。
2030年はゴールではなく、さらにその先の成長に向けた一つの通過点です。2030年以降に本格的な収益貢献が見込まれる大型案件のランプアップ効果を踏まえると、「1.4兆円」には更なる成長余地があり1.4兆円「+」と表現しています。1.4兆円及びROE13%は、さらに次の成長ステージに向けたスタートラインとして位置づけています。そのためにも、まずは中経2029の目標を着実に達成し、その先の成長につなげていきます。

中経2029の資料では、あり姿を達成するための方策として
ミドルゲームと成長投資を示しています。
あらためてミドルゲームとは何か、聞かせてください

ミドルゲームとは、既存事業の強化・効率化・ターンアラウンド等を通じて継続的に事業価値向上を図る取組みであり、基礎収益力を引き上げるための中核的な活動です。
その本質は、経営環境の変化を見据え、半歩先に手を打つことにあります。ミドルゲームにおいて鍵となるのは「Anticipation(先読み)」だと考えています。将来起こりうる変化に感度高くアンテナを張りめぐらせ、先手を打つことで事業価値を高めていく。そうすることで、成長の種を早く捉えることができるだけでなく、将来的なリスクや危機の回避にもつながります。
また、ミドルゲームを徹底することは、保有事業の基礎収益力が向上するだけでなく、資産リサイクルのフェーズでは売却時の資産価値を高め、より多くのキャッシュ創出にもつながります。こうした効果は当社にとって極めて大きな経済価値を生み出します。
さらに、重要なのは、ミドルゲームを着実に実践できる人材が、優れたM&Aの担い手になるということです。ミドルゲームで既存事業の価値向上に取り組んできたからこそ、新規投資の際の目利きが良くなり、また、投資後も効果的なバリューアップを行うことができるからです。ミドルゲームは既存事業を改善することだけでなく、将来の成長投資やM&Aの成功確率を高めるための重要な取組みであると考えています。

2030年に向けて金属資源、エネルギー分野の大型案件が
立ち上がっていきますが、今後どのようなポートフォリオバランスを目指していくのでしょうか

金属資源・エネルギー分野では、2030年に向けて大型案件の立ち上がりが見込まれており、引き続き、当社の重要な収益基盤として位置づけています。これらの事業については、地域分散を図りながら、長期にわたり生産を支える豊富かつ品位の良い埋蔵量を有する競争力の高い資産を基盤に、収益の持続性と再現性を高めていきます。
一方で、当社が目指しているのは特定の事業領域に依存したポートフォリオではありません。金属資源・エネルギー分野に加え、モビリティ、化学品を軸とする素材分野、ヘルスケア等、各領域がそれぞれの強みを活かしながら成長することで、当社ならではのポートフォリオを構築していきます。
こうしたポートフォリオ経営を通じて、基礎収益力を全セグメントでバランスよく成長させていく考えです。同時に、市況上昇局面においては、金属資源・エネルギー分野が収益拡大のアップサイドをもたらすことが期待されます。そして、地域軸(先進国・新興国)・事業軸の双方で分散の効いた、レジリエンスの高いポートフォリオを目指していきます。

今後のROE向上や成長投資・株主還元のバランスを
どのように考えていますか

ROE目標の達成には強くこだわっています。ミドルゲーム・成長投資による収益力の強化と、株主還元を含む資本効率向上を両輪で進め、ROEの向上に取り組んでいきます。また、昨今の不確実性の高い環境下においては、マネジメント・アロケーションを厚く確保し、経営の選択肢を幅広く持つことが重要です。その上で、優良な成長投資を着実に実行するとともに、累進配当を継続しながら、自己株式取得を含む追加の株主還元を機動的に実施することで、継続的な1株あたりの価値向上を図っていきます。ステークホルダーの皆様とは、経営環境の変化に応じて、丁寧にエンゲージメントを重ねていきます。
また、足元の財務レバレッジ水準には余力があると認識しています。経営環境を見極めながら適切に財務レバレッジを活用するとともに、多種多様な定量・定性リスクを全社横断で一元的に把握し管理する、当社独自の統合リスク管理を徹底することで、ROE目標の達成を実現していきます。

*将来機会に応じた成長投資・追加株主還元の選択肢

株主や投資家との対話を踏まえ、企業価値向上に向けて
どのような経営を目指していますか

中経2026においても、計画策定時には市場のボラティリティを踏まえ、比較的保守的な前提を置きました。そして都度、修正を加えながら目線を引き上げ、成長を実現してきました。不確実性の高い経営環境をネガティブには捉えていません。むしろ、経営環境の振れ幅が大きい時ほど当社の果たす社会的役割は大きくなり、お客さまに新たな価値を提供できる機会も増えると考えています。
当社は、事業の枠を超えたビジネスモデルと機動力を活かしながら、そうした機会を着実に取り込んでいきます。また、ミドルゲームを通じて既存事業の価値向上を積み上げていくことで、中経2029で掲げた目標を確実に実現していきます。同時に、過去から培ってきた統合リスク管理を基盤としながら、各事業領域で蓄積してきたDomain Expertise(専門知見)、テクノロジー、ロジスティクス、ファイナンス、人的資本等を組み合わせることで、お客さまの長期的な実需に応える「不可欠なサービスの供給者」として社会に価値を提供していきたいと考えています。
また、そうした価値の提供を通じて、世界各地で顕在化するさまざまな希少性に関わる課題に向き合い、社会に現実解を提供しながら企業価値の向上を実現していきます。

持続的な成長を実現する上で、次世代の経営人材や
組織づくりをどのように考えていますか

三井物産の社員とは「自律的に判断できるプロフェッショナル集団」であり、志を同じくする社内外の仲間と共に事業を創り上げることができる人材です。Independent Thinkerとして、自ら考え、判断し、行動できる人材であってほしいと考えています。
加えて、地域特性を理解した人材であることも重要です。当社は地域軸と事業軸の双方を持つグローバルマトリクス体制を敷いている組織であり、この両軸で経験を積むことで、グローバルの有力パートナーとの関係を構築し、現地に根差したビジネスを創出する力につながると考えています。
その上で、専門性と経験に裏打ちされた現場起点のリーダーシップも重視しており、それぞれの現場で培った経験をもとに自ら判断し、周囲を巻き込みながら事業やプロジェクトを牽引できる人材を育成していきたいと考えています。一方で、主役として前に立つ力だけではなく、状況に応じて必要不可欠であるサポーター役を担う柔軟性や謙虚さも大切な要素です。
こうした人材が事業や地域の枠を超えて協業することで、当社ならではの総合力が発揮され、新たな価値創造につながると考えています。

2030年、そしてその先に向けて、
三井物産はどのような企業でありたいと考えていますか

当社が目指すのは「Global First-Tier Company」です。日本発の企業としてのルーツを大切にしながら、グローバルでの存在感をさらに高めていきたいと考えています。
当社は50年先を見ても、その時々で事業ポートフォリオが変化し続ける企業だと思います。しかし、根底にあるものは変わりません。私たちは常に、お客さまの求めることに応え、お客さまのために価値を提供し続ける企業でありたいと考えています。
今後も、基礎収益力・収益性を高めながら、新たな事業やビジネスモデルを生み出し、当社ならではの付加価値を絶えず創出しながら進化し続ける、ダイナミックな企業であり続けます。

堀 健一