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2022.12.15

日本発の
世界と戦える
ブランドをつくりたい。

株式会社ドットミー 代表取締役社長 知念 孝祥 ジョナサン
株式会社ドットミー 代表取締役社長
知念 孝祥 ジョナサン
Profile

三井物産入社後、ICT事業本部でデジタルビジネス分野を中心に担当。2017年にAIを活用したSNS解析ツールを開発する英国BlackSwan社への出資に携わり、同社サービスの日本展開を主導。SNSを中心にブランド開発を行うD2C産業の勃興を目の当たりにしたことをきっかけに、2021年、流通事業本部にて、D2Cの商品開発からブランド開発、コミュニケーション設計まで行う株式会社ドットミーを設立。同社の代表取締役社長として出向中。

三井物産で取り組んでいることは?

現在は、株式会社ドットミーいう会社を立ち上げて、その代表取締役社長として三井物産から出向しています。ドットミーという会社は、ブランドをつくり育てる会社です。自社でもCycle.meというブランドを展開しながら、さまざまなパートナーと共同でブランド開発を行っています。初期のコンセプト開発から、実際にモノをつくって販売するところまで、スピーディーに一気通貫で対応できる体制が評価され、ありがたいことに多くのお問い合わせをいただいています。

なぜD2Cのブランド開発事業に取り組んでいるのか?知念 孝祥 ジョナサン

なぜD2Cのブランド開発事業に
取り組んでいるのか?

以前は、SNSを解析する英国のBlackSwanという会社への出資に携わり、そのサービスを日本で提供する事業を担当していました。その中で、SNS上のデータ解析だけではなく、その傾向やトレンドを踏まえた原料調達からモノづくり、販売まで一気通貫での提案が欲しいと、さまざまな業界のパートナーから相談されました。それまでの三井物産は、原料であれば原料の提案、販売であれば販売の提案といったように、機能ごとの提案が基本でした。一方で、生活者のニーズがどんどん変わり細分化してくる中で、世の中のD2Cブランド勃興の流れを感じ、SNSで生活者のニーズをとらえるだけでは、商品にまで落とし込めないという課題感を持つ取引先も多かったのです。

SNS解析の問い合わせについては、社内のあらゆる部署の担当者と連携して対応していました。例えば、原料を扱う部署からは、「パートナーは、単純に原料の提案ではなく、次は一般消費者がどういうニーズを持っていて、そこにどんな商品が提供できるのかというところに興味がある」という声が聞こえてきました。目まぐるしく変化する生活者のニーズに応えるパートナーに合わせ、三井物産も変わらなければならないタイミングなのだと思いました。三井物産の持っている、その業界内でのスペシャリストとしての機能や人を集約すれば、点ではなく面でお客さまの課題と対峙できるのではないかと考え、社内や関係会社を巻き込みチームをつくり、株式会社ドットミーを立ち上げることになりました。

株式会社ドットミーの特徴は?

ドットミーは、消費者との接点を持ちながらコンセプト開発から販売までを一括して対応することに加えて、スピード感あるブランド開発が特徴です。これまで、商品開発には2年から2年半ほどかかるのが通例でしたが、ドットミーでは半年から9カ月程度で商品を世の中に提供しています。商社でそんなことができるのかと驚かれることも多いのですが、三井物産だからこそ実現できるのです。三井物産には、もともと原料の調達から、製造委託先とのネットワークにいたるまで、D2Cブランドをつくるための機能が全て内包されていました。それらの機能をつなげることで、短い期間で企画から販売までを実現できる体制となっています。

一般的には、ブランド開発はマスに提供する商品の開発に最適化されている場合が多いです。品質の良い商品を大量に生産し、小売での露出や、広告やテレビでの露出を通じて知名度を上げ、多くの人に買っていただくのが基本で、調査や製造ライン、販売チャネルに至るまでそれが前提となっています。そのため、失敗した時のリスクも大きくなります。一方で、ドットミーでは、消費者とのコミュニティをつくりながら小さくスタートすることで、ブランドを立ち上げるコストを大幅に下げています。消費者ニーズを的確にとらえて、熱量のあるコミュニティを最初に小さくつくってから拡大していくので、成功の確度が上がるのです。拡大していくときには、その分野を得意としているパートナーの皆さまの知見を活用していくことができます。

会社を立ち上げる際に直面した難問は?知念 孝祥 ジョナサン

会社を立ち上げる際に直面した難問は?

