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CEO Message

複数の事業領域の力を結集できる
当社だからこそ、
この変化の激しい世界において、
新規領域でも既存領域でも、
新しいビジネスの芽を見つけ出し、
育て、成長させることができる。
このサイクルをもって、
三井物産はさらに飛躍する

代表取締役社長安永 竜夫

CEO Message 代表取締役社長 安永 竜夫

中経2年目を終えて

中期経営計画(以下、「中経」)2年目となる2019年3月期決算では、まず強固な収益基盤の強化という目標に沿って、金属資源では生産量維持を目的とした新規開発の決定を行い、エネルギーではAWE社買収によるオペレーターシップ獲得を具体化させました。また、機械・インフラでは需要が伸長しているFPSOのフリート拡充と、Penske Truck Leasing社を中心とするモビリティの取り組みを進めました。これら、強い事業をさらに強くする施策を実行することを通じて、基礎営業キャッシュ・フローのレベルアップとともに安定感を向上させました。

 また、成長分野の旗艦事業であるアジア最大の民間病院グループIHH Healthcare社の株式を追加取得して筆頭株主となり、大きな潜在成長力を持つヘルスケア事業の取り組みを主体的に進めるプラットフォームを確立しました。さらに、長年の課題であったブラジルMultigrain社からの完全撤退を完了することで、生活産業を中心に、経営資源をより攻めに投入することができるようになり、非資源分野の大幅な収益改善が進んでいます。

 私は社長就任以来、強い資源ビジネスをさらに強くする一方で、そのカウンターバランスとしての非資源の強化を経営計画の中心に据えてきましたが、その取り組みは着実に実を結んでいます。

 投資の進捗については、中経公表時に、3年間の投資キャッシュ・フローは、中核分野65%、成長分野35%を配分方針としましたが、IHH Healthcare社の持分買い増しのための大型投資が実行されたことから、現状では一部重複ありますが中核分野が58%、成長分野45%という比率になっています。

 2019年3月期の業績に関しては、化学品や金属資源などにおいて、不測の事故やマクロ経済の変化に起因するプロジェクトコストの上昇などに晒されたものの、それら一過性要因を除くと全体として予定通りの進捗であり、正に筋肉質の事業ポートフォリオに変貌してきていると言えます。

マテリアリティの見直しについて

中経最終年度である2020年3月期計画の説明に入る前に、当社事業に影響を与えるメガトレンドが刻々と変化するとともに、サステナビリティの重要性が一段と高まる中で、当社ではこのたび、マテリアリティの見直しを行ったことについて述べたいと思います。今回の見直しにおいては、幅広いステークホルダーの視点と、事業インパクトの視点の双方を考慮するとともに、社内外での積極的な議論を実施し、取締役会での承認を経て、5つの項目を新たなマテリアリティとして特定しました。

 新マテリアリティでも、「環境と調和する社会をつくる」を掲げていますが、2018年の統合報告書でも述べさせていただいた通り、気候変動を含む地球環境を取り巻く問題が、社会と当社の持続可能な成長にとってリスクとなり得る一方で、温室効果ガス排出削減に向けた国際的な潮流が、当社に新たなビジネス機会をもたらすことを強く認識しています。例えば中国における石炭から環境負荷の比較的低いガスや再生可能エネルギーへの急速なシフトがその代表例と言えますが、この流れは世界的に不可逆なものと考えます。

 他方、「安定供給の基盤をつくる」と「豊かな暮らしをつくる」も新マテリアリティで掲げており、事業を通じて取り組むべき経営課題として位置付けています。人口増や新興国での経済発展を背景とした資源や食料需要の増加とインフラ需要の拡大、そして生活水準の高度化に伴う嗜好の変化や、疾病構造の変化に伴う医療ニーズ増大などの流れは、すでに世界的な課題となっています。これらに取り組むには、各地域の特性を踏まえてビジネスフロンティアを切り拓くような息の長い地道な取り組みが求められ、それらを通じた「国創り」への貢献も当社にとって重要な使命なのです。

 世界のさまざまな国や地域の経済・社会の発展と、気候変動をはじめとする地球規模の課題の解決の両方に、グローバルな幅広い事業活動を通じて貢献し、長期的な視点で双方をバランスよく追求することこそが、当社にとって持続可能な成長戦略となるものと引き続き考えています。

