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山崎 真一

Naaptol
Chief Strategic Officer

2015年12月にNaaptol社に出向した山崎は、自らの役割を「業界で何が起こっているのか、情報を収集・分析し、会社の強みをどう活かすべきか、弱い部分をどう補って行くのかなどの改善点を見つけ出し、関係各所と議論を重ねて対応策を練ることです」と簡潔に説明する。

しかし、実際の仕事は複雑かつ多岐にわたる。TVショッピングの事業が、商品調達、番組制作、コールセンターでの受注、倉庫でのディスパッチ、物流業者への配送依頼など、多くの事業要素から成り立つからだ。

たとえば24時間の専門チャンネルの番組の場合、放映時間帯と商品のマッチングが売れ行きを大きく左右する。

「朝9時から10時半は家族を送り出した主婦がゆっくりできる時間ですから、サリーやベッドシート、ミシンやホットプレートなど、2000から3000ルピー、日本円で4000円から6000円の日用品を中心に放映します」

それだけではない。Naaptol社はインドの公用語であるヒンディー語で番組をつくり、吹き替えの形で、テルグ語やタミル語など5つの言語に対応した24時間チャンネルも持つ。インフォマーシャルも、差し込むチャンネルの言語に合わせている。

「言語ごとに文化や生活スタイルは異なります。ヒンディー語で売れた商品が他の言語ではまったく売れなかったり、その逆もあるので、6言語の24時間チャンネルと100時間超のインフォマーシャルの管理・分析が必要になる。1言語ならば、縦に並べてもエクセルシートがPCの画面に入りますが、6言語もあるとスクロールするだけでも大変。インフォマーシャルも入れたら、とんでもない量になる」

競合他社がどこも多言語化対応を実現できない理由は、この複雑さにある。
では、なぜNaaptol社だけが多言語化を実現できたのか。
「Naaptol社の創業者がITスキルの高い人材であることが大きい」と山崎はいう。

2013年10月、新興国の有望な通信販売企業の調査をしていた山崎は、初めてNaaptol社の創業者Manu Agarwal(CEO)に会ったときの印象を「まだ深夜の数分のインフォマーシャルを始めたばかりでしたが、事業の本質を理解している人だと感じた」と語る。

その後、Naaptol社は驚異的な早さで事業を拡大し、Agarwal氏が24時間チャンネルの開設を考え始めた2014年9月、山崎は出資の検討を始めた。

「TVショッピングではデータの分析が非常に重要です。どの商品がどこでどんな顧客に売れたか、適正価格はいくらかなど、全てデータに基づいて判断する。外注でシステムを開発すると、さまざまな角度からデータを分析しようとしても自由がきかず、対応にはコストと時間がかかる。Naaptol社は創業者たちが開発するので、迅速かつ効率的に実行できる。その差が大きい」

2015年3月の5%の出資後、山崎はアドバイスや支援を本格化させた。

「TVショッピングは売り場なくして始まりません。『最後には視聴世帯数がモノを言う』という私たちのアドバイスで、4月から一気に多言語化を進め、チャンネルも増やしました。〝お店〟を増やせばいきなり売上げが上がるほど甘くはないですが、必ず結果はついてくるという確信のもと、先行投資に踏み切りました」

結果、出資前は業界3位だったNaaptol社は、現在、視聴世帯数、認知度ともに1位の業界トップクラスの企業にまで成長した。
多忙な山崎に仕事の醍醐味を訊ねると、2016年1月26日の国民の祝日「リパブリックデイ(共和国記念日)」の例を挙げた。

TVショッピング先進国ではイベントで売上げを増やす手法は一般的だが、Naaptol社では未経験だった。

「僕らがイベントの開催を提案したとき、現場の実行部隊は半信半疑でした。結果、去年は1日の売上げの1、2割増しだったのが、今年は2倍の記録を達成。『我々もやればできる!』という現場のモチベーションの高まりを感じられたことが、すごく幸せでした」

山崎はいう。
「新興国のTVショッピング事業は、三井物産にとっても、より多くのお客様に対して良質なサービスや豊かな暮らしを提供するいい機会だと考えています。吹き替えではなく最初から5言語で話す番組やライブ放送の拡充など、今後も私たちの知見とノウハウでサポートすることで、Naaptol社の成長、ひいてはインドの通販市場の発展に貢献したいと思います」

2016年3月掲載