まず、三井物産独自のブランドを立ち上げることでした。いくらコンセプトや企画を提案したとしても、本当に三井物産に任せられるのか判断してもらえません。自らつくり上げたブランドがあって初めて、それをお客さまに総合提案できるという考えがありました。プロトタイプ(試作品)を完成させることで、パートナーの皆さまの課題、現場の課題を肌で感じ、実際に私たちがモノをつくって売るところを経験しなくてはならない。このプロトタイプを実際に制作して、販売する仕組みをつくる予算を獲得し、社内や関係会社で同じ課題を共有する20名ほどが個々の業務がある中で自発的に集まり、プロトタイプ開発を進めました。

その難問をどう乗り越えたか?

同じ問題意識を共有する、各領域のプロフェッショナルであるメンバーが集まりました。基本的に、原料を調達する人も、マーケッターも、全員が全てのプロセスに参加するように進めました。その上で、「出番型リーダーシップ」と呼んでいるのですが、一人が全てを決めるのではなく、専門家たちがそれぞれ専門領域でリーダーシップを発揮して開発を進めるスタイルをとりました。例えば、メニュー開発のプロフェッショナルが試作品をつくり、それをクリエイティブの専門家や材料の専門家もそれぞれの立場からコメントする。逆にメニュー開発の専門家もそれがどう商品クリエイティブに反映されていくのかを納得のいくまで聞く。三井物産は、自由闊達という価値観を大事にしていますが、プロ同士がオープンに語り合うことで、いい意味での緊張感が常にありました。

さらに、いろいろな人に話を聞いて良いアイデアは取り入れますが、丸くならないことには気を使っていました。プロトタイプの感想をヒアリングする際も、高く評価する人と、評価しない人がいましたが、それは当たり前だと判断し、「ターゲットにささればいい」という方針を明確にして開発を進め、その信念を曲げないようにしました。全員の共感を得るのではなく、もともと設定している“生活者の課題を解決するブランド”だという想いを関係者で共有してブランドを磨いていくことができました。

また、各分野の専門家が、同時並行で開発プロセスを進めることで、約2カ月という短期間でプロトタイプを完成させることに成功。その成果をもって、三井物産としても事業として進めることが正式に決定し、会社設立にこぎつけました。そのプロトタイプを初めてのブランドであるCycle.meとして販売展開しています。

あなたの志は?知念 孝祥 ジョナサン

あなたの志は?

日本発のブランドが世界に広がっているという未来をつくりたいと思っています。それはドットミーという会社がCycle.meというブランドを広げ、世界に出て行くということもありますし、パートナーの皆さまと一緒にブランドを日本でつくり、育て、海外に広げていって、世界で認められるブランドにしたい。学生時代に留学した時、日本のGDPが2位から3位に落ちるタイミングだったので、海外の学生の中で日本に興味を持つ学生がどんどん減り、日本の存在感が低下しているという危機を肌身で感じるという体験をしました。その危機感はいまでも続いています。日本のため、日本の経済のために働きたいという思いがあります。

今後の事業の展望は?

日本のマーケットでは海外の化粧品や消費財があふれていますが、逆に、日本の消費財領域のブランドが海外に進出して成功しているケースはまだまだ少ないのが現状です。しかし、海外の生活者のニーズに応えて、日本の質の高いモノづくりの力を使えば、やり方次第、伝え方次第で、世界で認められるブランドをつくるチャンスがあるのではないか。そのブランドづくりを通じて、日本を盛り上げて、日本の企業がもっと海外で活躍することに貢献していければと考えています。

(2022年12月現在)

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