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CEO Message

代表取締役社長 安永 竜夫 代表取締役社長 安永 竜夫

新型コロナウイルスの影響で、世界経済の
動向だけでなく、世界中の消費者の行動様式が
根本的に変わってくることが予想されます。
未曾有の激動の時代に、今まで培ってきた
世界中のネットワーク、時代に合わせて柔軟に
変化してきた商品・地域戦略とビジネスモデル、
社内外で切磋琢磨してきたグローバルな人材を
総動員し今後の成長に向けて強い決意を持って
コロナ禍を乗り越え、さらなる飛躍の礎を
築いていくことをお約束します。

代表取締役社長 安永 竜夫

環境認識 —新型コロナウイルスを奇貨として

2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大によって全国の都道府県で緊急事態宣言が発令されるに至り、いったんは落ち着いたものの、再び感染は拡大傾向にあります。感染対策と経済活動の両立が求められる中、経済はいまだ回復の途上です。一方で世界に目を向けると、とりわけ新興国を中心に依然感染が拡大中で、今後第二波、第三波が世界中を襲うシナリオも議論されており、まったく予断を許さない状況にあります。

当社ではまず、全世界で活躍しているグローバル・グループの全社員、ならびに家族の安全・健康を第一に経営にあたっています。社員の安全や健康が、当社のあらゆる活動の基礎であり、成長軌道への早期回復には不可欠です。国によっては、衛生面や医療事情に鑑みて、社員や家族を退避させる措置も講じています。

次に、各事業領域では、一つひとつの商売を維持し、ビジネスパートナーやお客様と良好な関係を維持することが重要だと考えています。当社にとってお客様、取引先、そしてパートナー企業との関係は長年かけて培ってきた大切な資産であり、競争力・差別化の源泉です。厳しい事業環境の中、どうすれば個々の商売を維持し、かつ拡大させることができるのか、オンラインによる会談などを通じて関係者とできるだけ多くコミュニケーションを取りながら進めるよう現場へ指示し、私も主導するように心掛けています。

「コロナとの共生」とも言われる厳しい環境の中で、何を変え、何を守るのか。ニューノーマルの新たなステージにおいて、あらゆる面でチャレンジし、Resilience、すなわち、耐性を高めていきたいと考えています。今までも商社不要論に代表されるように、ビジネスモデルが陳腐化してきた時にこそ、当社の総合力を発揮し、新しい局面を切り拓いてきた自負があります。さまざまなビジネスを複数持つ当社の強みを活かすべく、縦割り組織を超えた横連携による新しい仕事や価値を追求していくことを伝えるために、最近社内外で「三井物産は横」と発言する機会が増えています。当社の事業は、グローバルに見れば一部を除いて決して大きいわけではなく、世界を舞台に戦っていくには、横の連携で新たな価値を生み出す必要があると考えているからです。

2020年5月には新本社への移転を完了し、約5年半ぶりに大手町に戻ってきましたが、本社移転に向けては、プロジェクトチームを立ち上げ、オフィスの目的や新しい働き方、そしてそれらを実現するために必要な制度や設計、装備について徹底的に議論と検討を重ねながら、準備を進めてきました。私たちは、オフィスを、多様な「個」が集まり知的な化学反応を起こし新たなビジネスを作り上げる場と定義しています。部門ごとの目標達成はもちろんですが、部門を超えた協業を促進し、新しい仕事を創出する、そして企業価値向上を継続するというサイクルの確立を目指していきます。

また、ペーパーレス化のほか、新しい働き方の実現に向けたデジタルツールの導入など、本社移転を契機とした一連の準備は、新型コロナウイルスの感染拡大によって余儀なくされた在宅勤務への移行を期せずしてスムーズにするなど、まさに感染対策をしながら経済活動を続けていくというニューノーマルへの適応に役立っています。それぞれの組織で一人ひとりの業務プロセスを見直し、それぞれのビジネスや職場にあったフィジカルとリモートの最適な組み合わせを追求していくこととなります。

デジタルを活用した取り組みについては、守りの面から業務プロセスの改善・効率化を図ると同時に、新たなビジネスの創出に取り組んでいきます。e–コマースはもちろんですが、設備の予兆管理や遠隔診療のように非接触型のさまざまなビジネスが活発化しています。新型コロナウイルス感染拡大前から、デジタルトランスフォーメーション(DX)が当社成長の源泉であり、私たちが向かうべき方向であると考えたからこそ、業界の中でも一早くCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)*を据え、取り組みを進めてきました。次の三井物産の収益の柱にするべく、デジタルを活用した新事業に積極的に挑戦していきます。

現CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)

前中期経営計画 —振り返り

前中期経営計画(以下、前中経)の定性的な進捗と成果を振り返ると、重点施策としていた「強固な収益基盤づくりと既存事業の徹底強化」、「新たな成長分野の確立」では、金属資源・エネルギー分野での収益基盤の拡大と 機械・インフラ、生活産業を中心とした非資源分野の強化を達成しました。また、焦点を当てた「環境と健康」では、LNG事業の進展やヘルスケア事業の基盤を拡大しました。「キャッシュ・フロー・アロケーション」の枠組みを活用し、株主還元を含む機動的な資金配分の実行や、投資規律の厳格化を進めるなど、キャッシュ・フロー経営が一層深化しました。

イノベーション機能についても、米国と日本を拠点としたMoon Creative Lab社を設立し、取引先・パートナーの声・アイデアや私たちの気付きを基に、新たなビジネスモデルを考え、それを自ら具現化することを目指しています。また、採用地を問わない次世代リーダーの創出を含め、グローバルベースでの活用を強力に推進するとともに、取締役会の実効性含めたガバナンスも強化しました。

一方で、前中経からの継続課題として明確になった点として、まず現在保有する事業の一層の収益性の向上が必要という思いを強くしています。優良資産の積み上げも重要ですが、それ以前に一つひとつの案件の収益性を徹底的に強化していく必要があります。また、当社の強みが発揮できる成長領域へ経営資源を集中させ、次の収益の柱を確立することも必要です。前中経ではモビリティ、ヘルスケア、ニュートリション・アグリカルチャー、リテール・サービスの4つを成長分野に掲げましたが、今後はそれをさらに絞り込み、メリハリをつけた活動を推進する体制を確立したいと思います。リスク管理、コスト削減を通じた下方耐性強化に加え、今後、社会や産業の構造変化は一層加速すると予想する中、デジタル化や脱炭素化といった変化を機会として捉え、成長を加速させていきます。

社会や産業の構造変化が一層変化する中、
デジタル化や脱炭素化といった変化を
機会として捉え、成長を加速させていきます。

中期経営計画 2023 —変革と成長

新型コロナウイルス感染拡大で先行きが不透明な中、当社は「中期経営計画2023—変革と成長—」(以下、本中経)を2020年5月1日に発表しました。新型コロナウイルス収束の時期はもとより、経済活動が再開してもどの程度の回復となるのか、今もなお、定量面の影響を見通すことは非常に困難です。そもそも本中経を5月に公表すべきか社内でも何度も議論を交わしましたが、最終的には、一定の条件の下であっても三井物産が向かう方向性を社内外に示すことが重要であり、不確かな時期だからこそ社員にとっても羅針盤となり得る本中経を公表するべきだ、との結論に至りました。私たちにはお客様やビジネスパートナー、株主の皆様など、多数のステークホルダーがいますが、そういった方々に対し、私たちが考えていること、そして進むべき方向をしっかりと示し、次なる対話につなげていきたいと思います。定量計画については、適宜見直しを行い公表していく予定です。これまでと同じように高い透明性を持って経営していきます。

前中経からの継続課題も踏まえて策定した本中経は、そのテーマに「変革と成長」を掲げました。新型コロナウイルスと共生する世界がどうなるのかは不透明ですが、中長期的に当社が目指す「変革と成長」について一層加速させていくことが求められても、その方向性は揺るぎないと考えています。

2023年3月期の当期利益は4,000億円を目標としており、2020年3月期の3,915億円から比べると大幅な増加ではありませんが、非資源分野の目標である2,400億円は過去最高であり、資源分野の1,700億円を超える計画となっています。新型コロナウイルスの影響で商品価格が右肩上がりで伸びていく姿を描けない中、資源ビジネスのカウンターバランスとして非資源ビジネスの基盤を着実に強化していきます。

資源ビジネスは、特に短中期的には全世界的な需要減少の懸念から鉄鉱石・原料炭価格を保守的に設定しており、また2020年初頭から急落した原油・ガス価格は、元の水準に回復するのに時間を要すると見込んでいるため、金属資源・エネルギーの厳しい事業環境はこの3年間続く見通しです。ただし、この間も、強い分野をさらに強くする方針に変わりはなく、既存事業は徹底的なコスト削減を進めて競争力を維持しつつ、豪州鉄鉱石事業の新規鉱区開発やモザンビークやロシア北極圏でのLNGプロジェクトを推進していきます。

