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©青山邦彦

プロローグ

2050年の世界に、何が起こる?

「父さん、『総合商社』って、どんな仕事をしてるの?」高校一年生の大輝は、学校から帰るなり、父親の浩に問いかけた。

大輝

「なんだよ、いきなり」
「だってさ、担任の先生に『きみの夢を叶えたいなら総合商社に入らなきゃな』って言われたから」
「おまえの夢って?」

「人類の未来を守ることだよ」

「ずいぶん大きな夢だな」
「ねえ、2050年には、世界の人口が90億人以上に達するんでしょ?」
「研究者によって誤差はあるが、一般的には、そう考えられているな…」
 浩はそう言いながら、リビングのテーブルに置いてあったタブレットを手に取った。
「例えば、このグラフを見てごらん。国連の統計によれば2050年には世界の人口が93億人に達するとある」
 浩はあるグラフをタブレットに映し出し、大輝に見せた。

世界人口の推移 (単位:億人)
世界人口の推移
出所:国際連合World Urbanization Prospects:The 2011 Revisionを基に作成

「そう!こういう内容をニュースでも見たんだ。そのときには、食糧もエネルギーも足りなくなって、豊かに暮らせないどころか、多くの人が餓死したり、世界中で食糧やエネルギー資源の争奪戦争が起こるかもしれないって。そんな恐ろしい時代が、たった30数年後、僕が今の父さんと変わらない年齢のときに来るかもしれないなんて…」

「確かに、爆発的な人口増加による食糧・エネルギー不足は、そう遠くない未来に起こる可能性が高いと言えるだろうね」

 大輝は真剣な眼差しを父親に向けた。「その深刻な食糧・エネルギー問題の解決に少しでも貢献できる仕事につくことが、僕の夢なんだ。食糧やエネルギーを地球レベルで扱っている仕事があるとすれば、それは総合商社だろうって」。大輝は目を輝かせて浩をみつめた。「担任の先生が言ったんだ。きみのお父さんは国際経済学が専門の大学教授だから、きっと総合商社について詳しいはずだって」

「もちろん『総合商社』は、重要な研究対象の1つだよ。確かに、世界の人々の未来に役立つような大きな仕事がしたいのなら、総合商社がぴったりかもしれないな」。浩は何か思い出したらしく、タブレットで手早くメールを打ち、送信すると、笑顔で大輝を見た。

「この間、ある研究会で総合商社に勤めている人と知り合ったんだ。懇談会で談笑しているとき、『若い人たちに総合商社の仕事をもっと知ってもらいたい』って熱く語っていたから、きっと大輝の力になってくれると思うよ」

 タブレットから着信を知らせる音がした。浩は画面に視線を走らせた。「もう返事が来たぞ。明後日なら時間があるから、会ってくれるそうだ。放課後に行って来たらどうだ」

「誰なの?」
「総合商社『三井物産』で食糧部門を担当しているブッサンジンだ」
「ブッサン…ジン…?」
「三井物産に勤めている商社員は、昔から、親しみと敬意をこめて、そう呼ばれているんだよ」
「そうなんだ」
「せっかくのチャンスだ。総合商社が食糧問題にどんなかたちで貢献しようとしているのか、思う存分、話を聞いてきなさい」

「ありがとう、父さん!」

©日経BP社 「日経ビジネスオンライン スペシャル」 初出:2013年11月19日~2014年2月24日
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