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安永 竜夫

代表取締役社長

2015年に三井物産社長に就任した安永竜夫。多種多様なプロ人材が挑戦と創造をくりひろげ、新たなビジネスを生みだし続ける三井物産を目指し、人材主義の伝統を次世代につなぐ。


安永竜夫

1994年世界銀行出向時にアナポリスで同僚たちと

1983年、安永は大学の工学部を卒業し三井物産に入社した。入社3年目、台湾への語学研修留学を経て中国、インドネシアを担当。29歳でアメリカに転勤、北中南米担当を経て32歳で世界銀行へ出向。帰国後はアジア・オセアニア、続いてロシア・CIS、さらには中近東・アフリカまでーー。「会社人生、担当地域は世界一周して5大陸全てをカバーしました」と笑う。そして2015年、54歳で三井物産の歴代最年少の社長に就任。異例の若さと多くのメディアで取り上げられた。当時の心境を、安永はこう語る。

「私自身、最初は驚きましたし、冷静になると興奮もしてきました。しかし若いということについては、正直に言えばあまり抵抗感はありませんでした。海外ならば40代の経営者も当たり前。年齢や序列で物事を言うのはとても日本的で、三井物産が世界を相手にしていく以上、あまり意味がない議論だなと思っていましたし、今でも思っています」
「経営に必要なのは『覚悟と胆力』。それらを修羅場体験を通じて培ってきた自負はあります」

若手にどんどん仕事を任せ、その仕事を通じて成長させる。それが三井物産の社風だと安永は言う。自分もその伝統に揉まれ、育てられた一人だと。

土台をつくった“武者修行時代”

「入社以来早く海外に出たいと言い続けたんです。生意気にも。そうしたら24歳の時に、いいぞ、台湾で中国語を勉強してこいと。ただし、普通は1年なのに3ヶ月で十分だと。もう死に物狂いで勉強しました。」

「台湾の次のインドネシアでは、ともかく1人でスマトラのプラント回りをやってこい、注文をもらってこいと。駐在員がついてきてくれるのかと思いきや、若いんだから1人で行けと言われて。毎日が新たな発見の連続でした。自分で考えて自分で動く、頼れるのは自分だけ、という原体験のおかげで“どこに行っても何とかなるぞ”と自信がつきました」

その後、安永はアメリカに転勤。32歳でワシントンの世界銀行に出向し、旧ソ連や東欧でのインフラ民営化、南西アジア諸国でのインフラ開発等に携わった。

10年のキャリアで仕事に自信をつけはじめていた安永だが、そこで「鼻を折られた」という。ワシントンD.C.の全く知らない世界。三井物産の傘の外に出た徒手空拳の自分。自分の価値は何なのか?悩み抜いたという。

「行き着いた答えは、それまでの10年間で培った経験に“日本人ならではのやり方で付加価値を生み出す”ということでした。たとえば、プロジェクトのスキーム構築の緻密さ。ディテールへのこだわりや、仕事・組織に対するロイヤリティ。日本人の矜持を仕事で表現していこうと思いました。
世銀のように本当に多様な文化的背景を持つ人材が集まる組織で、相手を理解し、自分も理解してもらうためには、やはり自分はどんな人間か、三井物産で身につけた力、日本人としての背骨、全てをしっかり捉えておく必要があります」

「相手へのリスペクト。その一方で、交渉を自分の思い通りに進める論理構築力と語学力。世銀での生身の体験は、今も私の中で生きています」

人事を尽くさない者に天命はおりない

安永の座右の銘は『人事を尽くして天命を待つ』だという。そこには2つの意味がある。

「私の歩んできたプラントプロジェクト畑は、ひとつの案件が何千億、何兆円という規模にまでなります。この規模になるとパートナーや取引先を含めチームが巨大かつ複雑になるので、最後どこか人の力の及ばない部分が出てくる。だから、自分で徹底的にやったら最後はもうしょうがない。天命を待つ。これが1つ」

「一方でもうひとつ重要なのは、やるべきことを徹底してやらない限り、天は微笑まないということです。ありとあらゆるシナリオ、ありとあらゆる戦略を考え抜いて、頭から煙を出すくらい考え抜いて、それをやり抜いて初めて僥倖がおりてくる。そういう意味で、考え抜き、やるべきことをやり尽くすことこそ何よりも大事だと考えています」

“強い個”を育てる伝統を未来へ

安永竜夫

経営のトップとして、安永は三井物産の最大の強みは何だと考えているのだろうか。この問いに、安永は「人」だと即答する。

「三井物産には、『人が仕事をつくり、仕事が人を磨く』という言葉があります。社員に裁量を与え、挑戦の機会を与え、現場体験を通じて修羅場・土壇場・正念場を経験させる。そうして“強い個”を育てる文化が組織の隅々にまで浸透している。これがこの会社の最大の長所です。私自身もその恩恵を受けた一人に他なりません」
だからこそ、と安永は続ける。自由闊達な企業風土を未来につなげ、多種多様なプロ人材が自在に、貪欲に挑戦をくりひろげる環境を創っていくことが自らの使命だと。

「“強い個”とは何か。タフな現場経験を通じて、“Deliverability”つまり“想定通りに結果を出せる力”を獲得している人材だと私は考えます。私たちのスローガンは“360° business innovation.”ですが、360°のビジネス革新とは、多様な“強い個”の協業からしか生まれません。若手もベテランもない。一人ひとりがプロフェッショナルで、この国を攻めるなら彼に相談したい、この領域で新しい事業をやるなら彼女とやりたい、そう頼りにされる個人の集合体。三井物産とは、そんな会社でなければならない。私はそう考えています」