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2013年「年頭の辞」

2013年1月4日


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三井物産 社長 飯島彰己による全役職員向け「2013年 年頭の辞」を下記の通りお知らせします。

皆さん、明けましておめでとうございます。
新年の門出に当たり謹んでご挨拶を申し上げます。

環境認識

昨年は、欧州の財政・金融危機が実体経済に影響を与え、中国を含む新興国の成長も鈍化するなど、厳しい事業環境が続きました。
そうした中で、世界の主要各国で選挙が行われ、米国ではオバマ大統領が再スタートを切る一方で、日本では再び政権が交代しました。中国や、フランス、ロシア、韓国など、各国で政権の担い手が新たに決まり、世界は大きな節目を迎えているように思います。それぞれの新政権には、危機に対応した従来の景気刺激策に加えて、各種の規制改革や経済連携の推進、そして新たな産業の創出につながる構造的な政策の展開が期待されます。
また、中長期的な視点から世界を捉えれば、人口の増加に伴い経済は拡大し、人々はより豊かになっていく、この方向性は大きなトレンドとして間違いないと思います。もちろん、成長を実現するには、エネルギー、食糧、水をはじめとする生活に不可欠な物資の安定供給や、新興国における医療や教育といった基礎的なサービスの向上、そして電力、交通、通信を含むさまざまなインフラの整備など、多様なニーズが満たされていくことが必要です。こうしたニーズには、産業的取り組みで応える余地が大きく、将来に向けたチャンスが芽生えていると思います。

「機敏」に変化する年に ~進化の加速~

このようなチャンスを捉え、新たなビジネスを創出していくためには、私たち自身が現場に足を運びポジティブなことにもネガティブなことにも感度を高めてイマジネーションを働かせ機敏な判断、機敏な行動を心掛けていくことが何より大切です。
昨年の「年頭の辞」で、私は、現状維持は破滅であり、「絶え間ない進化」を続ける必要があると強調しました。
外部環境の変化が激しい時代に、居心地のよい過去の成功体験にとらわれていては、新たな価値を生み出すことはできず、会社も、個人も成長を期待できません。ビジネスチャンスを活かすためには、機敏さと柔軟さが不可欠であり、変化しないことはもちろん、緩慢な変化も、場合によってはリスクになるという危機感が必要です。
変化を捉え、ビジネスや業態の進化を加速させる決意を、本日、皆さんと共に新たにしたいと思います。

変わらぬ基軸 ~士魂商才~

その一方で、変えてはいけないものもあります。それは、常に社会のニーズに応える仕事に挑戦し、新たな価値を創造していこうとする姿勢です。
歴史をさかのぼりますと、1876年に、殖産興業という時代のニーズに応え、日本を産業・貿易立国に発展させたいという強い思いの下、旧三井物産は設立されました。「眼前の利に迷い、永遠の利を忘れるごときことなく、遠大な希望を抱かれること望む」この内訓は、旧三井物産を創業した益田孝の思いをよく表していると思います。
益田孝が、単にマーチャントとして利益の追求に走るのではなく、国や社会の発展への思いを抱いた背景には、彼が武士の出身であったことが関係しているのではないかと、私は思っています。世のため人のためといった武士的精神を空論に終わらせず、現実に根差した商才を発揮して、時代のニーズに応える仕事を創造していったのだと思います。
まさに士魂商才です。私たちも、お客さまや社会に役立つ「良い仕事」という士魂と、「良い仕事」の実現力ともいうべき商才の双方を大切にしていきたいと思います。
事業環境の変化が常態化している今日、将来を予見することは容易ではありませんが、変化に対する感度を上げて時代のニーズを捉え、想像力を働かせて機敏に行動していくこと、これも実現力の一つだと思います。

総合力の発揮に向けて

かつて、個々の営業現場が最大の成果を追求することが当社全体の成長につながる時代もありましたが、案件の大型化が進むとともに、世の中のニーズが多様化し、それぞれのニーズが密接に関わり合う今日においては、部分最適の追求では当社の成長戦略を描くことはできません。
例えば、海外で資源やエネルギーに関わる案件を推進していく際には、関連する化学事業や発電事業、そして人々の生活に必要な食糧や医療関連事業など、多様な事業を、三井物産グループの総力を挙げて展開することが求められます。
そのためには、それぞれの担当分野の枠の中だけでビジネスを捉えるのではなく、全体最適や相互連携の意識を持ち、ビジネスを有機的に組み合わせて総合力を発揮していくことが必要です。
元来、当社の経営スタイルは、社員一人ひとりが個々の現場でリーダーシップを発揮する全員参加の分散型ですが、会社を個々のビジネスの単なる集合体とせず、総合力による相乗効果を発揮し、統合された一つの会社とすることが大切です。そのために、組織を越えて衆知を集め、絆を強めることができるリーダーが求められることも意識してください。

結び

社会の多様なニーズに応えるために、総合力を発揮してさまざまなビジネスに取り組むとともに、常にニーズの変化を先取りして業態を進化させていく、この「総合力と進化のビジネスモデル」を経営として、一層推し進めていきます。
4月から新たな組織体制とすることを決めたのも、その一環です。変化に対するしなやかな対応力は当社の競争力の源泉であり、今後も事業環境の変化を踏まえ、必要な見直しを行っていきます。
そして、「総合力と進化のビジネスモデル」を支えるのは、何よりも人です。知識や専門性に加え、倫理観や向上心、謙虚さや感謝の気持ち、そして努力する姿勢を併せ持つこと、すなわち心技双方のバランスが大切です。

事業環境の変化に対する緊張感と仕事に対する規律を保ち、機敏に、そして前向きにビジネスチャンスをつかみ、日本経済の活性化と、「拡大し豊かになる世界」の実現に向けて、挑戦と創造を続けていきたいと思います。

最後に、皆さんと皆さんのご家族が、健康で、明るく、希望に満ちた一年を送ることができますよう祈念して、私の年頭の挨拶と致します。