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Our Stories

[安定供給の基盤をつくる]

営農指導・資材供給を通じ、アフリカ農業の生産性を向上

労働資源の半分以上が農業に投入されているアフリカでは、農業の生産性向上は経済成長のためにも重要です。1960年代以降の急激な人口増加により食料需要も増加する中、主食となる穀物の自給率が低く、人口増加を支え切れないことがアフリカの多くの国で問題となっています。その一方、インフラや流通の未整備により、農家が市場にアクセスできないといった販売面の課題もあります。三井物産は2018年5月に、農産物取引・農業資材販売・日用品の製造・販売等、幅広く事業を展開するコングロマリット企業、ETC Group Ltd.(以下、ETG)に出資・参画しました。ETGはサブサハラ・環インド洋地域を中心に45か国で事業を展開する企業で、東アフリカ地域における肥料と雑豆類※の取扱量はNo.1の実績を誇り、ゴマ貿易においても最大手の一つです。アフリカの地で50年以上にわたり、「農家に寄り添い、共に成長する」という社訓の下、国づくりの根幹である農業分野の成長に、生産地と需要地をつなぐ「物品の売買プラットフォーム」を提供することで貢献しています。当社はETGを通じ、農業資材の安定的な供給、農産物のバリューチェーン構築と付加価値化に貢献することで、地域住民のQOL(Quality of Life)向上に取り組んでいます。

※:大豆・落花生以外の豆類の総称で、インド等南西アジア地域における主要タンパク源の一つ。

約200万戸の農家に農業資材と販売機会を提供

約200万戸の農家に農業資材と販売機会を提供

ETGは、東アフリカ各国を中心に約430か所に倉庫を兼ねたファーム・ゲート(取引拠点)を有し、約200万戸の零細農家との直接的な接点として活用しています。農家が持ち込む作物を買い取る一方、生産に必要な肥料や農薬等を販売する双方向のビジネスモデルを通じ、農家に農業資材を安定供給するとともに、作物の販売機会を提供しています。

集荷した作物はアフリカでの流通・販売のほか、同社が加工することで付加価値を付けてアフリカ域外で販売、アフリカ域外からは肥料原料を輸入、加工して農家に販売しています。その流通を支えるため、ETGはインフラが整備されていないアフリカで、600台超の車両を用いて、主要港と各拠点をつなぐ物流網を自前で構築しており、これがETGの強みにもなっています。ただし、海外から原料を輸入し、商品を海外に輸出するビジネスは、資金回収までに長い時間を要するため、多額の運転資金が必要です。そこで当社はETGの財務体質の強化を最優先に、物流の最適化、過剰在庫を抱えないオペレーションの実現等既存事業の改善や、資金調達の見直し等による財務基盤の整備を支援しています。

農家の収益増が事業成長の鍵

一方で、現地を何度も訪問し、お客さまであり、取引先でもある農家の実態を把握していく中で、彼らの所得が低く、肥料も必要十分な量を購入できていないことが分かりました。収入を増やすことで、農業資材を仕入れ、それによりさらなる増収が生まれ、新たな設備投資につながるという好循環が回っていく。ETGの事業成長にとっても農家の所得向上は絶対条件です。

アフリカの農業生産性が低い原因には、灌漑や農業資材の導入の遅れがあります。ところが、より良い新しい商品や技術を提供しようとしても、長く同じ場所で農業を営んできた人々にはそうした変化を受け入れられないこともあります。納得するまで説明し、彼ら自身に選択してもらう必要がありますが、ETGはこうした対応を50年続けることで信頼関係を構築し、ビジネスを拡大してきました。この取り組みをさらに進めるため、今回、アフリカでも既に実績のあるJICAの農業振興アプローチを活用し、「つくって売る」から「売るためにつくる」への意識改革を促すことにしました。2018年5月にはJICA、ETG、当社の3社間で協力覚書(MOU)を締結し、まずはマラウイを中心に支援を開始しています。このような活動は成果がすぐには見えてこないものですが、長期目線で取り組んでいきます。

複数本部連携で多方面から企業価値向上を支援

私の所属するETGビジネスチームは、当社として先例のない4本部(欧州・中東・アフリカ本部、食料本部、プロジェクト本部、ニュートリション・アグリカルチャー本部)合同のプロジェクトチームで、長期的目線に立ってETGの企業価値向上を支援することを主要ミッションとしています。私はチームが発足した2018年1月から、統括として、ETGに出向中の当社社員や現地専任スタッフと常に連携を取り、各本部間の調整をしつつ、全体最適を見極めながらプロジェクトを推進・支援しています。

プロジェクトを推進するに当たり、私たちが思い悩むのは、「理想」と「現実」のギャップを埋めていくのに、想像以上に時間がかかることです。ETGの創業者である会長は、「アフリカの地で根を張り、ビジネスを展開していくには忍耐が必要だ」と言います。私たちも、腰を据えて取り組む覚悟ですが、日々悪戦苦闘しています。とはいえ、一定の時間軸をもって、ある程度の経済性を担保しながら、ETGと二人三脚でアフリカの地に大きな足跡を残すためにも、今後、商社ならではの総合力をより発揮することで、発電設備等のインフラ整備や販売チャネルの拡大等にも取り組む予定です。

入社以来20数年ビジネスに関わる中で、社会問題に直結する食とそれを支える農が成長しなければ次の産業は生まれないと痛感しています。私たちの仕事は微々たるものかもしれませんが、ETGというプラットフォームを活用して、食と農を育てることでアフリカの持続的成長に貢献していきたいと思っています。