
中学2年生の時、ワンダーフォーゲル部に入りました。「ワンダーフォーゲル(Wandervogel)」は、ドイツ語で「わたり鳥」という意味。仲間とともに山登りをしたり、海に行ったり、まるでわたり鳥のように自然の中を巡るクラブ活動です。もともとおとなしい子どもだった私が、このクラブに入ることで変わりました。自然と人、そして、仲間。ワンダーフォーゲル部での活動が、自分と森林の距離を近いものにしてくれたと言っていいでしょう。

活動を始めてしばらくは、「木づかい」と言ってもなかなか興味を持ってもらえませんでした。日本の森林が、木を「育てる」から「使う」時代に入っていることがあまり知られていなかったこともあったでしょう。しかし、近年では、国のえらい人たちはもちろん、産業界、教育界など、あらゆる分野の人が「木づかい」の大切さに気づいてくれるようになりました。
今は、小学生や中学生など、さまざまな世代を対象とした「木づかいセミナー」なども実施しています。昨年(2015年)にも高校生向けのセミナーを福島県で開催しましたが、今まで知らなかった森林の話や実際に木とふれ合う体験を通じて、感性が柔らかくみがかれ、活き活きとした表情に変わっていくようすを見ていると本当にうれしくなります。参加してくれた高校生の中には、地元の森林組合へ就職した人や、もっと深く木材について学びたいと大学へ進学したきっかけになった子どももいました。

森林の樹木は苗木を植えてから約10年後から間伐を繰り返し、スギならば約50年で成長した木を伐採する主伐を行います。家の梁として使えるような太い木材にするには、もっと長く育てなくてはいけないでしょう。ヒノキの場合は、人の平均寿命とだいたい同じです。こうした壮大な時間の流れの中で、森は営みを続けているわけです。つまり、「木づかい」は今のくらしを豊かにすることはもちろん、50年後、100年後の環境や生活を考え、守っていくものでもあるのです。みなさんには、まず50年後の森のようすをイメージしながら、自分のできるはんいで木を植えてほしいと思います。
みなさんも知っている通り、人偏に木と書いて「休む」という字になります。人と木は、もともと仲がよいのです。だから、森や木の大切さを知ったうえで、もっともっと自然と身近にふれ合ってください。
