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河原 淳
MITSUI & CO.(U.S.A.),INC.
Silicon Valley Office
IT & Communication Business Div.
IT & Communication Business Dept.
Director
自ら主体的にビジネスを創る仕事をしたい。その思いで三井物産に加わった河原が、“三井物産ならではのデジタルトランスフォーメーション”の具体化を目指す。
世界No.1のパートナーと共に

OSIsoft社は、産業向けIoTデータ管理ソフトウエアの開発・販売において世界一の企業です。彼らの主力商品であるPI System(パイシステム)は、世界127カ国で約4,000の企業に導入されており、そこには世界トップ10の金属資源会社のすべて、世界トップ40の石油ガス企業の95%、米国の発電会社の90%などが含まれています。「IoTでモノから集めたデータを使い、いかに事業や経営を改善するか?」ということに関して、世界で一番ノウハウのある会社と言ってもいいかもしれません。
私は三井物産が同社と結んだStrategic Alliance(戦略提携)のもと、米カリフォルニア州サンレアンドロにある彼らの本社に常駐しています。彼らのノウハウを吸収し、三井物産のデジタルトランスフォーメーション(以下DT)を加速させること。三井物産のネットワークを活かし、彼らのビジネスをさらに広げていくこと。その両方を実現し、共に成長していくことが目的です。
OSIsoft社は電力・石油・ガスなどのプロセス製造業では圧倒的なシェアを持ち、デファクトスタンダードとなっている一方で、例えば自動車産業のような組み立て製造業はこれから挑んでいく領域です。
三井物産の強みは、何と言っても世界中の無数の“現場”とつながっていること。あらゆる業種のあらゆる現場へのアクセスがあります。その横の連携をスピーディに行うこと、また彼らにルートのないトップアプローチを可能にすることで、OSIsoft社の事業を次のステージへと広げています。
その好例が、北米の自動車メーカーへの導入です。三井物産のネットワークでこのメーカーがデジタル化の推進を求めているというニーズをつかみ、当社からの働きかけで提案。工場で稼動するあらゆる機器のデータを一元管理し、工場のオペレーション全体を見える化するシステムの実証実験にまで進んでいます。OSIsoft社が相対的に弱かった分野へ、当社の強みを活かし事業を広げたケースと言えると思います。
ITコンサルタントからの転身

私は、三井物産入社以前はITコンサルタントをしていました。主にCRMの業務改革を手がけ、顧客は多岐に渡りましたが特に自動車メーカーの案件には深くコミットしました。情報の活用によるサービス改善。アフターサービスを変えることでお客様にもっとディーラーに来てもらう、というソリューション提案ですね。
その立場は、いわばお客様の課題を解決する“サポーター”です。当然ですが、提案を実行するかしないかはお客様次第。私にどれだけ思い入れがあってもプロジェクトは1ミリも進まない、ということもありえます。私は自ら意思決定し、事業を主体的に創る側にいきたい、と考えるようになりました。それが転職の理由です。今はそれができている、という実感があります。
中途で入った第三者的な目で見て、三井物産は一人ひとりの個性が強いなと感じます。狭い意味での“優秀さ”だけあってもよしとされない文化があるというか。人間味、人間力、そんな力を重視しているように感じます。
私自身は、そうですね、“自分が腹落ちするまでとことん考えたいタイプ”、でしょうか。事業シナリオをどう描くか。提案資料をどう作るか。何をやるにしても、全体の組み立てやストーリーをぐるぐる、ぐるぐる自分の中で考えている。考えて、考えて、ある時ストンと腹落ちする。その瞬間が好きです。
ある案件でのこと。顧客との初回の打ち合わせでさまざまなヒアリングをしました。二度目の打ち合わせの冒頭、先方の最大の課題は何か、ニーズは何か、自分なりの整理と仮説をもとに「私は御社をこう理解しました」と説明したところ、大いに感謝されました。「ここまでしてもらったことはない」とまで言ってもらえて。シリコンバレーに来てからそれが一番うれしかったですね。
私としては当たり前のことをしたつもりなのですが、その“自分にとっての当たり前”が世界で喜んでもらえた。大きな手応えがありました。
三井物産流のDTを見える形で
今後やっていきたいことは、とにかく“三井物産のDT”というものを本当に目に見える形で実現すること。ひとつでも多く具体例をつくることです。具体的なサンプルがないと、「DTとは何なのか?」という根本は見えてこないのではないかと思っています。
いま社会全体に“デジタルトランスフォーメーション”という言葉が変に一人歩きしているように感じます。ICT・デジタルの活用=ビジネスの進化、という短絡的な思考というか。実際には、テクノロジーはただのツールに過ぎません。どんな凄いテクノロジーも、「こんな技術があります」というだけでは何も起きない。何かを起こすのは、常に“人”。道具であるテクノロジーを活用する一人ひとりです。
三井物産は、人の会社です。「これが三井物産流のDTだ」と具体例で示すことで、一人ひとりを刺激し、既存事業の良質化や新たなビジネスモデル開発がどんどん進んだらーー。その起爆剤に自分自身がなること、それが私の野心です。
2018年2月掲載