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Business Innovation

インドネシア
パイトン石炭火力発電事業

2014年10月、インドネシア共和国にジョコ・ウィドド政権が発足しました。同大統領は経済発展やインフラ開発を通じての国民の格差是正などを強く打ち出しています。このインフラ開発の成功例として同国において高く評価されているのが、三井物産がパートナーと開発・運営している石炭火力発電所「パイトンI」「パイトンIII」です。


日本の約5倍の広さの国土に約2億5,000万人の人口を有するインドネシアは、2010年以降、5%超の経済成長率を続けています。そんなインドネシアの経済活動の基盤となる電力インフラを支えているのが、発電事業会社パイトンエナジー社(PT. Paiton Energy)が運営するパイトンIとパイトンIIIです。
パイトンエナジー社には、三井物産が40.5%、フランス/エンジー(Engie:旧GDFスエズ)が40.5%、東京電力が14%、現地株主であるサラトガ社(PT. Saratoga)が5%出資しています。
パイトンI (1230MW、615MW X 2基)とパイトンIII (815MW)は、其々1999年と2012年に運転開始し、合計発電容量は2,045MWと首都ジャカルタを有するジャワ島(人口約1億4,000万人)の電力需要の10%弱を賄っております。
この石炭火力発電事業は、アジア初の独立系発電事業(IPP:Independent Power Producer)として、三井物産が25年前に取り組み始めたもので、三井物産が輸出入等の仲介貿易からファイナンスアレンジ・事業投資というビジネスモデルに挑戦した象徴的な案件の一つです。

度重なる危機を越えて

1990年代初頭、堅調な経済成長により電力需要が急激に伸びていたインドネシアでは、発電所の建設が喫緊の課題でした。
三井物産によるパイトンプロジェクトの開発着手はこの頃まで遡ります。
当時はまだ民間企業による大型の発電事業は一般的ではなく、三井物産は同国においてさまざまな事業を通じて培った知見や人脈などの地域展開力を活用し、石炭燃料の安定調達やIPP事業に関わる法的制度の整備等の課題を、インドネシア側関係者やパートナーと協力しながら一つ一つ克服していきました。
1994年、三井物産は当時世界最大のIPP事業者EME(Edison Mission Energy)社、主要設備を納入する米国GE社の金融部門GEキャピタル社、及び現地株主と共にパイトンエナジー社を設立し、パイトンエナジー社にてインドネシア国営電力会社(PLN)と電力販売契約(PPA:Power Purchase Agreement)を締結。1995年にパイトンエナジー社は、三井物産を含むコンソーシアムと設計・調達・建設を請負うEPC契約(EPC:Engineering Procurement Construction)を締結し発電所の建設を開始いたしました。
しかし、1997年7月、アジア通貨危機が勃発。PLNの収入の大半は電力料金で現地通貨ルピアであるのに対し、支出の大半は海外からの融資の元利返済と燃料費に占められ外国通貨での支払となっている構造下、大幅なルピアの下落によりPLNの財政は苦しくなり当初想定もしなかった事態に直面しました。2002年、PLN側の要望も考慮し、三井物産を含むパイトンエナジー社の株主はPPA及び融資契約内容を改訂することで事態を収拾しました。

2007年には、パイトンエナジー社はパイトンIの実績も評価されパイトンIII増設の独占交渉権を獲得しました。発電所の建設着工に至る前、2008年9月にリーマンショックが発生しましたが、国際協力銀行(JBIC)の支援を得てプロジェクトファイナンスを組成し、2012年3月、三菱重工(現三菱日立パワーシステムズ、MHPS)を中心とするEPCコントラクターがPLNと合意した予定期日を前倒しして完工しました。

この間、スポンサーもEMEがエンジー社に、GEキャピタルが東京電力に代わりました。三井物産も、撤退を迫られる困難に何度も遭遇しました。しかし、度重なる危機を乗り越えられたのは「インドネシアの経済成長に伴う電力需要を解決し、国創りに貢献する」という強い使命感があったからでした。

石炭供給チェーンの構築と環境負荷軽減に向けて

パイトンIとパイトンIIIが電力を安定供給することができる背景には燃料となる石炭の安定的な調達もあります。
インドネシア政府は、当時より良質な石炭を輸出に回して外貨獲得源とするエネルギー政策を掲げ、発電を含む国内需要向けには亜瀝青炭の活用を奨励しました。
そこで、パイトンエナジー社は、この亜瀝青炭の中でも、炭鉱からの輸送距離が短く、発電設備への負担や環境負荷が低いものを選びながら、現地石炭会社であるアダロ社等からインドネシア国内から継続して年間700万トンを安定調達できる石炭輸送体制を構築しました。
また、三井物産が建設工事管理を請け負ったパイトンI、MHPSがEPCを請け負ったパイトンIIIは高い燃焼能力と高度なオペレーションによって、環境負荷を抑えて運転されています。とりわけ亜瀝青炭を燃料としたインドネシア初の超臨界圧プラントであるパイトンIIIは、燃焼効率が高く、燃料コストや温暖化ガス排出を低減し、運転開始以来、815MWの電力を安定的に供給し続けています。

高く評価される三井物産の総合力

2015年1月、インドネシアの中期開発計画(2015-19年)が発表されました。インフラ計画の重点項目の1つ「電力」では、今後5年間で35GWの新規電源を開発する目標が掲げられています。
この目標の実現を目指す中で、パイトンIとパイトンIIIは納期通りの完工と高い稼働率の実績によりインドネシア政府およびPLNから非常に高く評価され、開発当初よりこれらに関わっている三井物産には大きな期待が寄せられています。
また、インドネシア政府と日本政府間でもインドネシアのインフラ開発が協議されています。その中で、インドネシア政府が、日本の優れた技術力、プロジェクトマネジメント力、JBICをはじめとした制度金融の活用、EPC、O&M(Operation & Maintenance:運転管理・保守点検)、プロジェクトファイナンス組成などに期待を寄せたことは、三井物産の総合力を大いに発揮できる機会だと考えています。

2015年3月末時点で、三井物産は世界各国で保有している発電所の総発電容量が38GWであり、持ち分(出資比率)ベースでは9.6GWの発電容量となります。
電力の「量」だけでなく、安定的な供給や信頼性の高さといった「質」への要求にも応えながら、優良な電力プロジェクトの開発・事業運営を進めることで、三井物産はこれからも、インドネシア、アジア、そして、世界各国のさらなる発展に貢献していきます。

2015年9月掲載