 また、新マテリアリティに込められた思いについてもお伝えしたいと思います。今回のマテリアリティでは、5つの項目全てにおいて「つくる」という言葉を使いました。これは現中経で掲げた当社が目指す在り姿「自らが新たなビジネスを創り、育て、発展させる集団」を体現すること、すなわち当社がHands-Onで、主体的にビジネスと新たな価値を創造していくことを意識して掲げたものです。

 当社の社名にある「物産」と言う名前は、かつて旧三井物産*初代社長の益田孝が「物を産む会社」として付けたものですが、当社の本業、すなわち存在意義は、新しい事業を創り、産業を興し、人を育て、新しいビジネスを生み出すことにあります。世界中の多くのパートナーや顧客からなる当社のネットワークを用い、複数の事業領域の力を結集できる当社だからこそ、この変化の激しい世界において、時には事業領域の境界に潜む、新しいビジネスの芽を見つけ出し育てていくことができる、そして既存事業においても、そこに新たな価値を見つけてさらに成長させることができるという点をここで強調したいと思います。

法的には、旧三井物産と現在の三井物産に継続性はなく、まったく別個の企業体です。

新マテリアリティ

  • 安定供給の基盤をつくる

    安定供給の基盤をつくる 社会の発展に不可欠な資源、素材、食料、製品などの持続可能な安定供給を実現。

  • 豊かな暮らしをつくる

    豊かな暮らしをつくる 人々の生活向上や地域産業の発展に貢献し、グローバルに持続可能な社会づくりを実現。

  • 環境と調和する社会をつくる

    環境と調和する社会をつくる 気候変動や水資源問題、資源循環への対応を促進。

  • 新たな価値を生む人をつくる

    新たな価値を生む人をつくる 多様な個を尊重し、主体性を持って新たな価値やイノベーションを生む人材を育成。

  • インテグリティのある組織をつくる

    インテグリティのある組織をつくる 社会から信頼される企業としてガバナンス・コンプライアンスの強化。

「環境と健康」、そして伸びゆくアジアの需要を取り込む

現中経における過去2年間の取り組みを通じて見えてきたものを改めて検証した結果、世界経済が不透明さを増す時代においても、着実かつ高い成長が見込まれるとともに、当社の強みである総合力を発揮して新たな価値をつくることができる領域として、「環境と健康」が最も注目すべき分野であるという強い確信を得るに至りました。

 当社では、次の収益の柱として確立すべく、現中経において4つの成長分野を定め、車体軽量化や電動化を中心とした「モビリティ」や、病院事業や未病などの「ヘルスケア」といった社会ニーズが高い分野への取り組みを従来から進めてきました。4つの成長分野の枠組み自体には変更はありませんが、2020年3月期事業計画においては、「環境と健康」を中核に据え、その基盤強化と周辺事業の拡大・横展開に注力します。

 「環境」では、気候変動への対応が世界的なテーマとなる中で、より環境負荷の低いエネルギーであるLNGのアジアを中心とした需要増加や、モビリティ分野での電動化・共有化の動きは、今後ますます加速すると考えています。

 また、「健康」では、特にアジアにおける中間層がますます拡大する中、生活水準の向上による慢性疾患の増加に対応する医療サービスの提供や、高品質な食材と医薬品の供給が、人々の生活向上や地域産業の発展のために必須の課題となりつつあります。

 「環境と健康」は裾野の広い事業領域でもあり、単独の営業本部の取り組みにとどまらず、さまざまなアイディアや技術、システムを持ち寄る重層的なアプローチが求められます。当社が得意とする総合力、すなわち異なる領域の組み合わせによって新たな価値を「つくる」取り組みを徹底的に追求することで、さらに企業価値を高めていきます。

 また、環境と健康以外の全てのセグメントにおいても、徹底的な既存事業の強化に引き続き取り組み、既存アセットの収益性向上と戦略的リサイクルを通じたポートフォリオの良質化を推進していきます。

2020年3月期計画について

中経最終年度となる2020年3月期の計画は、当期利益4,500億円、基礎営業キャッシュ・フロー6,400億円を目標としました。これは中経公表時における最終年度の目標を、それぞれ100億円上回る水準です。また、ROEも過去2年間継続的に10%を上回っており、2020年3月期も同様に10%以上を目指します。これらを達成するための、2020年3月期の主要な取り組みについて説明します。

