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株式会社三井物産戦略研究所

世界の穀物需給の行方

2017年12月25日


三井物産戦略研究所
産業調査第二室
野崎由紀子


Main Contents

要約

  • 穀物価格は足元で低迷を続けているが、需要拡大が続くなかで、今後の動向が注目されている。
  • 世界各国の食料の消費動向を見ると、もともと穀物摂取の多いアジア諸国を中心に、1人当たり穀物摂取は減少している一方で、穀物と置き換わる形で畜産物の摂取が増えており、それに伴って、家畜の飼料としての穀物の需要が拡大している。
  • 飼料用穀物の需要の前提となる食肉の消費動向を見てみると、食肉消費は所得水準と相関関係があるが、大半の高所得国や一部の中所得国においては、1人当たりの食肉消費の拡大は、水準の違いはあるが、頭打ちとなっている。
  • こうした経験則を踏まえ、2050年の世界の食肉需要を試算すると、2013年比1.62倍との結果を得られ、現在の飼料効率が変わらないとすれば、飼料用穀物も同様に同1.62倍必要となる。他方、食用穀物の需要については、世界人口が同1.35倍に増加する一方で、需要の一部が畜産物に置き換わることで1人当たり穀物消費は減少するため、仮にその減少率を17%とすれば、同1.12倍となる。これら飼料用と食用を合算すると2050年には同1.33倍の穀物が必要との計算になる。
  • 穀物の供給を1.33倍まで増やすためには、耕地面積の拡大を考慮すると、単収(面積当たり収量)は1.27倍まで引き上げる必要がある。
  • OECDとFAOは、2026年までの小麦やトウモロコシの単収の伸び率を年率1%程度と見通しているが、それが2050年まで続くと仮定すれば、2050年には単収は1.45倍となり、必要量を満たせる計算となる。
  • しかし、今後、単収の水準が上がるにつれて単収の伸び率が低下していくことを勘案すると、伸び率は年率1%に届かない可能性もあり、必ずしも楽観はできない。
  • 単収を上げるためには研究開発等の投資が不可欠であるが、ある程度の期間にわたって価格低迷が続けば、投資のインセンティブが薄れ、投資が縮小される可能性が高い。そうなれば、単収は伸びず、供給が不足し、結果的に価格が上昇することが予想される。それを勘案すると、長期的には穀物価格に上昇圧力が働きやすい状況になるだろう。

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