もしも世界に「モビリティ」がなかったら……。 人も物も資源も運べず、世界は停滞してしまいます。社会の豊かさのためには、モビリティの存在が欠かせません。しかし、モビリティが動くほど、CO2が排出されてしまうジレンマがあるのもまた事実です。
この記事では、三井物産がモビリティという領域でCO2削減に向けて考えていること、チャレンジしていることをご紹介します。
乗用車やトラック、バス、鉄道、船、飛行機、建設機械、鉱山機械など、総称して「モビリティ」と呼ばれています。世界を動かすために必要なモビリティですが、全世界のCO2排出量のうち、約20%はモビリティから排出されていると言われています。そのCO2排出量をゼロにする考え方が「ゼロエミッション」です。エネルギー源を水素や電気といった、よりクリーンなエネルギーに変えていく挑戦であるゼロエミッション。その挑戦の中で、三井物産はビジネスの仕組みを作るという大きな役割を担っています。
三井物産はモビリティの脱炭素化に関する研究開発を進めていますが、技術を突き詰めるだけではなく、どうしたらビジネスモデルとして成り立つかに注力して取り組んでいます。
ゼロエミッションが先行している分野は、都市バスの電動化です。運行ルートが決まっている都市バスは自家用車と異なり、充電の設備やタイミングが計画しやすいという特徴があります。そのような都市バスの電動化が、世界で最も進んでいる地域の一つが欧州です。
欧州は環境意識が高く、政府からのサポートも厚いモビリティの脱炭素化の先進地域として知られています。三井物産が欧州での事業パートナーとして連携しているのは、ポルトガルNo.1のバス製造会社であるCaetanoBusです。同社は、もともとはバスの車体製造を行っていましたが、2010年から電動バスの開発も行っています。
三井物産は2017年から同社の事業に出資しています。CaetanoBus 単独ではバスの販売のみに留まってしまうところ、三井物産が参画することで、バス導入後インフラの整備がわからないお客様に対して、総合商社としての強みを活かし、インフラのパートナー企業と連携して、共に運行計画や充電計画を策定し、事業化に繋げることが可能になりました。電動バスを製造するCaetanoBusと、ビジネスの仕組みを作り出す三井物産が協力することで、ゼロエミッションバスの導入が可能となり、新しい世界の実現に向けて前進するのです。
欧州から始まった都市バスの脱炭素化事業戦で培ったノウハウとグローバルネットワークを活かし、三井物産は新たな市場として、インドへの展開を始めました。世界一の人口を誇り、急成長を遂げる大国であるインドは、深刻な大気汚染が問題となっており、2030年までに公共車両を100%EV化するという国家目標を立て、実現に向け取り組んでいます。
また、エネルギー自給率を上げるという観点から、化石燃料の輸入からの脱却を目指し、自国内で賄えるエネルギー源への転換を図っています。エネルギー源の転換と大気汚染の解消という2つの観点から、非常に強力に公共車両の電動化を進めているインド。その市場で2023年に三井物産が出資したのが、インドでEVバスや小型トラックを設計・製造・販売する新興の電動商用車メーカーであるEKA Mobilityです。
三井物産はEKA Mobilityと共に、インドをEV製造開発のグローバル・ハブ化し、他の新興国で販売することも目指しています。
モビリティの世界は陸上だけではありません。世界のあらゆる物流の約80%以上、そして日本に至っては約99%以上を、実は船が担っており、海上モビリティのエネルギー転換も大きな課題です。
しかし、巨大な船舶は自動車とは違い、現在の技術では重量の制約やコストの観点から、いきなり全てを脱炭素化するのは難しいのが実情です。まずはゼロではなくローから。ローエミッションを目指し、海上モビリティのエネルギー源を現実的に、よりクリーンな燃料に置き換える挑戦がはじまっています。
これまで船のエネルギー源は重油が中心となっていましたが、ローエミッションを目指し、それを低炭素メタノールや、低炭素アンモニア、LNGなどに変えていく動きが起きています。
実は三井物産は、環境負荷の低いメタノールを燃料として使用できる世界初のバラ積み船の開発を行っています。重油とメタノールどちらでも動く画期的なバラ積み船を、日本でつくり、世界に向けて販売することを目指しています。
しかし、メタノールで動く船をただつくるだけでは世界に普及しません。燃料の安定供給や世界各地での供給設備の整備や、価格競争力などビジネス化に向けた課題は数多くあります。そうした課題を解決するためにも、関係者が多岐に亘る船舶業界において、造船会社や船主、用船者、荷主、舶用燃料提供者など、利害の異なる様々なステークホルダーの目線を合わせることが非常に重要です。世界的な海洋国家である日本から、船舶の脱炭素化をリードしていくために、三井物産は多くの関係者を巻き込んで、プロジェクトを前に進めていくという大きな役割を担っています。
陸で、海で、モビリティの設計、製造、販売、燃料の調達、提供、インフラの整備など、様々な事業を展開する三井物産。私たち三井物産は、モビリティの脱炭素化に向けて、これからも国や産業を横断して挑み続けます。
三井物産入社後、船舶の国内事業、海外語学研修員、自動車部品の製造・販売事業などを経験。現在は欧州三井物産にてゼロ・エミッション・ビークルに関連した事業開発、旅客鉄道事業などを担当。
2020年に三井物産へキャリア入社、モビリティ第二本部 船舶プロジェクト部所属。海外顧客向け船舶トレーディング業務、海外パートナーとの船舶保有合弁会社を通じたアセット投資・管理、新燃料船プロジェクトを担当。
2023年6月に三井物産へキャリア入社。モビリティ第二本部戦略企画室を経て、2023年10月より船舶事業部船舶事業第一室で、グリーンメタノールの使用によるCO2ゼロエミッションをコンセプトとしたメタノール燃料焚き船等を担当。
三井物産入社後、乗用車の販売代理店事業、ポルトガルの電動バスメーカーCaetanoBus社への出向を経験。現在は同社戦略策定支援、並びにゼロ・エミッション・ビークルに関連した事業開発を担当。
三井物産入社後、トラックの製造・販売事業、航空機リース事業、アイルランド子会社への出向を経て、現在はグリーンモビリティ事業室に所属。インドの電動バス・小型商用車メーカーEKA Mobilityへの出資並びに同社事業支援を担当。