一方で、非資源事業はこの3年間でしっかり成長していくと考えています。特にICT中核企業の成長、流通事業のデジタル化やe–コマース強化、化学品の市況回復と物流商売復調、IPPやFPSOの立ち上がりなどが貢献する見込みです。

本中経では、まず基盤事業の徹底強化を図ります。過去にはともすれば投資の実行に焦点が当たりがちでしたが、資本効率の向上への意識付けのため社内指標としてROICを導入し、予実管理を徹底させた上でROE向上を目指します。業界によっては収益性向上のために事業再編・再構築などを通じて競争力強化の取り組みを加速していきます。

また、今後の当社の収益の柱となる領域をStrategic Focusとして「エネルギーソリューション」「ヘルスケア・ニュートリション」「マーケット・アジア」の3つを特定しました。これらは過年度の取り組みを通じて当社総合力が活かせると確信した領域です。エネルギーソリューションでは、LNG開発・再生可能エネルギーを中心としたプラットフォームを軸に、スマートエネルギーサービスや気候変動対応に資する事業を進めます。ヘルスケア・ニュートリションでは、IHH Healthcare社を中心としたプラットフォームを軸に、医療データ・統合型ファシリティマネジメントなどに関わる事業の成長を加速させていきます。加えて、アジアを中心に、消費者へのパワーシフトとデジタル化を捉え、成長プラットフォームの構築やビジネスモデルの進化に取り組みます。

「変革と成長」の持続的な成長を支える土台である「サステナビリティ経営/ESGの進化」の中でも「気候変動」については、今般、総合商社として初めて2050年の「あり姿」として、Net-Zero Emissionsを掲げました。2030年はその「あり姿」に向けた道筋として、2020年比温室効果ガス(GHG)インパクトの半減を目指します。この実現に向け、資源・発電ポートフォリオ良質化による当社排出量削減を推進する「Reduction」、石炭火力からLNGなどへの燃料転換を促進する「Transition」、そして、エネルギーソリューション領域をはじめとする気候変動対応を機会とする事業を促進し、GHGインパクトの削減に貢献する「Opportunity」の3つの取り組みを進めます。またGHGを多く排出する事業の中長期的なレジリエンスを高めるために社内カーボンプライシング制度を導入しました。

最後に、本中経期間中の株主還元として、1株当たり80円を下限配当として設定しました。これは2020年3月期実績の水準と変わりませんが、新型コロナウイルスの感染が拡大している中でも安定的に稼げる4,000億円の基礎営業キャッシュ・フローをベースに計算したもので、本中経期間中の下限としてお約束します。経営としては、成長投資と追加還元の2つを睨みながら、引き続き柔軟に資金を配分していきます。

当社の存在意義は、新しい事業を創り、
産業を興し、
人を育て、事業・ビジネスを
生み出すことにあります。

最後に —三井物産のMission、Vision、Values

当社は、本中経の公表と同時に経営理念であるMission、Vision、Values(MVV)の改定も発表しました。新MVVは16年ぶりの改定となりますが、この間に事業環境が大きく変化していることに加え、人材の多様化もさらに進み、仕事の舞台はよりグローバルへ、また仕事の現場は関係会社へと広がりました。新MVVは旧MVVの根幹となる精神を大切にしつつ、変化する時代環境を踏まえ再定義したものです。社員の一人ひとりが当社のDNAである「挑戦と創造」を主体的に続け、ステークホルダーの皆様と社会の期待に応えていくという期待が込められています。

本中経の公表、新社屋への移転、新MVVの改定を契機に、今後三井物産をどんな会社にしていきたいか、と自問自答しますが、やはり答えは当社の社名である「三井物産」に行きつくと思います。当社は物産であり商社や商事という名前は付いていません。物産という名前は、旧三井物産*の初代社長の益田孝が「物を産む会社」として付けたものですが、当社の存在意義は、新しい事業を創り、産業を興し、人を育て、事業・ビジネスを生み出すことにあります。

新型コロナウイルスによって先が読めない世の中になったからこそ、この機会に私たちの使命、価値観、目指すところを改めて認識し、当社の原点にもう一度立ち返り、「変革と成長」を推し進めていきたいと思います。

法的には旧三井物産と現在の三井物産に継続性はなく、まったく別個の企業体です。

2020年8月

代表取締役社長

安永 竜夫