 まず、エネルギー関連では、2019年5月に第1系列が稼働を開始した米国Cameron LNGの第2、第3系列の早期確実な立ち上げに向けた取り組み、2019年6月に最終投資判断を行ったモザンビークLNGの推進、イタリアTempa Rossa油田の生産開始、豪州Greater Enfield油田の立ち上げも着実に進めます。

 機械・インフラでは、建設中の新規大型発電事業の完工を予定通り推進するほか、米国のForeFront Power社による分散電源・サービス型事業など次世代電力領域からの収益貢献を実現させるとともに、FPSO事業では、引き続きさらなるフリート拡充を進めます。

 化学品では、米国ターミナル事業であるIntercontinental Terminals Company社の火災事故後の操業回復をしっかりと進める一方、ニュートリション領域では、メチオニンに加え、ミネラルや酵素といったスペシャリティ製品も含めた総合ソリューションの提供を強化します。

 ヘルスケアでは、IHH Healthcare社の持分買い増しにより筆頭株主となったことを契機に、当社総合力を発揮して、アジアにおける病院および病院周辺事業の収益強化を進めるとともに、PHCホールディングス(株)の事業拡大を通じたValue-upを進めます。

 既存事業の徹底強化に加えて、これら案件の着実な立ち上げや収益力の強化に万全を期すことで、2020年3月期の事業計画を達成していきます。 

事業資産群とその収益貢献・キャッシュ創出の開始時期

事業資産群とその収益貢献・キャッシュ創出の開始時期

Capital Allocation

当社の長期的な取り組みを理解し支えて頂いている株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に対して、安定配当を軸に還元をもってしっかりと報いることは大切と考えています。一方で、継続的な成長を実現することを通じて貢献することも、経営における重要な責務であることは論を俟ちません。従って、株主還元と成長に必要な投資、さらにはそれらを支える強固な財務基盤の維持をバランスよく追求することで、企業体としての使命である企業価値の向上を実現していきたいと考えています。

 申し上げるまでもなく、資産効率の継続的な向上は経営の重要な課題であり、資本コストを賄えないような低効率な事業や、当社の機能発揮による価値向上が難しくなった事業は、リサイクルを進めるとともに、投資規律の継続した徹底と既存事業の価値向上を貪欲に追求していきます。

 さらには、Capital Allocationにおいては、Human Capital、すなわち人的資本も限りある重要な経営資源です。当社では、主体性を持った多様なプロ人材が世界各地で活躍しており、バランスシートに表れない当社最大の資産ですが、その貴重な経営資源を、どのように獲得し、鍛えて、適所に配置するかという課題は、資金配分と並んで経営の最重要テーマです。

 当社では、コーポレート人材を営業現場へ大胆にシフトすることで、「強くて軽い鎧」への変革を進めています。また、競争条件の平準化である「Level Playing Fieldの整備」のコンセプトの下、グローバルベースでの人材活用を加速、海外で選抜された幹部候補を育成するChange Leader Programも導入しており、人材の強化とともに人材の適切な配置に今後も徹底的に取り組むことで、グループ全体での人的資本のさらなる強化に取り組んでいきます。

Capital Allocation

最後に

現中経を公表した際に、「多様なプロ人材が、当社グループの総合力とネットワークを駆使し、主体的な事業創出に取り組み、新たな価値を持続的に創造する」という当社の目指す在り姿を示しました。三井物産の強みであるネットワークを駆使することで、成長の機会を貪欲に見つけ出し、新たなビジネスを創り、その価値を向上させていくというサイクルを通じて、中経最終年度である2020年3月期の事業計画を着実に達成するとともに、その先の未来の三井物産の持続的成長に向けて、全力で経営にあたる所存です。株主や投資家をはじめとするステークホルダーの皆様と、今後もしっかりとエンゲージメントをさせていただくことを通じて、ご意見を経営に活かすとともに、当社経営に対する理解を深めていただきたいと考えています。引き続きご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2019年7月

代表取締役社長

安永 竜夫

統合報告書 2019

参考としたガイドライン

  • GRI(Global Reporting Initiative)「サステナビリティ・レポーティング・スタンダード」
  • 環境省「環境会計ガイドライン2005年版」
  • ISO26000(「社会的責任に関する手引」)
  • IIRC(The International Integrated Reporting Council)「国際統合報告フレームワーク」
  • 経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」
価値協創ガイダンス