©Natsuki Yasuda

自然学校教諭。

山崎 宏さん

特定非営利活動法人 ホールアース研究所 代表理事

1971年静岡県生まれ。大学院で環境保全に関する社会制度などを研究。修士課程修了後、財団法人日本野鳥の会の嘱託研究員を経て、専門学校講師として教育現場に6年間従事。2007年4月からホールアース研究所勤務。

 富士山の麓で自然学校を主宰するNPO法人ホールアース研究所。代表理事の山崎宏さんは「活動の柱は、富士山の洞窟と樹海を案内するツアーと、毎夏のキャンプによる自然体験。参加者は中高生が主ですが、CSR活動の一環としている企業の方もいます。自然に興味のある人ばかりではないので、限られた時間で、いかに関心をもってもらうかが、僕らインストラクターの頑張りどころですね」と笑う。

 静岡県三島市の出身で、伊豆、箱根、富士山の自然が遊び場だったという山崎さん。自らの原点は子どものころ、父親に連れていってもらった釣りや虫とりにあると言う。「楽しかったので、やがて自分が友達を連れて行くようになり、大学でも、地域の子どもたちを対象に自然体験ツアーの引率をしていました」。その後、社会に出て自然保護に取り組む中で「自然と共生する人が増えれば、自然保護活動はいらなくなるのではないか」と考えるようになった。「自然を開発したいという人たちを説得するだけでなく、教育を通じて自然と共生する人を育てることも有効ではないかと思ったのです」。こうした思いが、今の山崎さんのホールアース研究所での活動につながっていった。

©Natsuki Yasuda

ホールアース研究所では、山崎さんを含むスタッフ全員が現役のガイド。より良いツアーやキャンプを提供するために、日頃から互いにガイド技術を磨き合っている。

 ツアーやキャンプについて、山崎さんは「自然体験の際に関心を深めてもらうことも大切ですが、本当の勝負はそれが終わった後なんです」と言う。「『環境は大事だ』ということが伝わったとしても、彼らが家に帰ったときに、果たして日常の行動は変わっているのでしょうか? 『ああ、楽しかった』で終わりなら、僕たちの取り組みは環境活動ではないと思うんです。いかに次の行動変容までつなげられているかを検証していくことが課題ですね」。

 最近は、地元の高校で富士山をテーマにした火山授業モデルプログラムを実施したり、地元企業と協働して富士山の里山保全活動に乗り出すなど、活動範囲を広げている。「これまでの僕らは、富士山というブランドに助けられて環境教育を続けてこられたと思うんです」と語る山崎さん。地域の絆を深める中で、活動もより深いものとなっていくだろう。

©Natsuki Yasuda

【助成案件名】科学と環境教育連携プロジェクト
【助成期間】2009年10月〜2012年9月(3年)

「10年間で出会った15人」をもっと見る

ページTOPへ