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Business Innovation

鉄道事業でブラジルの都市生活を快適に

2016年8月から9月にかけてオリンピック・パラリンピックが開催されるブラジルで、民間大手企業と共同で、日本企業として初めて、海外での本格的な旅客鉄道事業の運営に取り組んでいます。


三井物産は半世紀以上前から、鉄道車両や信号システムなどの輸出、鉄道システムの設計・調達や建設プロジェクトなどのサポートで、ブラジルの鉄道の発展に寄与してきました。1960年代は日本製品を輸出。2000年代に入ると、より価格競争力のある韓国製や中国製の車両や鉄道部品の取り扱いを始めました。しかし、その後、中国や韓国の各メーカーは、自社製品を直接ブラジルへ輸出するようになり、三井物産は貿易という従来の商社機能を見直し、新たなビジネスモデルを作り出す必要に迫られました。そして、2007年、三井物産はサンパウロ地下鉄4号線の建設・運営事業への参画を決定。日本企業として初めて海外の旅客鉄道事業に携わるという新しいビジネスモデルへの挑戦をスタートさせたのです。

2014年11月、三井物産は現地パートナーと共にブラジル主要都市における新規都市交通事業の投資・開発を行う合弁事業会社を設立しました。2016年3月からは、西日本旅客鉄道(JR西日本)と海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)も出資参画しました。
今回の事業参画を通じて、三井物産はブラジルで初めて鉄道の建設からマーケティングまでにおよぶ鉄道経営全般に関わることになります。このため高度な鉄道経営ノウハウを持つ鉄道事業者であるJR西日本と、国土交通省の主導で設立されたインフラ分野専門の公的ファンド「JOIN」は心強いパートナーです。
このような強力な体制のもと、三井物産は4つの旅客鉄道事業に取り組んでいます。

日本の技術と経営ノウハウで老舗路線を再生

日本の技術と経営ノウハウで老舗路線を再生

第1の取り組みは、リオデジャネイロ州近郊鉄道(SuperVia)の経営改善です。
総延長270キロメートルのSuperViaは、1980年代前半頃には1日100万人以上の通勤客を運んでいた実績がありました。しかし、通勤手段のバスや自家用車へのシフトや、設備の老朽化によるイメージダウンも重なり、1996年には利用客は1日15万人にまで激減しました。1998年にコンセッション方式による民活が導入されてから数年後、現地パートナーが経営再建に着手。さらに、三井物産も加わって、より質の高い都市鉄道網の整備や旅客の安全・安定輸送を実現するためにJR西日本と協力して、SuperViaの経営改善に取り組んでいます。具体的には、老朽化したインフラの交換、最新システムの導入やオペレーションの効率化による安全性と定時制の向上、エアコン付き車両増による快適性の確保、運転間隔の短縮による輸送能力の増強や車両保守体系の見直し、教育による現場の技術の底上げなど、さまざまな取り組みを進めています。その結果、現在、1日の利用客は70万人にまで回復しました。
40年以上の運営実績を誇るSuperViaの事業では、周辺道路の渋滞問題の解決の必要性と地域経済の発展を背景に、安定した成長と収益の増加が見込まれています。将来的には1日170万人の輸送能力を目指しています。

大都市の基幹輸送を整備

第2の取り組みは、リオデジャネイロLRTの開業と運営です。
LRT(Light Rail Transit)は、小型軽量化されたスタイリッシュな低床車両を使用した環境に優しい次世代型路面電車です。2016年7月に一部路線が商業運行開始し、国内線の空港、港、美術館、バスターミナルなどをつなぎ、SupreViaとともにオリンピック・パラリンピックを訪れる観光客の移動手段となります。また、沿線地域のバスや自動車が引き起こす大渋滞や排ガスによる大気汚染の解消にも貢献します。


リオオリンピック・パラリンピック競技会場周辺のSuperViaとRio LRT路線図

 

リオオリンピック・パラリンピック競技会場周辺のSuperViaとRio LRT路線図

第3の取り組みは、サンパウロ地下鉄6号線の開業と運営です。
ブラジル最大の都市サンパウロには、いくつかの地下鉄の路線があります。サンパウロの大動脈になるともいえる地下鉄6号線は、大渋滞するバスや自家用車の代替交通手段として、多くの通勤客を取り込むことで、将来的には100万人にまで輸送能力を伸ばす計画です。三井物産も一部参画し、2010年5月に一部が開通した地下鉄4号線の建設・運営事業はブラジル初のPPP(官民連携事業)案件でした。その知見も活かし、サンパウロ地下鉄6号線の建設と運営に取り組んでいきます。

第4の取り組みは、ゴイアニアLRTの開業と運営です。
ブラジルの首都ブラジリアの近くにあるゴイアニアは、経済的に豊かな穀倉地帯につくられた計画都市です。最近の人口増による渋滞で、東西と南北の縦横に走るバス専用道路が機能しなくなってきたため、主要な交通手段を輸送能力がより高くエネルギー消費の少ないLRTに置き換える計画です。

鉄道事業の知見を活かして世界の都市問題を改善

鉄道事業の知見を活かして世界の都市問題を改善

日本企業として初めて本格的に海外での旅客鉄道事業に参入した三井物産は、この新しいビジネスモデルのさらなる展開と拡大に挑戦しています。
ブラジルでの運営実績の積み重ねが鉄道先進国である日本の鉄道経営ノウハウや技術の認知度を上げ、例えば、ジャカルタ、ハノイ、バンコクなど都市部の交通渋滞に悩むアジアの国々で、将来的な日本のインフラシステムの輸出につなげることを期待しています。
三井物産はこれからも、質の高い旅客鉄道事業の開業・運営の支援を通じて、ブラジルやその他の国・地域の都市問題を改善するとともに、日本の鉄道産業の国際競争力およびプレゼンスの向上を支援し、世界中にビジネスの場を拡大する機会の創出に取り組んでいきます。

2016年7月掲載