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平成25年(2013年)入社式挨拶

2013年4月1日


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皆さん、入社おめでとうございます。社長の飯島です。

今朝は、前途にそれぞれの思いを巡らせながら社会人第一日目の朝を迎えたことと思います。今から39年前、今日の皆さんと同じように入社式に出席した私も、入社後の世界にさまざまな想像を膨らませていました。

激動の時代

私がこの会社に入社した39年前、1974年は、第一次オイルショックが起きた年です。日本は、この年を節目に「高度成長期」を卒業し、円高やエネルギー価格の上昇といった環境変化のなかで、国際競争力の向上を迫られる時代に突入しました。私が駆け出しの物産マンであった数年間は、日本がこの節目の年を経て迎えた「激動の時代」となりました。

一方、皆さんが入社した今年、2013年から先の世の中がどうなるのかと言えば、私が入社した当時以上の「激動の時代」になる、と感じています。

経済がグローバル化した今日では、ある国で起きた変化や事件が、地球の裏側に思いもよらない事態を、あっという間にもたらします。米国のシェール革命の影響でカタールのガスが余剰となり、その余剰ガスが震災後の日本に輸入されて日本の電力供給を支えたり、Social Networking Service (SNS)が文化や宗教の壁を越えて世界中に普及し、中東やアフリカで長期政権を打倒するツールになったり、といった具合です。変化がボーダーレスに世界中に伝わることで、複雑な変化の連鎖が常態化しています。そして、その変化のスピードが加速している、まさに「激動の時代」です。

このように世界が複雑に激しく変化するなかで、三井物産も変化に応じて業態を進化させなければ、生き残ることはできません。だからこそ、今年の年頭の辞では、変化を捉える機敏さ、Agilityを、社員に求めました。

激動のなかで、次に何が起きるかを予測することは大変難しくなっています。しかしながら、中長期的には、世界経済は拡大し、人々は豊かになる、と確信しています。そして、その過程では、エネルギー、食糧、水をはじめとする生活に不可欠な物資の安定供給や、医療や教育といった基礎的なサービスの向上、そして電力・交通・通信を含むさまざまなインフラの整備など、多様なニーズが生まれ、そのニーズに産業的取り組みで応える、ビジネスチャンスも増えて来ます。また、拡大し豊かになる世界の活力を日本に取り込み、日本で新たな事業を興すことも、日本で生まれ世界で育った三井物産にとり、新たなチャンスとなります。

チャンスを捉え、新たなビジネスを創造するには、社員一人ひとりが変化の予兆を感じ取らねばなりません。今後起こりうるいくつもの事態にイマジネーションを働かせ、予想される事態に準備をする、これが機敏にチャンスを捉えるための要諦です。そのために、新入社員である皆さんも、イマジネーションの発揮と地道な準備が問われるということを、心に刻み込んで下さい。

国創りと次代創り

さて、今日この場で、私から皆さんに申し上げたいことがあります。
それは、皆さんには「国創りを担い、次の時代、次代を創る人」になって欲しい、ということです。

皆さんが入社する、この三井物産という会社は、もともと、1876年に益田孝が、殖産興業という当時の社会のニーズに応え、日本を欧米に伍する産業・貿易立国に育てたいという、「国創り」「次代創り」への強い想いから創業した会社です。

益田孝の遺した、「眼前の利に迷い、永遠の利を忘れるごときことなく、遠大な希望を抱かれること望む」という言葉が、その想いを良く表していると思います。

武士の出身であった益田孝は、単に利益の追求に走るのではなく、いわば世のため、人のためという「士魂」を掲げ、ビジネスに必要なプラグマティックな「商才」を発揮して「国創り」に貢献したわけです。この「士魂商才」の精神こそが三井物産のDNAであり、その後も、三井物産は、戦前の軽工業の振興、戦後の高度成長期における原材料の輸入と製品の輸出、そしてエネルギー資源の確保といった形で、それぞれの時代のニーズに応える仕事に、「挑戦と創造」を繰り返してきました。

アフリカの国の例を挙げましょう。
三井物産は、モザンビークを全社重点地域の一つに指定して、そこで世界最大級のガス田開発に取り組んでいます。資源開発に今まで以上に力を注ぐために、モザンビークを重点地域に指定したのだろうと、思われることも多いのですが、われわれ三井物産の想いは、さらにその先にあります。

資源開発が進めば、当然、その保有国であるモザンビークに利益をもたらしますが、資源から得た利益を、製造業をはじめとする産業の育成や、産業基盤の整備に振り向けたい、という現地のニーズがあります。

当社が、海外で仕事をするときには、常に、その国が真に豊かになるための力に成りたいという発想でアプローチしてきました。モザンビークでも、現地のニーズに少しでも応えられるよう、ガス田開発に加え、石炭火力発電や港湾の開発、チタン鉱石の輸出やミャンマー米の輸入など、三井物産の総合力を発揮して、国の発展に微力でも貢献できる意義ある仕事に取り組んで行きます。

現場主義

ここで重要なことが二つあります。一つ目は、必ず「現場に足を運ぶ」ということです。

一昨年、私は三十年振りにモザンビークを再訪しましたが、この国は目覚ましい発展を遂げていました。街を歩いている人の服装もずいぶん綺麗になり、立派な車も走っている、食べ物も豊かになっている、三十年前の印象が残っていた私は、正直なところ少々驚きました。しかし、2012年の一人当たりGDPは652米ドルで世界185か国中164位に留まり、現地で客先や政府要人と面談してみると、さまざまな産業を興したいと、熱く語られます。このように、数字のデータや現場で見聞した情報を総合して、実態を深掘りして理解しないと、その国のニーズを人よりも早く的確に捉えることはできません。

必ず「現場」に足を運び、実際に自らの目で見て、現実を感じ取る、想像力を高めて、来たるべき変化を予兆する、「三井物産が、ビジネスを通じて、何が出来るのか?」深く考える、そして社内外の仲間が協力しあい、衆知を集めて準備して行動する。この繰り返しこそが、いずれは「国を創り、次代を創る」大きな仕事につながります。

心技のバランスのとれた人材

そして、もう一つ大事なことは、国創り・次代創りに貢献するためには、倫理観や向上心、謙虚さや感謝の気持ち、そして目の前の地道な仕事にも責任感と誠実さを持って、全力で努力する姿勢が必要だということです。そうした心技双方のバランスのとれた人が、結局は、周囲からの信頼と評価を得て、縦横無尽に活躍することができるのです。

皆さんの前途には、世界の激動に呼応したチャンスが広がっています。そのチャンスを機敏に捉え、日本や世界を舞台に、「国と次代の創造」に挑戦してほしいと思います。そのためには、心技のバランスのとれた人間であること、そして、「現場に足を運び」「目の前の仕事に全力で取り組む」ことが必要です。

三井物産は、皆さんが、国創りを担い、次代を創る人へと育っていけるよう、人材育成に一生懸命取り組みます。それが「人の三井」の意味するところです。皆さんに、自己研鑽と自己実現の場を提供することを約束しますので、切磋琢磨して頑張ってください。期待しています。

最後に、皆さんが心身共に健康でこれからの三井物産での生活が充実したものとなりますよう祈念して、私の挨拶とします。本日はおめでとうございます。

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