Main

People

岸田 翔太郎

東北支社 業務室

入社2年目の夏、宮城県の東北支社に配属された岸田は、三井物産の『売る力』を活かして、気仙沼の水産加工品の販路拡大のため、新たに東南アジア向け輸出ビジネスに取り組んでいる。


岸田翔太郎

2016年10月27日から3日間、シンガポールで「フードジャパン2016」が開催された。
約1万2,000人が訪れたこの東南アジア最大級の日本食の見本市に、宮城県気仙沼市の水産加工組合である気仙沼鹿折(ししおり)加工協同組合が初めてブースを構え、イクラ、ワカメ、とろろこんぶ、イカの塩辛やサンマの缶詰など約30品を出展した。
「この見本市には、一般のお客様のほか、東南アジア全域からバイヤーが集まってきます。今回、約40社の企業に気仙沼産の水産加工品に興味を持ってもらえました」と岸田は語る。
シンガポールでの成果は、気仙沼の水産加工品の販路拡大に取り組む岸田にとって、大きな一歩となった。

2014年、三井物産に入社して配属された部署での主な仕事は、事業計画の策定や決算の取りまとめなどだった。
「当時配属された本部では投資規模が大きい案件が多かったため、交渉や商談は上司や経験豊かな先輩が担当していました。ただ入社前は『現地に飛び、お客様と話し、解決策をみつけ、実行に移す』という働き方のイメージを持っていたので、現場に出る機会を待ちわびていました」
そんな岸田が、若手社員層を現場との距離が近い国内支社支店に派遣する制度の存在を知り、異動を強く希望したのは自然な流れだった。
熱意を理解してくれた上司の後押しもあり、2015年7月、岸田は東北支社に異動した。

岸田翔太郎

三井物産は、震災直後からさまざまな形で、宮城県気仙沼市の水産加工業の復興支援に取り組んでいた。2012年7月、水産加工会社17社(現在は20社)で構成される「気仙沼鹿折加工協同組合」の設立も、他社と共同で支援した。
工場が復興し始めていた時期に派遣された岸田のミッションは、同組合の水産加工品の販路拡大だった。
東北支社が長年にわたり築いてきた地域との信頼関係を背景に、岸田は、あらゆる会合に顔を出し、地元の企業や自治体、関連団体、金融機関などとのネットワークを地道に広げながら、現場でしか入手できない情報の収集を続けた。
「国内の水産関連商品の消費量が減少している中、水産加工品の販路拡大には、人口や所得が増え続け、魚の消費も急進している東南アジアのローカルマーケットへの輸出に活路が見いだせるのでは」と考え始めていた岸田は、農林中央金庫仙台支店の担当者と出会った。

気仙沼の地域振興の一環として、鹿折加工協同組合への費用助成を検討していた農林中央金庫は、同費用を有効に活用してくれるパートナーを探していた。

「地域に根ざした活動で地場産業の振興に取り組んでいる三井物産に、気仙沼の地域振興に役立つ活用方法を一緒に考えてほしい。という相談でした」
最初に相談してもらえたのは、普段から密にコミュニケーションを取り続けてきた岸田に対する信頼の証しだった。
「現場にいるからこそ、気軽に声をかけてもらえます。たとえ最初は小さなきっかけであっても、そのつながりから、大きなビジネスチャンスが生まれるかもしれない。そんな情報の受け皿になることが、現場に近い支社にいる自分の役割だと思っています」
三井物産、農林中央金庫、気仙沼鹿折加工協同組合の間で議論を重ねた結果、農林中央金庫からの資金を活用して、気仙沼の水産加工品のブランド力を高めながら、商品を東南アジア全域へ輸出する取り組みが始動した。

岸田翔太郎

岸田は、シンガポールの見本市で商談を行ったバイヤーを日本に招待し、鹿折の水産加工品の技術の高さと美味しさを現場で体験してもらい、取引の具体化を図る場を設けた。
「発展著しい東南アジア、とりわけシンガポールの人たちは舌が肥えているので、『味の良さ』がとても重要です。その点、気仙沼鹿折の水産加工品のおいしさは圧倒的です。また、海外の水産加工品に比べると、イクラ、ブリ大根、サバの味噌煮、フカヒレスープの缶詰などバリエーションも豊富で、様々な会社が集まる組合だからこその商品提案力という強みもあります。」と岸田は胸を張った。

「成約に向けて日々取り組んでいます」と語る岸田に、現在の仕事の醍醐味について尋ねた。 「今回の輸出案件はゼロから始めて、資金調達を含むビジネスのスキームづくり、展示会出展をきっかけとしたマーケティング、シンガポールをはじめとする東南アジア諸国での現地視察のアレンジ、そして海外バイヤーとの実際の商談にも携わりました。企画立案から実行推進までのすべてのプロセスを経験できたと思っています。日々ビジネスが動く現場にいることで得た多くの気づきや反省は、商社パーソンとしての成長にも着実につながっています」
そして、岸田は今後の展望をこう語る。
「まずは東南アジアの人たちに気仙沼の水産加工品の素晴らしさを知ってほしいです。将来は『日本の優れた加工技術なら、缶詰ももっと美味しくなる』という事実を、三井物産の『売る力』、いいかえれば、様々な商品の魅力を「引き出し」、国内外を「つなぎ」、新たな「市場を創っていく」力、これを確りと発揮して世界中に広めていきたいです」

2017年2月掲載