©Natsuki Yasuda

ヤマネ先生。

湊 秋作さん

公益財団法人キープ協会 やまねミュージアム館長

1952年和歌山県生まれ。小学校教諭として勤務しながらライフワークのヤマネの研究を続け、2000年から財団法人キープ協会・やまねミュージアム館長兼環境教育事業部副事業部長となる。関西学院大学教育学部教授。

 山梨県清里高原で、豊かな自然を活かした体験型の環境学習を行うキープ協会。同協会併設の「やまねミュージアム」館長の湊秋作さんは、「天然記念物であるヤマネは、日本列島に生息する約110種類のほ乳類の中でも最古参で、日本の森の象徴とも言える動物なんです」と説明する。

 学生時代に、ヤマネ研究の第一人者である下泉重吉氏に出会ったことがきっかけで、ヤマネの調査研究を始めた湊さん。「まずは小さなリスのような体に大きな目のかわいらしさ、そして冬眠時は体温を0度くらいまで下げて体温調節をしたり、天敵に会うと尻尾を切り離して逃げたりといった不思議な生態にひきこまれました」。大学卒業後は、帰郷して小学校の先生をしながらヤマネの調査を行った。「毎月1回、子どもたちと熊野古道の近くの森で巣箱調査をするのは楽しかったですね」。

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ミュージアムでは、写真やぬいぐるみなどの展示でヤマネの生態や分布を紹介しているほか、冬期には冬眠している本物のヤマネを見ることができる。

 和歌山での調査を8年間続けたものの、その間に捕獲したヤマネは2匹のみ。「より詳細な生態研究を行うために、ヤマネが多く生息する清里にフィールドを変え、和歌山から通いました。キープ協会が山小屋を無料で使わせてくれたのがありがたかったです」と笑う。片道550㎞を毎月1回、自費で往復するこの調査は、12年にわたって続けられた。そして、長年の研究結果をサポートしてきたキープ協会は、「やまねミュージアム」を設立することを決断する。

 館長として、環境保全や環境教育にも力を入れてきた湊さん。その成果の一つが、2007年から設置と普及に取り組むアニマルパスウェイだ。「清里に有料道路を作る計画が持ち上がったのですが、大きな道路で森が分断されると、ヤマネやリスといった木の上で暮らす動物は移動できなくなってしまう。そこで、小動物が渡るつり橋のような『アニマルパスウェイ』を道路上に作りました。開発と環境保全のバランスを取るのは難しいですが、共存の道を探っていきたいですね」。設置後のモニターでその効果が確認されたアニマルパスウェイは、今では日本各地、そして世界へと広がりつつある。

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【助成案件名】生物多様性保全の技術「樹上動物のための歩道橋アニマルパスウェイ」の開発から市民の環境参画へ
【助成期間】2010年4月〜2013年3月(3年)

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