カンボジアやタイなどで農業技術指導や森林再生、里山保全などの活動を行うNPO法人環境修復保全機構。現地でのプロジェクトのコーディネートと日本における普及啓発を担当する石山千佳さんは、「現地スタッフが育ってきたので、今では海外の拠点に行くのは2〜3カ月に1回くらいです。カンボジアでコンポスト事業を始めた時に10代だった女の子が、今では現地スタッフになっているケースもあるんですよ」と笑顔で話す。
カンボジアでのプロジェクトがスタートした2007年は、石山さんが同機構のスタッフになったのとほぼ同じころだった。「当時は団体の規模も小さくて、時間や資金だけでなく人手や道具も足りない状況でした。私も当時は事務所の床でこっそり寝泊まりをしながら働いたこともあります(笑)。でも、そのころに活動を続けていく覚悟ができたし、そのために必要な習慣が身に付いたように思います」。
©Natsuki Yasuda
ケニアからの研修生にコンポストの作成方法をていねいに指導する。環境修復保全機構には、アジアをはじめ世界各国からの研修生が、循環型農業を学ぶために訪れる。
環境修復保全機構が目指すのは、化学肥料に依存しない循環型農業。その実現のため、現地でワークショップを開催したり、作物残渣(ざんさ)をコンポストにする加工センターを設置するなどの活動を行っている。「立ち上げの時には、村の長老たちと話し合って、活動を理解してもらうところから始めました。一方で、小学校での環境教育にも力を入れています。村の子どもたちは、数年後には農業の担い手となりますが、プロジェクトが進むにつれて、長老たちとも『次の世代にどういう村を残していくか』といったことを話し合うようになりました」。このプロジェクトで誕生したペレット状のコンポストは、その効果が認められて他州でも採用されるなど、カンボジアの循環型農業の広がりに寄与している。
「環境保全活動の本当のところの結果というのは、私たちが生きている間には分からないかもしれません。でも、5年、10年たつころには、身近なところに環境改善のしるしを見いだすことはできるかもしれない。その場面を村の人たちと一緒に見ることができたらいいなと思います」。
©Natsuki Yasuda
【助成案件名】メコン河流域における作物残渣の火入れ削減を目指したコンポスト技術の普及活動 【助成期間】2007年7月~2010年6月(3年)